SaaS開発支援ツール「SaaSus Platform」にAPI公開を支援する新機能を追加。海外に比べて遅れている国内のAPIエコシステムを発展させる起爆剤となるか。
SaaS(Software as a Service)開発/運用支援プラットフォーム「SaaSus Platform」を提供するアンチパターンは2025年3月17日、SaaSus PlatformにAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)実装を60分で可能にする新機能「Smart API Gateway」の提供開始を発表した。
SaaSusは、さまざまなSaaSに共通で必要とされる基本機能をサービス化して提供する「Control Plane as a Service」を実現するプラットフォーム。アンチパターン代表取締役の小笹佑京氏はSaaSusが提供している基本機能に関して「自前で作るのは大変で、差別化要因にはならない非競争領域」だと説明。この部分を同社が担うことで各SaaS事業者は「競争領域へのフォーカスが可能に」なるとその意義を強調した。
新たに提供開始されたSmart API Gateway機能は、「生成AIを活用してAPI定義を自動生成し、APIエンドポイントや各種API Gateway機能を提供」するもの。API公開に必要なインフラや認証機能も提供される。アンチパターンによれば、APIの公開には以下の機能が必要になる。
同社は「これらを独自に実装する場合、各機能ごとに仕様を検討し、設計/実装をする必要があり、合計で約990時間かかる規模」だとした上で、「『Smart API Gateway機能』はこれらをわずか60分で実現するものであり、従来比での作業の削減率は99%に達する」と言う(図1)。
Smart API Gatewayはプログラミング言語および開発・実行環境「Java」のソースコードに対応し、ユーザーが作成したアプリケーションのうち、APIとして公開したい関数のソースコードにSmart API Gatewayのためのアノテーション(データの注釈や付加情報)を付加すると、Smart API Gatewayがソースコードを解析して必要な作業を実行する。ユーザーが追加するアノテーションは10行ほどだという。60分という時間は、主にSmart API Gatewayによるソースコードの解析に要する時間。法人向けSaaSをマルチテナント環境で運営する形を前提として、ユーザーごと/テナントごとにAPIを発行/管理する機能や、発行されたAPIキーに基づく認証/認可、APIエンドポイントやリソースの利用制限、スロットリングによるレート制限、IPアドレスに基づくアクセス制限などの機能を生成する。
さまざまなアプリケーションやサービスでAPIが公開され、その機能が外部から活用可能となっていることで、必要な機能を組み合わせて新しいサービスを生み出すことが可能となるが、日本国内ではAPIの提供や公開は海外に比べてまだ遅れている状況だと小笹氏は指摘する。特定の業界に特化しない機能/サービスを提供する「Holizontal SaaS」の1226種を対象にAPIの提供/公開状況について同社が独自調査したところ、国産製品(運営会社の本社が日本国内)1080サービスでは、APIが提供されているサービスは半数以下の42.3%で、APIが公開されているのは14.7%にとどまった。一方、海外製品146サービスではAPI提供率は92.5%、API公開されているのは126サービスで86.3%に達したという(図2)。なお、API提供は何らかの形でAPIが利用可能となっている場合で、API公開とはAPIが公開されて誰でも利用できる状況を指す。
日本でのAPI公開状況は海外に比べると遅れている状況だが、今後日本でもAPIを公開して相互に利用し合うことでより効率よくサービスを実装し、迅速に提供していくという取り組みが活発化していくものと期待される。小笹氏は昨今急速に関心が高まっているAIエージェントについて「今後はアプリケーションだけではなく、APIエージェントがタスクをこなすためにSaaSなどの外部のソフトウェアをAPI経由で利用するようになる」と語り、ソフトウェア提供者にとってはAPI提供が必須となる未来を予測した。こうした状況を実現する上でも、同社の提供するSaaSus PlatformやSmart API Gateway機能が重要な役割を果たしていくことが期待される。
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