2024年12月2〜6日に開催された「AWS re:Invent」では、同社の生成AIサービス「Sagemaker」「Bedrock」「Q」の新機能が発表された。AI開発はどう変わるのか。
人類は、生成AIの歴史的な転換期に直面している――こう話すのは、Amazon Web Services(AWS)でAI(人工知能)とデータを統括するスワミ・シバスブラマニアン氏だ。現代のAI技術が確立されるまでには、数々の技術的進歩が積み重ねられてきた。教師なし学習手法の発見、深層学習モデル「Transformer」の登場、そして大規模なデータセットとコンピューティングがクラウドを通じて利用可能になったことで、生成AIが飛躍的に発展するための基盤が確立された。
いまや生成AIはかつてない速さで導入が進み、人々の効率性と創造性を新たなレベルへと引き上げている。一方で、AIモデルのトレーニングや推論には膨大なリソースや高度な専門知識が求められるといった課題も依然として残る。こうした課題を克服するため、各ITベンダーはツールや機能の開発に取り組んでいる。
2024年12月2〜6日、米ラスベガスでAWSの年次イベント「AWS re:Invent」が開催された。4日の基調講演では、シバスブラマニアン氏が登壇。同社の機械学習モデル構築サービス「Amazon SageMaker」や、生成AIサービス「Amazon Bedrock」「Amazon Q」に搭載される新機能群を発表した。AI開発の在り方はどう変わるのか。
AWSのCEOマット・ガーマン氏は3日の基調講演で、機械学習モデル構築サービスであるSageMakerの刷新を発表。「データ分析とAI関連業務の垣根はなくなりつつある」と話し、「次世代のSageMakerは、データ分析を含めたより広範な領域を扱うツールになる」と説明した。
シバスブラマニアン氏は、新たに以下3つの機能をSageMakerに搭載することを発表した。
Bedrockは、コストや品質、レイテンシーなどの要件に柔軟に対処できるように、幅広いモデルの選択肢を提供する。AWSは独自開発モデル「Amazon Nova」に加えて、以下モデルを追加すると発表した。
基調講演ではLuma AIのCEOアミット・ジャイン氏が登壇。Ray 2の大きな特徴は、「単なる画像や動画の生成にとどまらず、動画のカメラワークやストーリー設定のコントロールができる点だ」と説明した。急速に成長するスタートアップ企業である同社はスケーラビリティを特に重視しており、Amazon SageMaker Hyperpodを活用することで安定したモデルのトレーニング環境を構築しているとも説明した。
「Amazon Bedrock Marketplace」も発表。Bedrockの基盤モデル以外にも、業界特化型モデルや新興モデルなど100種以上のモデルに統一されたAPIからアクセスできる。日本からは「Preferred Networks」「Stockmark」「KARAKURI」のモデルが公開されている。
シバスブラマニアン氏は、推論の効率化と精度向上に役立つ機能や、ハルシネーション(事実に基づかない回答を出力すること)のリスクを抑えるための機能も発表した。
※注:トークンとはテキストデータを処理する際の基本的な単位で、英語であれば1トークンは4文字程度と考えられる。
続けてシバスブラマニアン氏は、「RAG」(検索拡張生成)向けの新機能について発表。RAGとは、学習データ以外に外部のデータベースから情報を検索、取得し、LLMが事前学習していない情報も回答できるように補う手法を指す。今回追加した新機能により、扱えるデータの形式や範囲、検索手法が拡大し、より高精度で有益な回答を取得できるようになるという。
検索サービス「Amazon Kendra」におけるRAG用インデックス「Generative AI Index」の追加も発表された。キーワード検索とベクトル検索を組み合わせたハイブリッド検索手法や、検索結果を関連性の高い順序に並べ替える「Rerank」モデルなど、検索精度を高めるための機能を持つ。「Amazon Bedrock Knowledge Bases」「Amazon Q Business」など複数のツール間で共通のインデックスを使用できるため、データの移動性が向上する。「Gmail」「Salesforce」を含む43種のデータソースに対応するコネクターを提供し、アプリケーションからのコンテンツ取得を容易に実現する。
「Amazon Q Developer」はソースコードやドキュメントの作成を通して、開発の生産性と品質向上を支援するツールだ。今回の基調講演における発表は以下の通り。
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