Microsoftの「Copilot for Service」と「Copilot for Sales」は、同社が提供する生成AIサービスの一つだ。同社がこれらのサービスを提供する狙いと、ユーザー企業にとっての利点を探る。
Microsoftは、テキストや画像を自動生成するAI(人工知能)技術「生成AI」の用途拡大に取り組んでいる。その一環で同社が提供するのが、コンタクトセンター向け生成AIサービス「Microsoft Copilot for Service」(以下、Copilot for Service)と、CRM(顧客関係管理)向け生成AIサービスの「Microsoft Copilot for Sales」(以下、Copilot for Sales)だ。これらのサービスでは、サードパーティー製のツールにあるデータを扱うことも可能になる。Microsoftはこれによって何を狙っており、ユーザー企業にとっては何が利点になるのか。
企業のカスタマーサービス部門や営業部門は生成AIを使い、コールセンターシステムやCRMシステムで管理しているデータを簡単に参照できるようになる。サードパーティー製品を含むさまざまなシステムから必要な情報を取得するために、エンドユーザーが操作しなければならない手間を減らし、作業が煩雑になるのを防げるようになる。Microsoftはこれらのサービスの提供を通して、エンドユーザーの日常業務を簡潔にすることを目指す。
Copilot for ServiceとCopilot for Salesには、同社の生成AIサービス「Microsoft Copilot for Microsoft 365」(以下、Microsoft Copilot)のライセンスが付与される。このライセンスによって、Microsoft Copilotが利用できる範囲が、クラウドオフィススイートの「Microsoft 365」だけでなく、他社製のCRMシステムやナレッジベースといった製品に広がる。
Microsoftは両サービスを、2023年11月に米シアトルで同社が開催した年次カンファレンス「Microsoft Ignite 2023」で発表した。同カンファレンスではMicrosoftのエンタープライズソフトウェアの新製品や新機能が幾つか公開されたが、それらはAI技術に重点が置かれていた。
Copilot for ServiceとCopilot for Salesは、Microsoftが同社製品にAIベンダーOpenAIが開発した生成AI技術を組み込んでいる一例だ。Microsoft Copilotの技術は、OpenAIが開発した大規模言語モデル「GPT」に基づいている。
Copilot for ServiceとCopilot for Salesは、生成AIを利用して個別のアプリケーションの垣根を取り除くことで、カスタマーセンターや営業担当者のワークフローを簡潔にする。エンドユーザーが自然言語で質問を入力すると、両サービスは各業務アプリケーションで管理する情報を参照し、回答として必要な情報を提示する。エンドユーザーは情報にアクセスするために、各種アプリケーションにログインして異なるデータベースを操作する必要がなくなる。
調査会社The Futurum Groupでチーフアナリストを務めるダニエル・ニューマン氏によれば、従来問題になってきたのは、どのようにして全てのデータを1つの場所に集約するか、どうしたら容易にデータを管理して活用できるのかということだった。生成AIが可能にするのは、システム間で情報を収集するための新しいシステムの実現だ。「MicrosoftはCopilotによって、自然言語で人間が操作可能なシンプルなシステムを目指している」とニューマン氏は評価する。
「MicrosoftがMicrosoft Copilotの用途を拡大することは、競合他社の顧客を取り込む上でプラスに働く」。そう語るのはITコンサルティング会社のEnterprise Applications ConsultingでITコンサルタントを務めるジョシュア・グリーンバウム氏だ。SalesforceやServiceNow、Zendeskといったベンダーが提供するCRMのデータベースを、Microsoft Copilotを通して利用可能にすることで、Microsoftは顧客層を広げられる可能性がある。
後編は、Microsoft CopilotやCopilot for Service、Copilot for Salesの用途を詳しく説明する。
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