企業は、メインフレームに配置すべきワークロードを、クラウドに配置するという選択をすることがある。そうした事態はなぜ起きてしまうのか。ワークロードに最も適切なITインフラを選ぶにはどうすればよいのか。
調査会社Freeform Dynamicsで働く筆者は、同僚のアナリストであるトニー・ロック氏と共に、メインフレーム関連のコンサルティングを手掛けるMainframe Analyticsのチーフストラテジストのレグ・ハルベック氏にインタビューをした。
ハルベック氏は現代の企業が抱える課題として、ワークロード(アプリケーション)が適切でないITインフラに配置されていることがある点を挙げる。具体的に言うと、メインフレームで実行すべきワークロードが、オンプレミスの「x86」系サーバやパブリッククラウドで実行されることがその一例だ。こうした事態はなぜ起きるのか。メインフレームを含めたさまざまなITインフラから適切な選択ができるようにするには、何が必要なのか。
メインフレームで実行すべきワークロードが、x86系サーバやパブリッククラウドで実行される理由の一つとして、IT部門の責任者や技術者に、メインフレームの経験が少ないことが挙げられる。
IBMで「IBM Z」のエコシステム担当バイスプレジデントを務めるメレディス・ストーウェル氏は、メインフレームへのユーザー企業の関心を高める施策を提案している。それは、
などを通じて、メインフレームユーザーと非メインフレームユーザーが交流し、お互いから学び合う機会を設けるという案だ。異なるバックグラウンドを持つ人々が継続的にメインフレームについて学習する機会を作れば、メインフレームは本来の地位を取り戻すようになると筆者は考える。
しかしより早く効果が出る、現実的な取り組みが必要だとロック氏は指摘する。「ベテランのメインフレーム専門家が定年を迎えつつあることを考えると、すぐに新しい人材を確保するための取り組みが必要だ」と同氏は話す。
ハルベック氏は自身が検討していたアイデアについて詳しく説明した。それはIT製品の調達の手法を参考にして、ワークロードのITインフラを決定する際に、より構造化されたRFP(ベンダーに提出する提案依頼書)方式のアプローチを採用するというものだ。「結果的に全ての要件や検討要素を公正かつ客観的に評価して、適切なインフラを選択できるようになる」とハルベック氏は説明する。
言い換えれば、意思決定者や影響力のある人々は、自分が最もよく知っているITインフラを主要な選択肢にするのではなく、要件を明確に定義し、客観的な視点でワークロードのITインフラを選定すべきだということだ。これによりメインフレームは他のITインフラと対等の立場に置かれることになる。このアプローチによってメインフレームが毎回選ばれるようになるわけではないが、メインフレームという選択肢が見落とされたり無視されたりする事態を防ぐことができる。
このような疑似的なRFPを用いた手法は、筆者が所属するFreeform Dynamicsもしばらく前から提唱している。ユーザー企業でパブリッククラウドの導入が進み、ノウハウが蓄積されるにつれて、ワークロードのITインフラ選定に客観的な評価基準を導入する重要性はさらに増している。企業でFinOps(クラウドサービスの財務管理を最適化する手法)の採用が進んでいるのも、ワークロードとITインフラのミスマッチがコストの高騰を招いているからだ。さまざまな理由から、ワークロードをパブリッククラウドから自社のデータセンターに移行する「オンプレミス回帰」(「脱クラウド」とも)を実施する企業もある。ワークロードとITインフラのミスマッチは、さまざまな問題を招いていると言える。
ITインフラを選定する際に忘れてはならないのが、ITインフラとしての利点や欠点だけでなく、企業内の既存のデータやワークロードがどこに配備されているかという点だ。例えば高度な分析やAI技術に必要なデータがメインフレームのストレージに集約されている企業では、これが大きな考慮事項となる。
さまざまなITインフラを組み合わせるという考え方を、全てのITチームや開発者が、単に自身の好みや持っている知識だけでITインフラを運用するための手段にしてはいけない。適切なITインフラを選択するには、ガバナンスが鍵となる。
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