顧客応対を担うコンタクトセンターにおけるオペレーターの離職が目立っている。その背景には、コンタクトセンターだけに限らない幾つかの要因が関係している。何が離職を加速させているのか。
顧客応対を担う「コンタクトセンター」におけるオペレーターの離職率は、慢性的に高い状況にある。コンタクトセンターで離職が続けば、顧客が受けられるサービスの質は下がり、企業のブランド力の低下や、売り上げの減少につながる可能性がある。コンタクトセンターでの離職が続く背景には何があるのか。
オペレーターの離職率は、コンタクトセンターの全オペレーター数のうち1年間に離職した人の割合を示す。コンタクトセンターのオペレーターの離職率を調査している調査会社MetrigyでCEO兼プリンシパルアナリストを務めるロビン・ガレイス氏によると、オペレーターの離職率は10〜15%が望ましい。Metrigyが調査した企業の中には、85%という離職率を記録するところがあった。このような離職率を記録するコンタクトセンターが、優れた顧客体験を提供するのは困難だ。
コンタクトセンターのオペレーターが離職する背景には何があるのか。主な理由を5つ紹介する。
「Microsoft Copilot」をはじめとしたAI(人工知能)アシスタントを利用すれば、オペレーターの業務生産性は向上する。AIアシスタントが通話記録を要約したり通話内容を書き起こしたりするだけではなく、その内容に対する解決策や必要なタスク、フォローアップすべき内容を提示する。業務効率が向上すればオペレーター1人が担当できる通話の件数は増加するため、オペレーターの人数を減らすことが可能になる。
ガレイス氏は、顧客対応の約41%をAI技術で自動化できると見積もる。その結果、オペレーターが対処する顧客対応の件数は減少している。顧客対応の件数が増えないのであれば、オペレーターの人数を維持する必要は薄い。
複雑な顧客対応の処理やAI技術を使った業務処理の経験が豊富なオペレーターは、高い給与を提供する企業での勤務を選択する。企業の間では、高度なスキルを持つオペレーターを確保するために高い給与を支払う動きが見られ、オペレーターの給与額を増やす傾向にある。その結果、オペレーターの離職が高まる可能性がある。
複雑な顧客対応を次々とこなさざるを得ない状況に置かれるオペレーターの中には、燃え尽きを感じ、その結果として離職する者もいる。
AIツールを使った自動化や、顧客からの入電時にその顧客の情報をPCのディスプレイに表示させるポップアップといった技術の導入に際して、ベテランのオペレーターが離職する場合がある。新しい技術の導入や、その使用を強制されることを嫌がる傾向があるためだ。
2024年3月にMetrigyが公開した、AI技術の活用がビジネスに及ぼす影響を調査したレポート「AI for Business Success 2024-25」からは、オペレーターの離職にもAI技術が大きなインパクトを与えていることが読み取れる。調査から、コンタクトセンターにAIツールを導入した企業の36.8%が人員削減を実施、55.7%がオペレーターの新規採用枠を縮小したことが明らかになった。同レポートの調査は2023年12〜2024年1月、697人を対象に実施した調査結果に基づく。
後編は、オペレーターの離職率を下げるためのヒントを5つ紹介する。
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