「Windows」系OSが採用してきたファイルシステムには、「NTFS」の他に「FAT」や「HPFS」がある。それぞれどう異なり、なぜNTFSが標準ファイルシステムになったのか。3つを比較し、その特徴と優位性を解説する。
MicrosoftのOS「Windows」とサーバOS「Windows Server」が採用するファイルシステムは、「NTFS」(New Technology File System)の他にも、「File Allocation Table」(FAT)と「High-Performance File System」(HPFS)がある。それぞれの違いと、NTFSが標準ファイルシステムとして採用されている優位性を解説する。
FATはNTFS以前に広く普及していた、非常にシンプルなファイルシステムだ。「Windows 95 OSR2」「Windows 98」「Windows 2000」といったOSで採用されてきた歴史を持つ。ディスクをアロケーションユニット(データを記録する最小ブロック。「クラスタ」とも)という最小単位で管理する。アロケーションユニットのサイズはボリュームの容量に応じて変動する。ファイル属性は「読み取り専用」「隠しファイル」「システム」「アーカイブ」といった、基本的なものしか扱うことができない。
ファイルの場所を管理する仕組み「ファイルアロケーションテーブル」は、ボリュームの先頭付近に位置する。この仕組みは、OSがシステムのブートファイルを正しく見つけることができるように決まった位置に保存される。ディレクトリ構造に特定の決まりはなく、ファイルが作成されるたびに、ファイルアロケーションテーブルにエントリー(配列要素)が追加される。
FATの利点は、ファイルの削除取り消し機能や、ファイルシステムの管理領域(オーバーヘッド)が少ないことによる、200MB未満小容量ボリュームへの適性がある。一方で200MBを超えるボリュームではパフォーマンスが低下する傾向があることや、ファイルへのアクセス権限を設定できないためにセキュリティが脆弱(ぜいじゃく)であるといった欠点がある。
HPFSはFATの性能を改善するために設計された。「OS/2 1.2」で初めて導入され、「Windows NT」のバージョン「3.1」「3.5」「3.51」といった初期バージョンでのみ利用できる。HPFSはドライブを8MBごとの連続した管理領域(バンド)に分割する。ファイルをこの単一バンド内の連続したセクタに書き込むことによって、データの分断化(フラグメンテーション)を抑制する。ディレクトリ構成はFATのものを引き継ぎつつ、各エントリー(個々のファイルやフォルダの管理情報)には、FATよりも多くの情報が含まれる。FATが最初に見つけた空き領域にファイルを書き込むのに対し、HPFSは「FNODE」という特別なオブジェクトを介してファイルの場所を管理する。ファイル名に基づいてディレクトリを自動で整理する機能、ファイルに特別な属性を追加できる拡張性も持つ。
FATとは異なり、HPFSは200〜400MBのボリュームで性能を発揮しやすい。200MB未満のボリュームではオーバーヘッドが問題となり、400MBを超えるボリュームではパフォーマンスの低下を引き起こすことがある。FATと同様にファイルに対してアクセス権限を設定できないため、セキュリティ面での課題は残ったままだ。
NTFSは、HPFSやFATよりも大きなボリュームやアロケーションユニットを扱うことができる。「Windows Server 2019」以降や「Windows 10」のバージョン「1709」以降では8P(ペタ)Bまでのボリュームを構築可能だ。400MB以上の大きなボリュームでもパフォーマンスが低下しにくいことも、FATやHPFSと比べて際立った利点であり、高性能なファイルサーバでは特にその価値が発揮される。
NTFSはディスク内に特定の管理領域を持たず、ハードウェアに依存しない設計であるため、パーティションサイズの制約を受けにくい。ディスク上の全てのオブジェクトを追跡、保護し、全ファイルのエントリーを管理する「マスターファイルテーブル」(MFT)のコピーを複数保持することで、単一セクタの障害が致命的になるリスクを回避する。
回復力の高さもNTFSの強みだ。ファイルの操作履歴をトランザクションログとして記録するため、システム障害発生時でも、ファイルを安全な状態にロールバックして、ファイルシステム内の整合性を維持したままファイルを復元できる。この修復機能によって、Windowsのエラー修復コマンド「CHKDSK」のようなディスク修復ツールを必要とする場面を抑えている。
NTFSにはホットフィックス(不具合の緊急修正)機能もある。ディスクの不良セクタを検出した際に、その領域を動的に回避して、正常なセクタにデータを書き込むことで、軽微なディスク障害によるデータ損失リスクを軽減できる。FATはホットフィックスを実行できない。HPFSはホットフィックスが可能だが、Windows NTでは実行不可能だ。
NTFSはFATやHPFSにはない複数のセキュリティ機能を提供する。ファイルやフォルダに対してACL(アクセス制御リスト)に基づく詳細なアクセス権限を設定し、どのエンドユーザーが何をできるかを厳格に管理可能だ。Windows標準のドライブ暗号化機能「BitLocker」によって、ボリューム全体を暗号化することで物理的な盗難からファイルを保護できる。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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