2030年ごろに登場する可能性がある6G。世界各国でその研究開発が進んでいる。6Gの研究開発で注目されているのが、フィンランドのオウル市だ。同市で進むプロジェクトとは。
モバイル通信は約10年ごとに新しい規格が登場してきた。1980年代初めに「1G」(第1世代移動通信システム)が登場して以来、2019年に商用利用が始まった「5G」(第5世代移動通信システム)に至るまで世代交代を繰り返している。
これまでの傾向に沿うと、2030年を目安に「6G」(第6世代移動通信システム)が登場する。6Gの研究開発やビジョン策定の中心となっている都市がある。フィンランドのオウル市だ。
オウル市は、フィンランドの首都ヘルシンキから飛行機で約1時間、ファインランド中部の北緯65度に位置している。人口は2022年末時点で約21万2000人で、フィンランドを代表する都市の一つだ。2026年には欧州連合(EU)が加盟国内から毎年指定する「European Capital of Culture」(欧州文化首都)となる予定だ。
オウル市が研究開発の中心都市としての地位を築けたのは、逆境を乗り越えた結果だ。かつて通信機器ベンダーNokiaの重要な拠点の一つだったオウル市は、2011年頃にNokiaが業績不振に陥ったときにその影響を強く受けた。Nokiaが生み出していた何千人分もの雇用を失い、エンジニアは新たな道を模索することとなった。
こうした逆境に屈することなく、オウル市とそこに集う人材は新たな挑戦を決意した。その結果、大企業に依存する形から脱却して、主に無線通信技術を生かしたスタートアップ(先進的なアイデアで急成長する企業)が次々と生まれた。
軍用短波ラジオシステムベンダーKNL(2023年にTelenor Maritimeと統合)はオウル市で生まれたスタートアップの一つだ。短波ラジオとは、3MHzから30MHzまでの周波数帯を利用して音声を送るものだ。
KNLのCEOであるトニ・リンデン氏は、「KNLの短波ラジオシステムでは、2つのノード(デバイス)間で数千キロに及ぶ通信が可能だ」と説明する。KNLはソフトウェア技術によって信号品質を改善して暗号化を施した短波ラジオを軍用に提供しており、フィンランド政府も利用している。
フィンランドにおける6Gの公的研究は、「6G Finland」「6G Bridge」「6G Flagship」の3つの主要プログラムによって構成されている。このうち、フィンランドにおける6G関連政策と戦略的議論の中心となっているのが、6G開発を推進するプログラムの6G Finlandだ。オウル市のビジネス支援部門であるBusinessOuluが同プログラムにに参加している。
6G Finlandはフィンランド国内外の6Gに関する議論の窓口となっており、国内の団体や欧州連合(EU)と6Gの見解について議論や調整をしている。フィンランド政府は6G Finlandを介してEUが主導する6G研究プロジェクト「Hexa-X」および「Hexa-X-II」の関連プロジェクトに資金を拠出している。
次回以降は、6G開発の中心となっているフィンランドのオウル大学と、フィンランドにおける6G開発のその他のプロジェクトを紹介する。
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