Web3の謎「ビットコインマイニングになぜあれほどの電力が必要なのか」Web3が再注目される予感【中編】

次世代インターネットとして注目を集める「Web3」には、電力消費に関する問題が付いて回る。Web3のどのような仕組みが関わっているのか。ビットコインのマイニングを例にして解説する。

2024年04月17日 07時30分 公開
[Mary K. PrattTechTarget]

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 非中央集権型の次世代インターネット「Web 3.0」(以下、Web3)。「より民主的なWeb空間の創出」というWeb3の理念に期待と共感が集まる一方で、懸念点も浮上している。Web3の構成要素である「ブロックチェーン」(複数のコンピュータで情報の正確性を確保する技術)とAI(人工知能)技術は、どちらも電力を大量に消費する傾向にある。具体的にはどのような仕組みが関わっているのか。

ビットコインマイニングに“全米のあれ”程度の電力が必要なのはなぜか

 「仮想通貨、特にビットコインの採掘(マイニング)は環境に多大な打撃を与えてきた」。こう話すのは、カーネギーメロン大学(Carnegie Mellon University)でデジタルメディアとデジタルマーケティングの特別功労教授を務めるアリ・ライトマン氏だ。

 ビットコインのマイニングは、「Proof of Work」(PoW)に基づいている。PoWとは、取引の実行や確認のためにブロックチェーン技術に利用される合意形成アルゴリズムで、複雑な数学的パズルを解き、特定のハッシュ値を見つけることで報酬を得られる仕組みだ。このため、計算能力の優れたハードウェアやソフトウェアがマイニングには必要となる。

 ケンブリッジ大学オルタナティブ金融センター(CCAF)は「ケンブリッジビットコイン電力消費指数」(CBECI)を公表している。これによると、2022年には約107テラワット時(TWh)がビットコインマイニングで消費され、米国における冷蔵庫の年間エネルギー使用量(104テラワット時)を上回った。

 CBECIは二酸化炭素(CO2)の排出量についても触れている。それによると、ビットコインマイニングで2009年から2022年9月までに約1億9965万トンのCO2が排出されたという。米環境保護庁(EPA)の温室効果ガス換算計算ツールによると、これは約101トン(約22万3639ポンド相当)の石炭燃焼に相当するという。

 ビットコイン関連のCO2排出の大半は、仮想通貨が急成長した2018年以降に発生している。

「Web3」推進の懸念

 マサチューセッツ大学(University of Massachusetts)が2019年7月に発表した論文によると、AIモデルの学習には62万6000ポンド(約284トン)相当のCO2を排出する可能性があるという。これは、車両の製造から廃車までの生涯排出量の5倍近い数字だ。

 サーバファームなどのハードウェアも懸念材料の一つだ。専門家によると、Web3向けのインフラを提供するクラウドベンダーや通信事業者は、サーバ設置面積の拡大や機器追加、稼働の高速化を想定しているという。こうした動きは、天然資源の消費や電子廃棄物の増大につながる。

 オープンソースソフトウェアの発展と普及を促進する非営利団体Linux Foundationでのデビッド・ボズウェル氏(コミュニティーアーキテクチャ担当シニアディレクター)は、エネルギーの大量消費が企業に与える影響について「例えば、Web3技術の実装でエネルギー消費量が急増した結果、土地の利用用途の制限や、利用要件の厳格化などにつながりかねない」と指摘している。


 後編は、サステナビリティにWeb3を生かす動きを解説する。

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