モバイル通信業界団体のGSAは、各国の周波数オークション結果を調査して利用実態を公開している。2025年のレポートでは、低・中・高の3周波数帯の動向を整理し、6G研究が進む中でも5Gが依然として重要な役割を担うと指摘した。
モバイル通信の業界団体Global Mobile Suppliers Association(GSA)は、会員向けに業界の最新情報を提供している。通信事業者は特定の国や地域で電波を利用するためのライセンスを“周波数オークション”で取得するが、GSAは各国の周波数オークションでの落札価格を調査、公開しており、ここから各周波数帯ごとの利用状況が読み取れる。
GSAが2025年7月に公開した調査レポートは、「6G」(第6世代移動通信システム)の実用化に向けた研究が世界的に進む中、「5G」(第5世代移動通信システム)が今後重要な役割を担うことを示唆している。
5Gおよびそれ以前の移動通信システムの利用する電波の周波数帯は以下の3つに分類できる。
GSAの調査レポートはそれぞれの周波数帯の利用ライセンスの落札価格と、そこから読み取れる利用状況に対する洞察を以下のように説明している。
落札価格が最も高い周波数帯だが、金額自体は著しく下落している。この傾向についてGSAのアナリストは、誰もがネットワークへの接続を保証された「デジタルインクルージョン」(包摂性)の実現に向けて、カバレッジ(通信可能エリア)をへき地まで広げ、利用料金を手頃なものにしようという、各国・地域の規制当局の取り組みの表れとみる。IoT(モノのインターネット)や緊急サービスにも使用される。
大部分のトラフィック(ネットワークを流れるデータ)が伝送される、5Gの中核を担う周波数帯だが、落札価格、特にCバンドの落札価格は2023年以降大幅に下落している。アナリストは、カバレッジの広がり、市場の成熟、通信事業者がすでに十分な割り当て周波数帯を保有していることを理由として挙げている。
ハイバンド、特にミリ波の落札価格の世界平均は、ミッドバンドに比較して大幅に低いままだが、ユーザー宅と通信事業者の中継網を無線でつなぐ「固定無線アクセス」(FWA:Fixed wireless Access)サービス、産業用「プライベート無線ネットワーク」(自営無線網)、人や建物が密集しているエリアでの通信など、高速大容量通信が求められるユースケースにおいてこの周波数帯の価値はますます高まっているとアナリストは指摘する。
ミリ波については、最近ブラジルで展開されたり、英国とインド、日本での周波数オークションが計画されていたりと、さまざまな動きが見られる。市場に出ているミリ波対応モバイルデバイスが世界で150種類を超えるなど、アナリストはミリ波の商用利用がさらに進むと予測する。
こうした結果を受け、GSAのプレジデントを務めるジョー・バレット氏は次のように語る。「6Gへの移行に注目が集まりがちだが、『2G』(第2世代移動通信システム)と『3G』(第3世代移動通信システム)のサービス終了も見過ごせない。これによって通信事業者に新たに解放される周波数帯を活用した5Gと『4G』(第4世代移動通信システム)の新たなサービスが生まれるだろう」
バレット氏は、全体としてミリ波の採用は世界的にはまだ初期段階だが、特に周波数帯利用についての政策、インフラの整備状況、都市の密集度など、条件がそろっている地域では、ミリ波への投資が増えていると分析する。加えて、今後は人工知能(AI)技術を活用した、スマートで国際的な調和を重視した周波数帯の割り当てと利用が進み、柔軟で高性能な未来のモバイル通信が実現するとみる。
翻訳・編集協力:雨輝ITラボ(リーフレイン)
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