「CentOS」サポート終了が追い風に SUSEが掲げる“移行策”の勝算は?Linuxとコンテナ市場で成長するSUSE【前編】

サポート終了後も特定の「Linux」ディストリビューションを使い続けたい、ディストリビューション間で移行したいといった、Linuxにまつわる企業の悩みに寄り添うSUSE。同社が成長を遂げている理由は。

2025年02月28日 07時30分 公開
[Aaron TanTechTarget]

関連キーワード

Linux | 仮想化


 ドイツのオープンソースソフトウェアベンダーSUSEは世界市場で成長を遂げている。その成長を後押しするのは、OS「Linux」のサポートサービスの需要や、仮想化市場における変化、人工知能(AI)関連の処理(AIワークロード)能力の強化など、さまざまな要因だ。同社の戦略と成功要因を経営層に聞いた。

「CentOSのサポート終了」に悩む企業を救うサービス

 SUSEのCEOダーク・ピーター・バン・ルーウェン氏が強調するのは、Linuxサポートプログラム「SUSE Liberty Linux」(以下、Liberty Linux)の成功だ。同プログラムは、利用中のOSを置き換えることなくLinuxディストリビューション(配布パッケージ)の提供元を切り替えられるようにする。「CentOS Linux 7」など、サポートやメンテナンスの期限を迎えたLinuxディストリビューションを使う企業の救済策として、SUSEはLiberty Linuxを押し出している。「電話番号はそのままで通信事業者を切り替えるくらい簡単だ」とバン・ルーウェン氏は語る。

 SUSEは、Linuxのサポート期間という点で企業を引き付けている。これは特にレガシーシステムを安定稼働させることを重視する企業にとっては不可欠だ。その一社であるドイツの大手銀行Deutsche Bankは、全てのLinux保守をSUSE製品に移行した。

 この勢いはアジア太平洋(APAC)にも及んでいる。韓国の通信事業者がCentOSのサポートサービスをLiberty Linuxに切り替えた他、台湾の金融サービス機関、インドで決済サービスを提供するNational Payments Corporation of IndiaなどもSUSE製品を利用しているという。

 SUSEでAPAC担当ゼネラルマネジャーを務めるジョセップ・ガルシア氏は、要因は2つあると説明する。1つ目がCentOS 7のサポート終了、2つ目はアップグレードへの出費を避けたいと考える企業の数だ。「こうした企業は、予算をイノベーション推進に回したいと考えている」とガルシア氏は話す。

 今後SUSEはLiberty Linuxを足掛かりにして、同社の他製品/サービスへと企業を誘い込みたい考えだ。バン・ルーウェン氏は、Liberty Linuxを導入した次のステップとして、Linuxディストリビューション「SUSE Linux Enterprise Server」(SLES)に言及する。SLESは、システムの起動失敗時にシステムを以前のバージョンに戻すことで、セキュリティと回復力を高めるファイルシステム「Btrfs」(B-tree file system)、機密性保護といった仕組みを搭載する。

オブザーバビリティツールの拡張

 Linux分野以外では、コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」で扱うコンテナクラスタ(Kubernetesクラスタ)の管理ツール「Rancher」の可観測性(オブザーバビリティ)を補うために、パートナー企業だったStackStateを買収した。StackStateはコンテナの挙動を分析するツールを提供しており、SUSEはこの機能をRancherの商用版「Rancher Prime」に組み込んだ。

 そうした動きを経て、Rancher Primeは調査会社Gartnerの評価レポート「Magic Quadrant」2024年版においてコンテナ管理部門のリーダーに選出された。「2025年も、このオブザーバビリティ機能を含む状態で再度評価されれば引き続きリーダーに認定されるはずだ」とバン・ルーウェン氏は展望を語る。

 既存のオブザーバビリティツールとの連携ができるよう、Rancherは「Splunk」や「Grafana」といった主要なオブザーバビリティツールと接続するためのAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を備える。バン・ルーウェン氏はこれらの外部ツールとの連携性について言及し、双方向のデータフローに対するSUSEの取り組みを強調した。これによってシステム全体を包括的に監視できるようになり、管理の効率化につながる。


 次回は、仮想化とAI分野におけるSUSEの戦略を紹介する。

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国Informa TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

隴�スー騾ケツ€郢晏ク厥。郢ァ�、郢晏現�ス郢晢スシ郢昜サ」�ス

製品レビュー 株式会社クレオ

パッケージではなく開発の必要もない、「業務効率が上がるITシステム」とは?

業務効率を高めて生産性を向上させるために、多くの企業がITシステムの導入を進めている。しかし、自社の業務に合わないITシステムを導入してしまっては、逆に生産性が低下する可能性も高い。この問題をどう解決すればよいのだろうか。

事例 New Relic株式会社

店舗業務と事業を支える全システムを観測、オーケーは保守運用をどう一元化した

システム運用の効率化を目的にクラウドシフトを進める中で、高いレベルの可用性と性能を確保することが求められたオーケー。そこで採用されたのが、あるオブザーバビリティプラットフォームだ。その仕組みや実力を、詳しく解説する。

事例 日本電気株式会社

SoR領域の見直しでデジタル競争力を確保、5社の事例に見る運用自動化の効果

IT人材を非効率なシステム運用業務から解放し、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みにシフトするには、SoR領域の業務を自動化する必要がある。事例が示す成功のカギとは?

製品資料 日本電気株式会社

全社的なシステム運用の自動化を実現、プロセス全体をカバーする統合基盤の実力

システム運用の自動化に取り組む企業が増えているが、ほとんどが個人管理の域であり、局所的な自動化にとどまっているという。本資料では、関係者間の情報伝達を含む広範囲な自動化を実現する上で有効なソリューションについて解説する。

事例 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ・イントラマート

目黒区が理想の調達を実現、業務システムの柔軟な連携を可能にする共通基盤とは

業務ごとに最適なシステムを導入したいが、連携の難しさが課題となっていた目黒区。しかし、ある共通基盤を活用することで、オールインワンの限界を打ち破り、柔軟なIT環境を構築することができた。その成功事例を紹介する。

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...