VMware代替、AIインフラ投資の行方は? HPEが示した“3つの新潮流”最新インフラトレンドの核心に迫る

HPEが2025年6月に開催したイベント「HPE Discover」では、3つのITトレンドが明らかになった。重要になるのは、VMware製品の代替、AI向けインフラ、ネットワークの観点だ。

2025年08月27日 05時00分 公開
[Scott SinclairTechTarget]

 2025年6月に開催されたHewlett Packard Enterprise(HPE)のイベント「HPE Discover」では、幅広い分野にわたってさまざまな発表が行われた。本稿はHPEの最高経営責任者(CEO)アントニオ・ネリ氏の発言を手掛かりにしながら、2025年にITリーダーが押さえておくべき3つの最新トレンドを読み解く。

第1のトレンド:VMware代替の行方から目を離すな

 2024年2月、BroadcomがVMware製品のライセンス体系を変更して以来、多くの組織がVMware製品の代替手段を模索してきた。他の仮想化基盤に移行した企業もあるが、大多数は現状維持のままだ。

 2024年11月、企業のニーズに応えようとHPEは新製品を発表した。仮想化ソフトウェア「HPE Morpheus VM Essentials」だ。HPE Morpheus VM Essentialsを使用すると、VMware製品ベースの仮想マシン(VM)と、HPE Morpheus VM Essentials Softwareベースの仮想マシンの両方を、オープンソースの「KVM」(Kernel-based Virtual Machine)ベースの専用ハイパーバイザーを使って単一のインタフェースからまとめて管理できる。

 プライベートクラウド構築サービス「HPE Private Cloud Business Edition」を使えば、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)「HPE Alletra Disaggregated HCI」(HPE Alletra dHCI)上に構築されたプライベートクラウドの一機能としてHPE Morpheus VM Essentialsを使用することも可能だ。イベントでネリ氏は、「HPE Morpheus VM Essentialsを利用すれば、仮想化環境のライセンスコストを最大90%削減できる」と力説した。

 Red Hat、Microsoft、Nutanix、Verge.ioもVMware製品の代替となるハイパーバイザー製品を提供している。ITリーダーが代替手段を評価する際には、セキュリティ、スケーラビリティ(拡張性)、コストについて精査するだろう。より重要なのは、その代替手段への移行の難易度と、クラウドサービスとオンプレミスシステムを併用するハイブリッドクラウドや、コンテナのサポートなど、将来のニーズに対応できる柔軟性をその代替手段が備えているかどうかだ。

第2のトレンド:AI向けインフラ製品の台頭に備えよ

 AI用インフラへの投資が進む中、主要な変化が起きているのがサーバおよびストレージ分野だ。ほぼ全てのベンダーが、AIのニーズに対応するために、高性能で拡張性に優れた製品をラインアップに追加している。HPEは「HPE Compute XD690」を発表した。これはAIのトレーニングと推論のために、NVIDIAのAI向け高性能GPU(グラフィックス処理装置)を8基搭載可能だ。

 HPEは今回のイベントで、2024年末に発表したオブジェクトストレージ「HPE Alletra Storage MP X10000」についても、AIモデルを外部のデータソースと連携させるプロトコル「Model Context Protocol」(MCP)のサポート追加など、強化を発表した。HPE Alletra Storage MP X10000は、AIのトレーニングと推論に必要となる、大量の非構造化データをサポートできる拡張性を備えた高性能ソフトウェア定義ストレージ(SDS)だ。

 AIの性能を最大限引き出すためには、質の高いデータが必要だが、モデルのトレーニングや検索拡張生成(RAG)に必要なデータを特定し、タグ付けする作業は複雑で時間がかかる。HPE Alletra Storage MP X10000は、ほぼリアルタイムでデータをAI対応に変換する“インラインメタデータ強化機能”を備え、トレーニングにかかる時間を短縮できるという。

 HPEはさらに、エンタープライズ向けに、設定済みですぐに利用できる「ターンキー」型アプローチを採用した“AIファクトリー”(AI開発・トレーニング・運用基盤)製品「HPE Private Cloud AI」の拡充を発表した。HPEは用途に応じてカスタマイズ可能な製品も提供している。

 AIへの投資を決定するITリーダーは、AIプロジェクトを成功に導くにはGPUに投資するだけでは不十分だということを理解しておく必要がある。企業のAI活用が成熟するにつれて、AI向けインフラはコンピュータとストレージだけにとどまらなくなる可能性がある。AIを管理するインフラの適切な設計が不可欠だ。

第3のトレンド:AIプロジェクトの成功にはネットワークの検討が不可欠

 ネリ氏はHPE Discoverの基調講演で、AIとハイブリッドクラウドに“セキュアなネットワーク”を加えた3つの分野をHPEの企業戦略の3本柱として挙げた。このうち、ネットワークの戦略的重要性が、 HPEが製品ラインアップの拡充を目指してネットワーク機器ベンダーJuniper Networksを買収した理由だ。

 分散アプリケーションの運用を支えるため、ネットワークは明らかに重要だ。加えて企業によるAIへの取り組みが広がるにつれ、AIアクセラレーター(AI関連処理を高速化するために設計されたハードウェア)の要件を満たすために、ストレージとネットワークで構成されるデータパイプラインのモダナイゼーション(最新化)の重要性がますます高まっている。ITリーダーにとっては、AI投資におけるネットワークの検討が欠かせないことが分かる。

翻訳・編集協力:雨輝ITラボ(リーフレイン)

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