AWS、Microsoft、Google「3大サーバレス」の違いとは?サーバレスコンピューティングの基礎解説【第4回】

企業はサーバレスコンピューティングサービスを選ぶ際、どのようなポイントに注意すべきなのか。AWSやMicrosoft、Googleなど主要ベンダーが提供するサービスの特徴と併せて、失敗しない選び方を解説する。

2024年07月15日 05時00分 公開
[Liam ClearyTechTarget]

 サーバレスコンピューティングには、サーバ運用の省略化、スケーラビリティ(拡張性)の確保、コスト効率化といったメリットがある。企業は適切なサーバレスコンピューティングサービスを選ぶために、どのポイントに注目すべきなのか。本稿は、

  • AWS Lambda(以下、Lambda)
  • Azure Functions
  • Google Cloud Functions(以下、Cloud Functions)

など主要サービスの特徴と併せて、選定時のポイントを解説する。

「3大サーバレス」の違いとは 選定時のポイントは?

 サーバレスコンピューティングサービスを選ぶ際に考えるべき主な要素は以下3つだ。

  • 互換性
    • 使用したいプログラミング言語との互換性があるかどうか、既存のサービスと連携可能かどうかを確認する。
  • 価格設定
    • リクエストの「無料利用枠」がある場合、それを超えると課金されるのかどうか、使用量に応じた料金体系(従量課金制)になっているかどうかなど、各サービスの価格設定を確認する。実行速度や起動にかかる時間、稼働の安定性などを基準に、コストパフォーマンスも評価する。
  • サポート
    • 問題発生時にどんな情報を参照できるのか、ベストプラクティスに関するアドバイスを得られるかどうかを確認する。活発なコミュニティーや充実したサポート体制が存在すると、問題は解決しやすい傾向にある。

 主なサーバレスコンピューティングサービスは以下の通り。

AWS Lambda

 「Amazon Web Services」(AWS)のLambdaは、サーバレスコンピューティングの先駆け的存在だ。イベント駆動型で、イベントが発生するたびに自動でソースコード実行とリソース調整を実施するため、予期しないトラフィック(通信量)の増加にも対処できる。幅広いプログラミング言語をサポートし、他のAWSサービスとの連携機能も充実している。

 Lambdaが適しているのは以下のような用途だ。

  • イベント駆動型アプリケーション
    • データ更新やユーザーアクションの変化など、イベントに応答するアプリケーションに適している。特に、リアルタイムデータを効率的に処理に向いている。
  • API(アプリケーションプログラミングインタフェース)のバックエンドサービス
    • AWSのAPI管理サービス「Amazon API Gateway」と連携することで、LambdaをAPIリクエストのバックエンドサービスとして使用できる。

Azure Functions

 MicrosoftのAzure Functionsも、Lambda同様にイベント駆動型のサーバレスコンピューティングサービスとなる。設定や管理、運用プロセスの自動化といったオーケストレーションタスクの支援に適している。多様なプログラミング言語が利用可能な他、クラウドサービス群「Microsoft Azure」と連携し、機能を拡張できることが特徴だ。

 Azure Functionsを使用すると、Webリクエストに応答するためのHTTPベースのサービスを構築できる。IoT(モノのインターネット)デバイスから取得するデータのストリーム処理(リアルタイムでデータを処理する手法)も可能だ。データベースのクリーンアップやバックアップなど、定期的なジョブ実行の自動化にも活用できる。

Google Cloud Functions

 GoogleのCloud Functionsは、Googleの機械学習やデータ分析の機能と統合されている。

 クラウドストレージ「Google Cloud Storage」やデータウェアハウス(DWH)サービス「BigQuery」などが生成するデータをCloud Functionsで処理するといったことも可能だ。

 Cloud Functionsは、Webサービスやモバイルアプリケーション向けのAPIエンドポイント(特定のAPIリクエストを受け取り、それに応じてデータを送受信する一意のアドレス)作成に適している。スケーラビリティに優れており、リクエストの数に応じて自動的にリソースをスケーリングできる。

その他のサーバレス製品

 IBMやOracle、Alibaba Cloud、Cloudflareなどのベンダーも、主要クラウドベンダーとは異なる選択肢としてのサーバレスコンピューティングサービスを用意している。

 例えば、既存のクラウドサービスとの連携機能や、エッジコンピューティング機能など、独自機能を提供している。他にも、競争力のある価格設定や、人工知能(AI)技術やIoTといった特定分野向け、特定産業向けに特化したサービスもある。

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