ロサンゼルスの山火事をはじめとする自然災害は、テレワークや勤務地の分散などの必要性を浮き彫りにする。一部の専門家は、自然災害のリスクを軽視する企業に対して警鐘を鳴らす。その内容は。
2025年1月、米ロサンゼルスで発生した歴史的な山火事は、広範囲に被害をもたらした。このような自然災害は、オフィス勤務のリスクを浮き彫りにする。自然災害が発生しても事業を継続させるには、勤務地の分散やテレワークの実施などが必要だ。しかし一部の企業は、こうした災害を「一過性の出来事」と考えている。
コンサルティング会社Global Workplace Analyticsのプレジデントを務めるケイト・リスター氏によると、大手企業が自然災害への備えを考慮する傾向は強まっている一方、「現実との乖離(かいり)も存在する」と説明する。「自然災害に対する記憶は風化しやすい」とも同氏は指摘する。
保険コンサルティング会社Arthur J. Gallagher & Co(Gallagherの名称で事業展開)のHRコンサルティングおよびシニアグロースアドバイザーを務めるデービッド・ルイス氏は「こうした自然災害が予測可能にならない限り、企業は災害を一時的な出来事として扱い続ける」と予測する。
一方、災害に対する備えが企業の業績に影響を及ぼす可能性を示唆する研究結果がある。ボストンカレッジ(Boston College)のキャロル経営大学院のセバスチャン・ステッフェン氏らの研究チームは2021年、テレワークに関する論文「Digital Resilience: How Work-From-Home Readiness Affects Firm Performance」を発表した。
同研究チームは、2億件以上の米国の求人情報を基に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)以前の企業におけるテレワークの実現可能性を評価する指標を考案した。その指標を用いて企業の業績を比較した結果、指標が高い企業はそうではない企業と比べて売上高と純利益が高いことが明らかになった。
複数の災害が次々に発生する「複合自然災害」も、雇用主に影響を及ぼす可能性がある。コンサルティング会社Workplace Intelligenceのマネージングパートナーであるダン・シャウベル氏は「災害の発生頻度が高まる中、非常事態から迅速に復旧できる強靭(きょうじん)な事業継続計画の必要性が浮き彫りになっている」と指摘する。
シャウベル氏は、以下を事業継続計画に盛り込むことを提案する。
同氏は「ロサンゼルスの山火事をはじめ自然災害による被害が増えると、自然災害のリスクへの対処が企業の優先課題の上位に押し上げられる可能性がある」と付け加えた。
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