「RPAは無意味だった」という“残念な結果”になる理由RPAとBPMによる業務改善の現実【後編】

「RPA」は業務効率を改善するために活用できる手法だが、必ずしもRPAによる効率化が成功するとは限らない。RPAの取り組みが無意味になってしまうのはなぜなのか。

2024年07月15日 08時00分 公開
[George LawtonTechTarget]

 「RPA」(ロボティックプロセスオートメーション)は、業務プロセスの効率化を図るために必要になる手法だ。だがRPAを使っても期待通りの成果を得られるとは限らず、失敗に終わるケースは珍しくない。RPAの意味がなくなってしまうのはなぜなのか。RPAに関する“ある誤解”が、そうした失敗を生んでいる可能性がある。

「RPAが無意味」になるのは何が理由なのか?

 RPAは、反復的な定型の作業を自動化するために使える手法だ。プロセスの無駄をなくしたり、何らかの判断が必要なプロセスを自動化したりすることにまで直接的に役立つとは限らない。

 RPAツールが登場したばかりの頃は、自社の業務に合わせてカスタマイズできる機能をあまり備えていなかった。それを理由にRPAの導入を躊躇(ちゅうちょ)する組織があった。2019年、調査会社GartnerがRPAとAI(人工知能)技術の連携による「ハイパーオートメーション」(完全な自動化)という概念を提唱した。プロセスマイニングや機械学習、ローコード/ノーコード開発などの技術を組み合わせ、単純なRPAよりも高度なワークフローの自動化を実現できるようになる。

 これらの自動化の手法を取り入れたとしても、業務プロセスの効率化が成功するとは限らない。それを補完できる関係にあるのが、「BPM」(ビジネスプロセスマネジメント)だ。BPMは、業務プロセスの全体像を把握し、個々のプロセスの最適化を図る手法だ。BPMで得られる洞察に基づいて、ワークフローの効率化や業務生産性の向上、コスト削減などを検討することが可能になる。BPMは、業務プロセスの品質と効率を向上させる以下のような手法を取り入れている。

  • フレデリック・テイラーの「科学的管理手法」
  • ピーター・ドラッカーの「マネジメント理論」
  • 通信機器メーカーだったMotorolaが開発した「シックスシグマ」

 業務プロセスを理解する専門家が、従業員から業務について聞き取りや観察を実施して、手作業で業務プロセス図を作成していた時代もあった。しかしその過程で制作される図は静的で、実際の業務プロセスに適用するには追加の作業が必要だった。業務プロセスの改善点を自動で明確にしたり、新たなワークフローを実装したりするツールの登場で、BPMは進化している。

 「RPAは業務プロセスの自動化に特化している一方、BPMは組織の中でその業務がどのように進行し、ビジネスにどう結び付いているかを理解するためにある」。BPMベンダーBlueprint Software Systemsでビジネスプロセスデザイン担当CEOを務めるダン・シマーマン氏はこう話す。特に、作業に規則性があって再現性が高く、手作業で実施するとミスが発生しやすい業務は、RPAの導入に適しているとシマーマン氏は説明する。やみくもにRPAを適用しても、効率化が図れるとは限らない。

 経営コンサルティング会社AAreteのデータサイエンス&アナリティクス担当バイスプレジデント、プリヤ・イラガバラプ氏は次のように語る。「個々の業務が、業務プロセス全体のどの部分を担っているのかを評価し文書化することがBPMの役割だ」。プロセスマッピングについては、BPMの一環として業務プロセス全体を理解するための情報と改善策を提供するためのものだとイラガバラプ氏は説明する。

 RPAもBPMも業務を円滑化し、無駄を排除することを目的にしていることは同じだが、それぞれの役割を理解して使い分けることが重要になる。RPAは個々の業務を従業員の代わりに実行するためにある。BPMは業務プロセスの戦略立案や見直し、改善に貢献するものだ。

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