業績が低迷し、世間から忘れ去られる寸前の「ゾンビブランド」は、崖っぷちの状態からどのように復活しているのか。ゾンビブランド10社が復活した方法とその理由を考察する。
全世界の顧客とつながり、顧客の心をつかんで離さないブランドがある一方、全てのブランドの経営が順風満帆というわけでない。低迷するブランドや市場から姿を消したブランドもある。
このような停滞期を経験しているブランドが「ゾンビブランド」になる。ゾンビブランドとは、世間から忘れ去られる寸前の状態から復活を目指すブランドのことだ。ゾンビブランドの中には、原形をとどめているブランドもあれば、買収によって新しいブランドに生まれ変わったブランドもある。小売業からサブスクリプションサービスを提供する企業に至るまで、さまざまな業界の企業が、ゾンビブランドとして、消滅しても不思議ではない状況からの復活劇を遂げている。
本稿は、10社のゾンビブランドが復活できた理由を考察する。
食品、飲料、小売など、さまざまな業界でゾンビブランドが誕生している。衰退していくブランドが生き残ることは難しく、ましてや復活することは至難の業だ。しかし以下で紹介する10社のゾンビブランドは、他社にない能力を発揮して復活を遂げている。
米国のBed Bath & Beyondは、EC(Eコマース:電子商取引)企業Beyond(旧Overstock.com)の傘下のブランドとして、寝具からキッチン用品に至るまでさまざまな家庭用品を扱っている。Bed Bath & Beyondは事業の拡大を急ぎ過ぎたあまり、売り上げの減少と大手との競争によって経営破綻に追い込まれた。そうした中、経営権を引き継いだBeyondがオンラインプレゼンス(Webでの企業やブランドの存在感)の改善に取り組んでいる。
かつてスマートフォン市場を席巻したBlackBerryは、AppleのOS「iOS」やGoogleのOS「Android」との開発競争に敗れ、衰退の道をたどった。BlackBerryはセキュリティ分野で得た支持を足掛かりに、スマートフォンメーカーからセキュリティとソフトウェアのベンダーに転身している。
食材とレシピをセットにした商品「ミールキット」のサブスクリプションサービスを提供するBlue Apronは、家庭料理の課題を解決する代名詞的な存在となった。サービス提供開始当初は順調な滑り出しだったが、さまざまな競合他社が誕生して顧客数が減少し、損失を抱えた。同社はメニューの多様化、食材のサステナビリティー(持続可能性)、サービスの利便性に重点を置くマーケティング戦略によってブランドの再起を図っている。
かつて米国で大手家電量販店として名をはせたCircuit Cityは、2008年に破産を申請した。原因の一つは、新たに生まれたオンライン家電量販店との競争に敗れたことにある。巻き返しを図るため、同社は以前の顧客基盤の奪回を目指し、小規模店舗とECを展開している。
乳牛の白黒模様の箱がトレードマークのGatewayは、PC市場の主要事業者の一社だったが、さまざまな過失とIT業界の競争激化によって衰退した。2007年に台湾のAcerによって買収された後は、顧客の関心を引き付ける新製品を携え、復活を果たしている。
米国写真業界の大手企業Eastman Kodakは、デジタル写真への対応が遅れ、2012年に破産を申請した。それ以降、同社はデジタル画像と印刷技術に軸足を移し、様変わりした市場でかつての輝きを取り戻そうとしている。
1990年代後半にP2P(ピアツーピア)のファイル共有サービスのパイオニアとして名をはせたのがNapsterだ。同社はデジタル音楽の海賊版の代名詞となり、法廷論争に巻き込まれ、活動停止に追い込まれた。だがブランドの知名度を生かし、正当なサブスクリプション型音楽ストリーミングサービスを提供して再起を図り、第二の人生を歩み出している。
過去に米国で電子機器や電子部品を扱う主要家電量販店として知られたRadioShackは、デジタル時代とオンラインショッピングの波に乗り切れず、2015年に破産を申請した。同社はブランドの復活に向けてオンライン販売に重点を置き、DIY(Do It Yourself:日曜大工)の愛好家をターゲットにしたニッチ市場向けの小規模店舗の可能性を探っている。
米国の老舗小売店Searsは、店舗の老朽化、ECやディスカウントショップとの競争などに直面し、2018年に破産を申請した。その後、立地重視の小規模店舗を展開し、オンライン販売戦略を改善することで再建を図っている(2024年7月現在はTransform Holdco傘下)。
米国の玩具小売企業Toys R Us(トイザらス)は、オンライン小売店や大型小売店との競争に打ち勝つことができず、負債を抱えた。2017年に破産を申請したが、新規店舗を展開し、オンラインショッピングも強化することで、それまで顧客との間に築いてきた結び付きを足掛かりに巻き返しを図っている。
技術が進化し、消費者の嗜好が変化する時代において、これら10社のゾンビブランドは、新たなニッチ市場の可能性を探り、最新技術を導入し、戦略を見直している。それらの取り組みを通じて、既存顧客と新規見込み客との結び付きを強めているのだ。
こうしたゾンビブランドの復活劇は大衆の想像力をかき立て、事業部門の回復と転換の可能性を浮き彫りにする。このように復活を遂げたブランドは、企業の適応力、ブランドに対する懐古の情、消費者心理、消費者とお気に入りのブランドの間に作られる強力な結び付きなどの観点で、企業の事例研究の題材になる。
ブランドが復活を遂げる方法はさまざまだ。企業の原形をとどめたまま、焦点を絞る、ターゲット市場を見直す、製品ラインを刷新するといった運営の見直しによって再起を遂げる企業もある。安定した企業がブランドのイメージ、製品、市場での地位を取り戻す可能性を見いだして、経営難に陥ったブランドを併合する場合もある。
ブランド再起の成否は、ブランドのアイデンティティーに残る価値を見いだし、懐古の情を生かしながら現在の市場トレンドと消費者行動に合わせてブランドのイメージチェンジを図れるかどうかにかかっている。自力で復活を果たすブランドと自力では復活を果たせないブランドの違いは、既存の顧客と新たな見込み客の双方に働き掛けて結び付きを再構築する能力の有無だ。ゾンビブランドは絶えず変化するビジネスの世界で適応性、イノベーション、戦略的展望の重要性を理解して注力している。
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