ネットワーク用「AIエージェント」の実力とは? できること、主要ベンダーまとめ構築から運用までを自動化

ネットワーク分野で「AIエージェント」の活用が広がっている。主な機能や注力しているベンダー、活用ポイントなど、ネットワーク用AIエージェントの現状をまとめた。

2025年07月16日 06時00分 公開
[Jim FreyTechTarget]

 人工知能(AI)技術はITのさまざまな分野で普及しており、ネットワークもその例外ではない。ネットワークを構築する際の計画やネットワーク構成の変更、ネットワークの運用管理など、AI技術を利用すれば、人間が担ってきた作業の一部を自動化できる。最近活発になっているのが、ネットワーク製品にAI技術による自動化機能「AIエージェント」を取り入れる動きだ。具体的にはどのようなことができるのか。

「AIエージェント」の主な要素はこれだ

 米Informa TechTargetの調査部門ESG(Enterprise Strategy Group)の定義によると、ネットワーク分野におけるAIエージェントには以下の要素を備える。

  • 自律性
    • 人間の介入なしに、独立して動作できる。
  • データ収集・分析能力
    • 他のAIエージェントを含む複数の情報源からデータを収集、処理し、分析することが可能だ。
  • 推論
    • 過去のデータを分析することで、将来のネットワークパフォーマンスを向上させるための洞察を提供する。
  • 適応性
    • 新たな情報や条件に基づいて分析の方針を調整する。
  • 記憶力
    • 過去の分析結果を記憶し、新たな分析の判断材料として使用する。
  • 外部ツール連携
    • 外部ツールと連携してタスクを実行できる。
  • 目標志向
    • 目標を達成するために自身の行動を最適化する。
  • AIエージェント同士の連携
    • 複数のAIエージェントと協力して目標を達成可能だ。

 近年、さまざまなネットワークベンダーが自社製品にAIエージェントを組み込んでいる。しかし、AIエージェントの定義はネットワークベンダーによって違うので、上記で取り上げた要素全てをカバーしていない場合がある。AIエージェントに近い概念として、ESGは以下の2つを挙げる。

  • エージェンティックレディ(Agentic-ready)
    • エージェンティックレディの製品はAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)や、AIモデルを外部のデータソースと連携させるプロトコル「Model Context Protocol」(MCP)に準拠し、AIエージェントを利用しやすくしている。
  • エージェントベース(Agent-based)
    • エージェントベースの製品は、上記で取り上げたAIエージェントの要素を部分的に搭載する。今後進化すれば、完全なAIエージェントになる可能性がある。

AIエージェントの現状

 AIエージェントの流行を受けて、さまざまなネットワークベンダーがAIエージェントの開発に取り組んでいる。以下で具体例を見てみよう。

  • Hewlett Packard Enterprise(HPE)傘下のJuniper Networks
    • Juniper NetworksのAI技術用インフラ「Mist AI」はAIエージェント「Marvis」をベースとしている。同社はAI技術によって仮想的な空間を作り、新しいネットワークサービスをリリース前にシミュレーションできる仕組み「Marvis Minis」も投入している。Mist AIはAIエージェントを部分的に備えていることから、エージェントベースに該当する。
  • Extreme Networks
    • 同社の「Extreme Platform ONE」は、AIエージェントを備えた、ネットワークを一元的に運用、管理するための製品だ。この製品は、AIエージェントの利用を想定した設計を採用している。複数のAIエージェントが協力してタスクを実行することを含め、上記で取り上げた要素を網羅している。そのため、本格的なAIエージェント製品だと言える。
  • LogicMonitor
    • 同社は2024年、AIエージェント「Edwin AI」を投入した。Edwin AIは、システム運用管理時のアラートを相関分析して整理し、管理者が直接対処すべきアラートの数を減らすことで、効率化を支援する。AIベンダーOpenAIやServiceNowの製品との連携も可能だ。
  • Kentik
    • 同社は2024年、AI技術による通信分析ツール「Kentik AI」をリリースした。Kentik AIは、自然言語によって問い合わせができるアシスタント機能を備えている。
    • 同社はMCPへの準拠といった、より広範囲でAI技術の利用を可能にする機能の追加に取り組んでいる。
  • Itential
    • 同社はMCPでAIエージェントと外部システムを連携する「MCPサーバ」を立ち上げ、外部のAIエージェントやAIOps(AI技術を用いたIT運用)ツールとの相互運用を可能にした。
  • NetBox Labs
    • 同社はデータ分析の自動化を図れるツールの提供を開始する他、外部システムから同社データベース製品にアクセスするためのMCPサーバを投入している。

 ネットワークのAIエージェントは急速に進化している分野だ。今後さまざまな新機能や製品が登場することが期待される。特に焦点になるのは、AIエージェントが、日常的に発生するタスクや課題に対してどのような成果を上げることができるかという点だ。ユーザー企業はAIエージェントの有効活用に備え、以下の3つの取り組みに着目しておくとよい。

  • 分析価値があるデータの収集
  • AIエージェントの管理方法
  • 他ツールとの連携方法

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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