近ごろのRPA製品は「反復作業の代行」にとどまらず、ローコード開発やプロセスマイニングなどさまざまな機能を搭載するようになった。RPAベンダーが目指している進化の道筋はどのようなものなのか。
調査会社Gartnerが2022年8月に公開した資料によると、2022年の全世界におけるRPA(ロボティックプロセスオートメーション)ソフトウェアへの支出額は約29億ドルに達する。これは「機械が人間の仕事を奪っている」という考えを補強するデータだと言えるが、ありがたいことにRPAソフトウェアは「退屈だが必要な反復作業」を代行してくれる。
今後RPAソフトウェアは、反復作業を代行する役割で終わり、徐々に消える可能性があるのか。あるいはまだ未来が残っているのか。
Gartnerのシニアマーケットリサーチスペシャリストであるバーシャ・メータ氏によると、RPAソフトウェアのベンダーは従来の単一技術に特化した製品でなく、複数の機能を組み合わせたツール群の提供にシフトしつつある。こうしたツール群は、例えば
などの機能を含んでいる。その目的は、ビジネス全体の自動化を目指す「ハイパーオートメーション」を実現する仕組みを作ることだ。
企業はビッグデータの分析に苦労しているが、機械学習などの人工知能(AI)技術のおかげである程度は楽になっている。AI技術が市場のパターンや顧客の習慣、事業の方向性に関する洞察をもたらすのに対して、RPAは「方法」を提供するという違いがある。
データ分析ツールベンダーTIBCO SoftwareのCTO(最高技術責任者)であるネルソン・ペトラセク氏は、企業が効率化や生産性向上などの目標を達成するためには「機能的でプロセス駆動型のRPA」が非常に重要だと考えている。「自動化という幅広い目標を達成するために必要なのは、さまざまな技術を融合した仕組みだ」とペトラセク氏は話す。
botが人間のそばで動作したり、人間の代わりをしたりするような使い方だけでなく、より幅広い能力の観点からbotの役割を考える必要があるとペトラセク氏は指摘する。例として、同氏は次のような例に言及する。プロセスマイニングやタスクマイニングにおいて、botはアプリケーションのログや負荷を参照して「内部で何が起きているのか」を観察できる。つまり、従業員がどう働いているか、手抜きやタスクの反復があるかどうかを把握できるのだ。こうして状況を把握することによって、プロセスの改善、効率や生産性の向上につなげることができる。
生産性の向上、コストの削減、従業員の貴重な時間の確保は、RPAによるプロセス自動化が役立つ代表的な課題だ。コンサルティング会社Deloitte Consultingが2022年6月に公開した、インテリジェントオートメーション(AI技術を用いた高度な業務自動化)に関する調査によると、企業はその重要性を認識しており、回答者の74%が既にRPAを導入している。
「調査対象のうちインテリジェントオートメーションの試験運用を済ませた企業は、対象とした業務分野で平均32%のコスト削減を達成し、成果は2020年よりも向上した」。Deloitte Consultingのインテリジェントオートメーションチームのパートナー、デビッド・ライト氏はこう説明する。2020年調査時のコスト削減率は24%だった。
第2回は、これからのRPAが担う「効率化」以上の役割について解説する。
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