自動生成コードを使うも捨てるも「開発者の腕」次第? BTが挑むAIリスク対策通信大手BTのAIコーディング活用術【後編】

通信大手BTは、同社にいる1200人の開発者向けに「Amazon Q Developer」を導入した。ハルシネーションをはじめとする懸念がある中で、ツールを安心して使うために、どのような工夫を取り入れたのか。

2024年09月20日 05時00分 公開
[Steve RangerTechTarget]

 大手通信会社BT Group(以下、BT)の開発チームは、人工知能(AI)技術を用いたコーディング支援ツール(以下、AIコーディングツール)の「Amazon Q Developer」(旧称:Amazon CodeWhisperer)を導入した。同社の約1200人の開発者が利用できるようにし、生産性向上に向けて活用している段階だ。

 AIツールの導入を進める上で、生成AIが引き起こすハルシネーション(事実に基づかない回答を出力すること)をはじめとするリスク対策が欠かせない。BTはツールを安心して使用するために、どのような工夫を取り入れたのか。

成功の秘訣は「開発者の腕」? BTが実践する“安全の工夫”とは

 Amazon Web Services(AWS)が提供するAmazon Q Developerは、自然言語による入力や既存データを基に、ソースコードを提案してくれるサービス。2024年9月時点で、Amazon Q Developerは20種類のプログラミング言語を利用できる。BTでは「Java」「JavaScript」「Typescript」「Python」がよく使われる傾向にあるという。

 BTはAmazon Q Developerの使用を推奨しているものの、ツールをどのタスクやプロジェクトで使用するかについての具体的な指示は出しておらず、開発者の判断に委ねている状況だ。

 BTの全開発者はAmazon Q Developerを利用できるが、ビギナーの開発者や研修生に対しては、コーディングの基礎を習得するまでツールの使用を禁止している。初心者は知識が乏しいため、提案が適切かどうかの判断ができないからだ。

 BTは、生成AIのハルシネーションについても対策している。コーディングは自動化せず、「Amazon Q Developerが提案するソースコードの中から、開発者が適切なものを選ぶ」といった方式にしている。こうすることで、不適切な提案が知らず知らずのうちにソースコードに反映されてしまう事態を防いでいる。

 加えて、この仕組みで作成されたソースコードはCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)プロセスの中で素早くテストされる。このため、誰かが不適切なソースコードを受け入れてしまった場合でも、比較的早い段階で見つけられる。

 AWSの見解では、開発者がAmazon Q Developerを活用することで、コーディング作業に費やす時間を従来の30%以下に抑えることができるという。開発者は日々、ベストプラクティスの調査や、ドキュメントの確認、インフラとリソースの管理、トラブルシューティングといった作業に追われている。Amazon Q Developerなどのツールはこうした面倒な作業を減らし、ソースコード完成までに掛かる時間を短縮するのに役立つ。

 Amazon Q Developerなどの開発向けAIツールは、生成AIの初期の成功例とされている。これらのツールは開発者を退屈な作業から解放し、より創造的な業務に集中できるように支援する。調査会社Gartnerの予測によると、2029年までに、開発者の4分の3がAIツールを使うようになる。特に有名なツールとしてGitHubの「GitHub Copilot」、Microsoftの「Visual Studio IntelliCode」、Tabnineの「Tabnine」などがあり、市場では競合製品がひしめき合っている。

 企業にとっても、開発人材不足や人件費の高騰は死活問題だ。AIツールで開発の効率化を進める企業は今後増えていくだろう。

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