インフラの設定管理で目にする「JSON」ファイルと「HCL」ファイル。それぞれどのような場面で役立つのか。両者の特徴と基本構文を、サンプルを交えて解説する。
ソースコードでインフラの構成を管理する「IaC」(Infrastructure as Code)は、現代のシステム管理の重要な要素だ。「Ansible」「Puppet」「Terraform」といった構成管理ツールは、設定言語で記されたファイルを認識して動作する。
本連載は、代表的な設定言語である「JSON」と「HCL」を取り上げる。両者にはそれぞれ特定の用途と要件がある。自社で用いるにはどちらが適しているのか。それを判断するために、まずはJSONとHCLの重要性を押さえておこう。
JSONとHCLは、どちらもIaCで用いる構成言語だが、目的や特徴は異なる。
JSONの主な役割は、サーバとWebアプリケーションなどシステム間でのデータ転送だ。その他の主要な用途としては以下がある。
Terraformで利用するために、運用管理ツールベンダーHashiCorp(2024年4月にIBMが買収を発表)が開発した設定言語がHCLだ。そのためTerraformを利用している企業は、HCLを使用することになる。
HCLは主にオンプレミスシステムとクラウドサービスを使うシステムの構成に用いる。具体的な用途を以下に示す。
Ansibleなど一部の構成管理ツールでは、データシリアライズ言語(データを保存、転送しやすい形式に変換するための言語)「YAML」を用いた構成管理も可能だ。用途に応じて3つの言語を使い分けるとよい。
JSONは、波かっこ(中かっこ)内に記述されるキーと値のペアでデータを表す。ファイルの拡張子は「.json」だ。波かっこで囲まれたブロック(オブジェクト)内には関連するデータをまとめることができ、入れ子構造にすることも可能だ。
キーは二重引用符で囲んだ文字列で、同じ階層では重複するキーを使用できない。一般的には、スペースの代わりにアンダースコアで空白を表す。値として使えるデータ型は以下の通りだ。
以下はアプリケーションに関する情報の例だ。「appName」(アプリケーション名)というキーに対して「App1」、「appVersion」(バージョン番号)というキーに対して「1.2.3」という値がそれぞれひも付けられている。
"appName": "App1" "appVersion": "1.2.3"
以下は、真偽値を用いて「logging」(ログ記録)機能を有効化または無効化する例だ。
"logging": true
最後に、データベースへの接続設定の例を見てみよう。上から接続先のデータベース名、ポート番号、ユーザー名、パスワードを記録している。
"host": "localhost", "port": "5000", "username": "dbadmin", "password": "Pa$$w0rd",
このように、JSONではオブジェクトを使って関連するデータをグループ化し、階層構造で表現する。シンプルで可読性に優れたデータ表現が可能な一方で、標準ではコメントを記入できない。何の設定なのかを別途ドキュメントに残しておくとよい。
HCLは波かっこでブロックを定義し、各ブロックを設定要素として扱う。JSONと同様に、HCLはキーと値のペアを利用する。この仕組みによって、文字列や数値、真偽値などのデータ型を用いた設定の定義が可能になる。
ファイルの拡張子は「.hcl」「.tf」で、スクリプト(簡易プログラム)言語「JavaScript」と同じ方法でコメントを記入できる。1行のみのコメントには行頭に「//」を置き、複数行にわたるコメントは「/*」と「*/」で該当部分を囲む。
HCLはJSONと互換性があり、どちらもキーと値のペアでデータを定義する。ただし異なる要素も幾つかある。真偽値や数値など、値に利用できるデータ型は共通だが、記述形式が異なる。具体的には、キーと値のペアを定義するためにHCLは等号を用いるのに対し、JSONはコロンを用いる。HCLからJSONへの互換性はあるが、JSONからHCLへの互換性が完全ではない点にも注意が必要だ。
次回は、JSONファイルとHCLファイルを扱う際に注意すべき点や知っておきたい点を解説する。
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