データセンターにおけるAIアプリケーションの利用が広がるのと同時に、活用が進む可能性があるのが「Compute Express Link」(CXL)だ。AI技術やGPUの利用とCXLがどのような関係にあるのかを押さえておこう。
従来のデータセンターの設計における限界を打破するための新たな技術として、インターコネクト規格「Compute Express Link」(CXL)が生まれた。AI(人工知能)技術を使用するアプリケーションの利用が広がる中で、今後データセンターにおける採用が進む可能性のある標準技術だ。CXLがこれからのデータセンターにおいてなぜ重要なのかを理解するには、AI技術の演算処理やGPU(グラフィックス処理装置)の利用に、CXLがどのように影響するのかを押さえておく必要がある。
メモリやCPU、周辺デバイスなどを接続するインターコネクト規格であるCXLは、Intelなど複数のITベンダーが構成するコンソーシアムが開発し、2019年に発表したものだ。CPUやGPUとメモリの間でのデータ転送の高速化や効率化を主な目的としている。
メモリ用ソフトウェアを手掛けるMemVergeのCEO、チャールズ・ファン氏は、「命令セットとして『x86』を採用するアーキテクチャのCPUを中心に機能してきたデータセンターの一部が、大きく変わろうとしている」と語る。コンピューティング、ネットワーク、ストレージの3つの基本要素があることに変わりはないが、AI技術向けの要素がデータセンターの設計に変化をもたらそうとしている。
AI技術の学習と推論においては、GPUが中心的な役割を果たしている。その演算処理では、GPUが搭載する広帯域幅メモリが使われる。ストレージは変わらず欠かせない役割を持ちつつも、AIアプリケーションではメモリ中心のファブリック(複数のデバイスを相互接続する仕組み)が重要になる。
「GPUが中心となる演算処理においては、CXLをファブリックに使うのは理にかなっている」。半導体市場の調査会社Objective Analysisでゼネラルディレクター兼アナリストを務めるジム・ハンディ氏はそう語る。CXLを採用することで、デバイス間での直接データ転送が可能になり、演算処理の際のデータ転送がより高速になる。
CXLは、CPUとGPUや、ストレージ、NIC(ネットワークインタフェースカード)などを接続するインタフェース規格「PCIe」(Peripheral Component Interconnect Express)のバージョン「PCIe 5.0」で動作するように設計されている。
メモリのリソースをプール(集約)し、さまざまなアプリケーションが効率的に利用できるように共有することもCXLによって可能になる。「ハイパースケーラー(大規模データセンターの事業者)は、特定のアプリケーションが大量のメモリを必要とする場合に、メモリのプールから必要なリソースを効率的に割り当てることが可能になる」とハンディ氏はその利点を説明する。
生成AIに注目するハイパースケーラーにとっては、メモリの効率的な使用方法を見つけることが重要になっている。ITコンサルティング会社Dragon Slayer Consultingのプレジデントであるマーク・ステイマー氏は、生成AIが直接的にCXLの普及を促進する起爆剤にはならないとしつつも、「CPUとGPUがメモリを共有することは非常に理にかなっており、生成AIがCXLの関心を呼び起こす可能性がある」と語る。
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