AIモデル開発の覇権を争うMetaが、100億ドル規模の契約をGoogleと締結した。AIモデルや広告市場で競合する両社が、なぜインフラ分野では手を組むのか。一見矛盾した提携の裏にある、AI市場の奇妙な構図とは。
2025年8月、Meta Platforms(以下、Meta)がGoogleのクラウドサービスを利用することについて、100億ドル規模、6年間の契約を結んだと複数のメディアが報じた。人間の知能をはるかに超える知能を持つAI(人工知能)である「超知能」(Superintelligence)の実現を目指すための戦略上の一手だという。
この提携は、Metaが2025年第2四半期(4〜6月)の決算を発表した後のことだった。決算報告によると、同四半期の収益は、2024年同期(2024年4〜6月)比で22%増の475億2000万ドルに達した。一方で総費用も12%増の270億7000万ドルに膨らんでおり、同社はその主な原因を「インフラと人件費の増加」だと説明した。2025年の年間総費用は1140億〜1180億ドルになる見込みだという。
Metaの最高財務責任者(CFO)であるスーザン・リー氏は決算報告会で、次のように語った。「当社の最優先事項は事業への再投資、特にインフラと人材の補強だ。最高のAIモデルとサービス体験を生み出すには最先端のAIインフラが不可欠であり、その実現に向けて2026年には投資を大幅に増やす計画だ」
今回MetaがGoogleと契約した主な目的は、AIインフラの大規模な拡張(スケーリング)にある。調査会社Gartnerのアナリストであるチラグ・デカテ氏は、Metaが求めているのは「信頼性および安定性に優れた計算能力と、それを支えるインフラの拡張」だと指摘する。
この動きは、これまで大手クラウドベンダーと協力してきたMetaの戦略に沿ったものだ。
米Informa TechTargetの調査部門Omdiaでアナリストを務めるトルステン・フォルク氏は、次のように分析する。「自社のデータセンターと、大手クラウドベンダーのインフラでAIモデルの開発システムを同時に稼働させることは、拡張性を高める鍵になり得る。超知能の開発において、このような拡張性はMetaに決定的な競争優位性をもたらすだろう」
「この契約はMetaのAIインフラの拡張を後押しするものであると同時に、Googleにも大きなメリットを生む」とデカテ氏は語る。MetaがGoogleを選んだという事実が、「AIモデル開発に最適化されたクラウドサービス分野で、Googleがリーダーシップを握っていることの確かな証明」になるからだという。同氏は、MetaがGoogleを選んだ理由として、高度なネットワーク技術群を挙げる。
「Googleは独自のインフラ技術によって、他社にはない規模でのデータセンター間連携とSDN(ソフトウェア定義ネットワーク)を実現してきた」(デカテ氏)
デカテ氏によると、MetaとGoogleはAIモデルや広告、検索といった複数の分野で競合しているが、インフラ分野では事情が異なる。AIモデルの開発競争は、開発元がどれだけ潤沢な計算資源を有しているかにかかっている。優れたAIモデルを開発するためならば、たとえ競合他社のサービスであっても採用するという判断が優先されるのだ。
Googleのサービスを採用しているAIベンダーはMetaだけではない。OpenAIも2025年夏に、Googleのクラウドサービスを導入したことが報じられた。
デカテ氏は次のように語る。「競合他社がGoogleのクラウドサービスを利用しているという事実は、その技術力だけではなく、セキュリティやユーザー企業データのプライバシーを重視する、同社の姿勢の証明でもある」
AIモデル開発競争が激化し、Metaが超知能の実現を目指す中で、「優れたインフラを提供するクラウドベンダーの存在が不可欠だ」とデカテ氏は言う。
デカテ氏は、Meta、Google、OpenAIは、AI分野で繰り広げている競争において、まず消費者市場で覇権を握ることを目指していると分析する。同氏の考えでは、技術はまず消費者に広まり、その後企業に広まるという流れが定着しているからだ。AI分野における消費者市場の頂点に立つためには、AIモデルの推論処理を実行し、最高のAIモデルを訓練できる、極めて高性能なインフラが不可欠だ。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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