Azureをお得に使える「最大90%割引」の“安さの理由”と落とし穴とはAzureの「スポットVM」を使いこなす【前編】

「Azure Spot Virtual Machines」は、「Microsoft Azure」のVMを利用するときに大幅な割引を受ける方法の一つだ。利用時に注意すべき点がある。同サービスを利用するときの基本的なポイントを説明する。

2024年08月06日 08時00分 公開
[Chris TozziTechTarget]

 仮想マシン(VM)を選択する際、コストは主要な検討事項の一つになる。Microsoftは、クラウドサービス群「Microsoft Azure」(以下、Azure)でのコストを節約するためのさまざまな割引プランや料金プランを提供している。例えば「Azure Hybrid Benefit」や「Azure Reserved Virtual Machine Instances」「Azure Spot Virtual Machines」(Azure Spot VM)などがある。

 ユーザー企業は割引プランを活用することで、大幅なコスト削減の機会を得られる。しかしこうした割引プランにはリスクや注意点がある。本稿はAzureの割引プランのメリットとデメリット、効率よく利用する方法を詳しく説明する。

Azure「最大90%割引」の“安さの理由”と落とし穴はこれだ

 Azure Spot VMは、仮想マシン(VM)サービス「Azure Virtual Machines」のインスタンスの一種だ。通常料金で契約した同じ構成のVMと比較して、Azure Spot VMは安価な料金で利用できる。割引率は最大で90%だ。

 この割引の適用条件として、ユーザー企業が注意しなければならない重要な点がある。それはAzureが、Azure Spot VMを「自動削除」する場合があるということだ。自動削除とは、VMが利用できなくなることを意味する。Azure Spot VMでホストされているアプリケーションは、VMが自動削除されると全て中断される。通常、自動削除の通知は削除の30秒前に発せられるだけだ。

 Microsoftだけでなく、他の大手クラウドベンダーもAzure Spot VMに似た「スポットVM」サービスを提供している。クラウドベンダーがこうしたサービスを提供するのは、クラウドサービスの需要が少ない時間帯に、計算能力が使用されてないインフラを有効活用するためだ。一般的なVMサービスを必要とするユーザーが、クラウドベンダーが用意した計算リソースを使い切るほど多くない場合、クラウドベンダーは休止状態の計算リソースを抱えることになる。

 使用されていない計算リソースを、利用料金の安いスポットVMとしてユーザーに販売することで、クラウドベンダーはある程度の収益を得られる。計算リソースに対する需要が高まると、クラウドプロバイダーはスポットVMを、より多くの収益を生み出す他の種類のVMサービスとして割り当て直す。

Azure Spot VMを使ってどれくらい節約できるのか

 Azure Spot VMは他のAzureのVMサービスと比較して最大90%のコスト削減が可能だが、実際の削減率は複数の要因によって変わる。以下にAzure Spot VMの利用料金を決める要因の具体例を挙げる。

VMの構成

 Azureは、提供するVM構成ごとに異なるスポット価格を設定している。VMの中には、他のVMよりも大幅に割引されるものもある。

リージョン(データセンターの所在地)

 Azure Spot VMの利用料金はリージョンによって異なる。あるリージョンでホストされたAzure Spot VMの価格は、別のリージョンで同じ種類のAzure Spot VMを購入する場合よりも安くなる場合がある。

計算能力

 Azureは、需要に応じて特定の種類のVMの割引率を高くする場合がある。Azure Spot VMの利用料金はタイミングによって変動する。

 ほとんどのAzure Spot VMには75~90%の割引が適用される。しかしタイミングによっては、30~40%しか割引されない場合もある。このような割引率の場合は、VMの1年または3年の利用を確約することを条件に割引を受けられる「リザーブドインスタンス」を利用した方が良い選択肢になる場合がある。サーバの自動削除のリスクを抑えながら、同等の割引率でVMを利用できる可能性があるからだ。

 Azure Spot VMの価格は、VMの実行後に変更される可能性がある。スポットインスタンスを選択したときに大幅な割引が適用されたからといって、そのVMを利用している間、常にその割引率が適用されるとは限らない。


 後編はAzure Spot VMの自動削除のリスクを抑え、効果的にVMの利用料金を節約するためのベストプラクティスを説明する。

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