オンプレミスに「as a Service」がもたらす進化とは? HPE GreenLakeで考察“クラウドの利点”をオンプレミスで再現

ユーザー企業はオンプレミスインフラにもクラウドサービスのような利点を求めるようになっている。どのような変化があるのか。HPE GreenLakeを参考にして考える。

2024年07月16日 05時00分 公開
[Scott SinclairTechTarget]

 ITインフラのモダナイゼーション(近代化)が企業にとっての悩ましい課題となる中、クラウドサービスの利点をオンプレミスインフラで再現しようとする動きが目立っている。オンプレミスインフラにどのような変化があるのか。Hewlett Packard Enterprise(HPE)のオンプレミスインフラ向けサービス群「HPE GreenLake」を参考にして考えてみよう。

オンプレミスに「as a Service」がもたらす進化とは

 HPE GreenLake は、オンプレミスインフラを従量課金型で提供するサービス群だ。HPE は近年、HPE GreenLakeに次の製品を追加した。

  • HPE GreenLake for Block Storage
    • スケールアウト型ブロックストレージ。複数台のストレージを連携させて論理的な1つのシステムとして動かすことが可能。
    • 従来型のストレージ(スケールアップ型ストレージ)でも複数台のストレージを論理的に束ねて容量を拡大することは可能だが、スケールアップ型ストレージの容量拡張は、ストレージを制御するコントローラーが管理可能な数までに制限。
    • スケールアウト型はストレージだけではなくコントローラーの数も拡張できるため、より大容量の構成が可能。
  • HPE GreenLake for File Storage
    • ストレージベンダーVast Dataと提携して開発したファイルストレージ。
    • 機械学習などの人工知能(AI)技術やハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、データレイクに関係するアプリケーション向けのストレージ。「生成AI」(ジェネレーティブAI)や大規模言語モデル(LLM)の開発や学習など、一般的に膨大なデータを必要とする用途に活用可能。
  • HPE Alletra Storage MP(マルチプロトコル)
    • OSを切り替えることでブロックストレージとしてもファイルストレージとしても利用できるストレージ。
    • 2U(ユニット)サイズの筐体(きょうたい)にフラッシュストレージや入出力(I/O)操作を制御する「I/Oモジュール」を、任意に組み合わせて構成可能。

 興味深い変化は、HPE GreenLake for Block StorageとHPE GreenLake for File Storageは、製品購入型と従量課金型を選択できるようになったことだ。前者はCAPEX(資本的支出)型、後者はOPEX(事業運営費)型と表現できる。従量課金型を採用することで、自社の必要に応じてインフラの利用量を調整することができる。

クラウドサービスをオンプレミスインフラで再現

 オンプレミスで利用するハードウェアを、マネージドサービスや従量課金制で提供するベンダーは増加傾向にある。ベンダーは、クラウドサービスの特性をオンプレミスインフラで再現しようとしている。

 米TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)が企業のIT部門を対象に実施した調査では、オンプレミスインフラで「as a Service」型のサービスを利用するメリットとして以下が挙がった。

  • コストを繰り越し可能になったことで、ITプロジェクトの進展が加速
  • 作業をアウトソーシングすることで、運用以外に人材を配置

 HPE GreenLakeからは、オンプレミスであってもクラウドサービスのようなアーキテクチャで運用できる仕組みを構築しようとしているHPEの意図が伺える。例えばハードウェアをモジュール構造にして標準化する一方で、「ソフトウェア定義ストレージ」(SDS)を充実させることは、運用効率の向上につながると考えられる。

 HPE GreenLakeのインフラには、従来型の製品と比べて以下のメリットが期待できる。

  • ハードウェアの標準化による在庫管理の効率化およびコスト削減
  • ハードウェアの標準化とモジュール形式の採用による容量や機能拡張の容易化

 ただし、これらのメリットには全て「可能性」という言葉が付きまとう。こうしたメリットはハードウェアの標準化によって実現する可能性のある一例に過ぎない。HPEがこうしたメリットの提供に成功するかどうかを判断するには、しばらくの年月が必要となる。それでも、HPEの考え方は賢明であり、特にITエンジニアには好まれるはずだ。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

譁ー逹€繝帙Ρ繧、繝医�繝シ繝代�

技術文書・技術解説 ドキュサイン・ジャパン株式会社

導入が進む一方で不安も、電子署名は「契約の証拠」になる?

契約業務の効率化やコストの削減といった効果が期待できることから、多くの企業で「電子署名」の導入が進んでいる。一方で、訴訟問題へと発展した際に証拠として使えるのかといった疑問を抱き、導入を踏みとどまるケースもあるようだ。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

VMware「永久ライセンス」を継続する“非公認”の方法

半導体ベンダーBroadcomは仮想化ベンダーVMwareを買収してから、VMware製品の永久ライセンスを廃止した。その永久ライセンスを継続する非公認の方法とは。

製品資料 日本ヒューレット・パッカード合同会社

無計画なハイブリッドクラウドが招く弊害、次世代のITインフラでどう解消する?

クラウドファーストの流れが加速する中、無計画に構築されたハイブリッドクラウドの弊害が多くの企業を悩ませている。ITオペレーションの最適化を図るためには、次世代のハイブリッドクラウドへのモダン化を進めることが有効だ。

市場調査・トレンド 日本ヒューレット・パッカード合同会社

ハイブリッドクラウド環境におけるワークロードの配置を最適化する方法とは?

ワークロードを最適な環境に配置できる手法として注目され、多くの企業が採用しているハイブリッドクラウド。しかし、パフォーマンス、法令順守、コストなどが課題となり、ハイブリッドクラウド環境の最適化を難しくしている。

市場調査・トレンド 株式会社QTnet

業種別の利用状況から考察、日本企業に適したクラウドサービスの要件とは?

システム基盤をオンプレミスで運用するか、データセンターやクラウドで運用するかは、業種によって大きく異なる。調査結果を基に、活用の実態を探るとともに、最適なクラウドサービスを考察する。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...