6Gの実用化に向けてさまざまな企業が研究開発を進めている。NTTドコモもその一社だ。同社はスループット(データ転送速度)を改善する技術の実証実験を実施した。
「6G」(第6世代移動通信システム)は2030年ごろに商用利用が開始するとみられており、世界各国で技術開発が進んでいる。その開発の最前線に立つ企業の一つが、NTTドコモだ。同社は2024年11月、4.8GHz帯の周波数を用いた6G技術の屋内実験を実施し、従来の手法と比較してスループット(データ転送速度)が最大18%向上したと発表した。NTTドコモが実証した“6G時代の技術”とはどのようなものなのか。
NTTドコモはNTT横須賀研究センタにある7×13メートルの実験室で、4.8GHz帯の電波を利用した通信のスループットを測定した。親会社のNTTやフィンランドの通信機器ベンダーNokia、韓国の通信事業者SK Telecomと協力して、データ送受信の処理を最適化するためにAI(人工知能)技術を活用した。
実験ではGPU(グラフィックス処理装置)を搭載したサーバに、AI技術を活用して送受信のベースバンド処理(アナログ信号とデジタル信号を変換する一連の処理)を効率化するソフトウェアを組み込んだ。ハードウェアには、特定のソフトウェアを搭載するための専用ハードウェアではなく、SDR(Software Defined Radio:ソフトウェア定義無線)を実装できる汎用(はんよう)的なものを選んだ。
受信アンテナを搭載した台車を移動させながら、スループットを測定した。AI技術を用いない従来の方式と比較した結果、スループットは6〜16%向上した。静止して計測した時は最大で18%のスループット向上を確認した。無線通信方式には「5G」(第5世代移動通信)の無線方式である「5G NR」(5G New Radio)を利用している。
NTTドコモによると、電波の波及環境に応じた変調方式を学習したAI技術を電波の送信時に使用することは、通信性能の向上に寄与する。
一般的に、端末は電波の波及状況などの通信品質を測るために、基地局から送信される参照信号を受信する必要がある。今回の実験では、電波の波及に利用するチャネル(データ送受信用の周波数帯)をAI技術が推定することで、参照信号を送受信するプロセスを省略して伝送効率が向上した。
NTTドコモは、国内外のベンダーおよび海外の通信事業者と協力を継続し、6Gの研究開発を加速させるとともに、技術の標準化および商用化に貢献することを目指している。さまざまな電波波及環境で変復調方式の最適化を図り、幅広いユースケースで無線通信品質を向上させることを目指している。
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