いまさら聞けない「リフト&シフト」 なぜ人気でどこが駄目?リフト&シフトはどんな場合に最適?【前編】

既存のアプリケーションやOSをそのままクラウドサービスに移す「リフト&シフト」方式は、クラウドサービスへの引っ越しを検討する企業にとって有力な選択肢だ。その長所と短所を解説する。

2023年12月18日 05時00分 公開
[Julia BorginiTechTarget]

 オンプレミスのシステムをクラウドサービスに移行する方法の一つに、「リフト&シフト」方式がある。リフト&シフト方式では、既存のデータやシステム、OSなどを可能な限りそのままクラウドサービスに移行させる。

 データセンターの管理者は、オンプレミスのシステムをクラウドサービスに移行する各種方法の中でも、リフト&シフト方式を好む傾向にある。実際に、既存のシステムや業務プロセスを継続するために、リフト&シフト方式を選ぶ企業は珍しくない。ただしリフト&シフト方式が常に最適というわけではなく、その長所と短所を理解することが重要だ。

「リフト&シフト」はなぜ人気? 何が駄目?

 リフト&シフト方式は、フォークリフトで荷物を移動するように、システムをクラウドサービスに移動する。その長所は業務への影響を最小限に抑えられることだ。リフト&シフト方式では、移行中と移行後も同じアプリケーションを使用し続けることができる。

 システムは同じでもハードウェアが新しくなるため、アプリケーションの動作速度が向上する他、セキュリティが強化される可能性がある。コンピューティングやストレージのリソースは追加のハードウェアを購入することなく使用量を増やせるため、ピーク時に合わせた過剰なハードウェア投資を削減できる。

 一方でリフト&シフト方式の短所は、システムをそのまま別のクラウドサービスに移行するため、現代の開発環境での使用を想定していない古いシステムにおいて、問題が生じる可能性があることだ。仮に動作したとしても、パフォーマンスの低下を招きやすい。

 クラウドサービス特有のセキュリティ対策やコンプライアンス(法令順守)対策が必要になる場合もある。そのため、オンプレミスのシステムをそのまま移行した場合、要件に合致しない可能性がある。

 業界によっては、新たにHIPAA(米国医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令)や、PCI DSS(クレジットカード業界のセキュリティ基準)といった認証の取得や、セキュリティ機能の整備が必要になる。


 後編はどのような場合にリフト&シフト方式を採用するべきかを解説する。

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