サポート終了後も特定の「Linux」ディストリビューションを使い続けたい、ディストリビューション間で移行したいといった、Linuxにまつわる企業の悩みに寄り添うSUSE。同社が成長を遂げている理由は。
ドイツのオープンソースソフトウェアベンダーSUSEは世界市場で成長を遂げている。その成長を後押しするのは、OS「Linux」のサポートサービスの需要や、仮想化市場における変化、人工知能(AI)関連の処理(AIワークロード)能力の強化など、さまざまな要因だ。同社の戦略と成功要因を経営層に聞いた。
SUSEのCEOダーク・ピーター・バン・ルーウェン氏が強調するのは、Linuxサポートプログラム「SUSE Liberty Linux」(以下、Liberty Linux)の成功だ。同プログラムは、利用中のOSを置き換えることなくLinuxディストリビューション(配布パッケージ)の提供元を切り替えられるようにする。「CentOS Linux 7」など、サポートやメンテナンスの期限を迎えたLinuxディストリビューションを使う企業の救済策として、SUSEはLiberty Linuxを押し出している。「電話番号はそのままで通信事業者を切り替えるくらい簡単だ」とバン・ルーウェン氏は語る。
SUSEは、Linuxのサポート期間という点で企業を引き付けている。これは特にレガシーシステムを安定稼働させることを重視する企業にとっては不可欠だ。その一社であるドイツの大手銀行Deutsche Bankは、全てのLinux保守をSUSE製品に移行した。
この勢いはアジア太平洋(APAC)にも及んでいる。韓国の通信事業者がCentOSのサポートサービスをLiberty Linuxに切り替えた他、台湾の金融サービス機関、インドで決済サービスを提供するNational Payments Corporation of IndiaなどもSUSE製品を利用しているという。
SUSEでAPAC担当ゼネラルマネジャーを務めるジョセップ・ガルシア氏は、要因は2つあると説明する。1つ目がCentOS 7のサポート終了、2つ目はアップグレードへの出費を避けたいと考える企業の数だ。「こうした企業は、予算をイノベーション推進に回したいと考えている」とガルシア氏は話す。
今後SUSEはLiberty Linuxを足掛かりにして、同社の他製品/サービスへと企業を誘い込みたい考えだ。バン・ルーウェン氏は、Liberty Linuxを導入した次のステップとして、Linuxディストリビューション「SUSE Linux Enterprise Server」(SLES)に言及する。SLESは、システムの起動失敗時にシステムを以前のバージョンに戻すことで、セキュリティと回復力を高めるファイルシステム「Btrfs」(B-tree file system)、機密性保護といった仕組みを搭載する。
Linux分野以外では、コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」で扱うコンテナクラスタ(Kubernetesクラスタ)の管理ツール「Rancher」の可観測性(オブザーバビリティ)を補うために、パートナー企業だったStackStateを買収した。StackStateはコンテナの挙動を分析するツールを提供しており、SUSEはこの機能をRancherの商用版「Rancher Prime」に組み込んだ。
そうした動きを経て、Rancher Primeは調査会社Gartnerの評価レポート「Magic Quadrant」2024年版においてコンテナ管理部門のリーダーに選出された。「2025年も、このオブザーバビリティ機能を含む状態で再度評価されれば引き続きリーダーに認定されるはずだ」とバン・ルーウェン氏は展望を語る。
既存のオブザーバビリティツールとの連携ができるよう、Rancherは「Splunk」や「Grafana」といった主要なオブザーバビリティツールと接続するためのAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を備える。バン・ルーウェン氏はこれらの外部ツールとの連携性について言及し、双方向のデータフローに対するSUSEの取り組みを強調した。これによってシステム全体を包括的に監視できるようになり、管理の効率化につながる。
次回は、仮想化とAI分野におけるSUSEの戦略を紹介する。
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