通信大手BTは、同社の開発者約1200人向けに「Amazon Q Developer」を導入した。導入の成果や、開発者の生産性を高める上で欠かせなかったことについて解説する。
大手通信会社BT Group(以下、BT)は2023年、人工知能(AI)技術を用いたコーディング支援ツール(以下、AIコーディングツール)「Amazon Q Developer」(旧称:Amazon CodeWhisperer)を導入した。
Amazon Q Developerを用いて20万行に及ぶソースコードを生成したというBTは、具体的にどのような成果を出したのか。開発者の生産性を高める上で欠かせなかったこととは何だったのか。
Amazon Web Services(AWS)が提供するAmazon Q Developerは、自然言語で入力されたコメントや既存のソースコードに基づき、コードスニペット(短いソースコードのまとまり)から完全な関数に至るまで、ソースコードの提案が可能だ。さまざまな統合開発環境(IDE)で使用できるという特徴もある。
2023年後半、BTのデジタルトランスフォーメーション(DX)をけん引するデジタル部門がAmazon Q Developerを使い始めた。利用を始めてから4カ月間で10万行のソースコードを生成し、単調な反復作業の約12%を自動化したという。
2024年2月のBTの発表によると、当時はユーザー1人当たり、1日に15~20件のソースコードが提案され、開発者がその提案を受け入れた割合は37%だったという。その後、BTはAmazon Q Developerの提供範囲をグループの全開発者に広げ、同ツールを用いて2024年6月までに20万行に及ぶソースコードを生成した。
BTでデータとAIの最高責任者を務めるディーピカー・アドゥスミリ氏は、「技術的なところは専門家に任せる方針を採用している」と説明する。つまり、AIツールを自社開発せず、Amazon Q Developerのような既存のツールを活用するということだ。
では、この取り組みにおけるBTの役割は何か。それはAI技術をビジネスで活用する最適な方法を判断することだ。「企業としてどの分野に投資し、生成AIをどのように活用するか、モデルをどう構築し、どのデータを使うかなどを考えることに注力した」とアドゥスミリ氏は話す。
アドゥスミリ氏によると、BTの開発者は積極的にAmazon Q Developerを使用しているという。「開発者にAmazon Q Developerを受け入れてもらい、プラスの成果や肯定的な口コミを共有してもらったことで、成果創出につなげることができた」と同氏は話す。
Amazon Q Developer導入後、ソースコードの品質は向上し、同じ結果を得るために必要なコード行数を削減できたという。開発者からは、「時間の掛かる作業から解放され、イノベーションに費やす時間が増えた」という意見が寄せられている。
BTでは、「生成AIに仕事を取られるかもしれない」と不安を感じる開発者はいなかったという。反対に、「Amazon Q Developerによって生産性が向上したことを受け、さらに成果を上げるために何ができるか、といった意見が出てきている」とアドゥスミリ氏は話す。
後編は、BTがAmazon Q Developerを使用する上で、どのように安全性を確保しているかについて解説する。
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