現場近くで即座にデータ処理「エッジ分析」の実力エッジ分析のユースケース【前編】

データが生成される場所で処理を実施して洞察を得る「エッジ分析」はさまざまな業界にメリットをもたらす。製造、物流、医療、小売りにおける具体的な利用シーンを紹介する。

2025年10月17日 05時00分 公開
[Donald FarmerTechTarget]

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 ビジネスでは数秒が結果を左右することがある。さまざまなデータをリアルタイムで分析すれば、例えば機械の故障や消費者の行動を予測できる可能性がある。しかし大半の企業は現場で集めたデータをデータセンターに送信して現場から離れた所で分析するので、遅延が発生してリアルタイム分析が難しいという課題に直面している。その解決策になるのは、データが生成される場所で処理を実施する「エッジ分析」だ。エッジ分析の可能性を、業種ごとのユースケースを見て考えよう。

製造 エッジ分析がもたらす「予知保全改革」

 製造業では、機械の不具合や故障の兆候を検出し事前に対策を講じる予知保全がエッジ分析の主なユースケースになる。データ収集用センサーに近い場所でデータを処理することによって、応答時間を数分から数ミリ秒に短縮できる。即時の検出でいち早く故障の予防策の実行が可能になる。

 例えば包装の現場では、包装機に組み込まれた振動センサーが1秒間に約1000回の読み取りを実施する。そのデータをデータセンター(クラウドサービス)に送信する場合、分析の数分かかる場合がある。そのため、異常検出による故障予測にはエッジ分析を取り入れるとよいだろう。一方で、データセンターでは故障パターンの高度な分析を実施すれば、エッジとデータセンターの両方のメリットを享受できる。

物流

 物流業界では、配送ルートに関するリアルタイムの意思決定が重要だ。飛行機や船、トラックはデータ収集機能を備えていることがあるが、目的地に到着するまでデータ分析による洞察が得られないケースがある。エッジ分析を使い、交通状態や天気に応じて移動中にルートを最適化すれば、時間を短縮したり燃料を減らしたりできる。

 コールドチェーン貨物輸送モニタリングも、物流業界におけるエッジ分析のユースケースの一つだ。コールドチェーンとは、生鮮食品や医薬品などを低温に保つ物流方式を指す。冷蔵コンテナ内センサーで温度や湿度のデータをリアルタイムに処理することで、変化を即座に検出してアラートを出すことが可能になる。

 エッジ分析の利用はコンプライアンス(法令順守)の強化にもつながる。国際物流の場合、データをローカルで処理すれば、そのデータはどこに所在するかを明確にし、法的な問題を避けられる。

医療

 医療業界では、コンプライアンスやデータプライバシーが重要だ。エッジ分析によって、患者の医療データを現場で処理すれば、データセンターへの送信を不要にし、コンプライアンスやデータプライバシーを巡るさまざまな問題を避けられる。

 このようにエッジ分析はプライバシーを向上させるが、詳細な医療データへのアクセスが制限される。高度な診断や治療計画には、詳細な医療データへのアクセスが可能な高性能システムが依然として必要だ。

 エッジ分析のもう一つの利点は、ネットワーク障害が発生しても患者のモニタリングが停止しない点にある。

小売り

 小売業では、消費者の行動を分析してパーソナライズされた提案をすれば、消費者の購買意欲を高められる。エッジ分析によって、販売の現場で消費者が「どこで立ち止まったか」や「どの商品を見たか」といった情報を把握し、パーソナライズされた提案に生かせる。

 小売業も製造業と同様に、エッジで「軽いデータ処理」を実施し、高度な分析はクラウドサービスを利用して実施するとよいだろう。


 後編は、エッジ分析の課題を考える。

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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