AR/VR技術の限界が明らかになりつつある中で、「空間コンピューティング」への注目が集まっている。一体どのような技術なのか。
テレワークが普及する中で、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)、仮想空間「メタバース」を活用する機運が高まってきた。一方でこれらを使っても、対面による会話や共同作業のような自然なやりとりを実現するのは難しい。そうした中で、現実世界とデジタル情報をよりシームレスに統合する「空間コンピューティング」が注目されている。一体どのような技術なのか。
AR/VR技術では、映像や音声を共有することはできるが、それと同じようにして触感や温度といった他の感覚を共有できるわけではない。現実の会話や共同作業では、チーム全員が周りの環境を自然に感じ取ることで、言葉にしなくても通じ合うことができる。ところが、映像や音声だけを基にした仮想の世界ではこうした感覚を共有できないため、直感的な理解が難しくなる。
例えば、機械の表面がどのような手触りか、部屋の温度がどのくらいかを、言葉だけで説明するのは容易ではない。このように「感覚的な情報を自然に共有する技術」が、仮想環境でのコラボレーションには欠かせない課題になっている。
こうした中で注目を集めるのが空間コンピューティングだ。空間コンピューティングの概念は2003年、マサチューセッツ工科大学(MIT、Massachusetts Institute of Technology)の研究者サイモン・グリーンウォルド氏が論文「Spatial Computing」で提唱した。グリーンウォルド氏は書籍の中で次のように説明している。「空間コンピューティングは機械と人間のインタラクション(相互のやりとり)の一種で、機械が現実の物体や空間を認識し、操作することだ。これは日常生活やビジネスの中で、機械がより頼れるパートナーになるための重要な要素だ」
空間コンピューティングは、現実世界と仮想世界をより直感的かつ自然な形で結び付ける足掛かりとなる。こうした技術を支えるのが、音響や触覚体験の進化だ。例えば、音の方向から話者を特定して自然な会話体験を実現する。車のエンジン音が通り過ぎる際の周波数の変化など、物体人やの動作について情報を得ることもできる。他にも、センサーデータを用いて、温度、位置、動きなどのデータを合わせて分析し、より正確に現実の環境を理解できるようになる。
メタバースや空間コンピューティングに関する書籍を執筆するキャシー・ハックル氏は、「空間コンピューティングは物理的な世界を認識し始めており、人間と機械の関係性は変わりつつある」と話す。つまり最終的には、車や時計といった日常的に使うデバイスが、今以上に周囲の状況を理解して、より賢く動作するようになるということだ。
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