HDDの適正温度を保ち、寿命を延ばす“これだけの工夫”「健康診断」はどう実施する?

PCやNAS、サーバなどのHDDは、動いていれば問題ないというわけではない。適切な状態で使い続けるための「健康診断」とメンテナンスが必要だ。HDD本来の信頼性を最大限に引き出すこつを、東芝子会社の幹部に聞いた。

2025年10月24日 05時00分 公開
[TechTarget]

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 温度はHDDにどのような影響を与えるのか。HDDを安全に使うために注目すべき項目は何か。どうすればHDDの「健康状態」を見ることができるのか。こうした疑問について、東芝デバイス&ストレージの欧州子会社Toshiba Electronics Europeでストレージ製品事業開発のシニアマネジャーを務めるライナー・ケーゼ氏に聞いた。

できるだけ長くHDDを使い続けるには?

―― HDDが過熱すると、システムにどのような影響があるのでしょうか。

ケーゼ氏 HDDの温度は、常に注意深く監視すべき指標だ。

 システムが稼働するとHDDは発熱するため、何らかの方法で冷却しなければならない。ただし、CPUのように極端に温度が上昇するわけではないため、放熱を促す冷却用パーツである「ヒートシンク」は不要だ。それでも、HDDの動作中は最低限のエアフロー(空気の流れ)が必要だ。

 温度に起因するHDDの故障には、2つの「限界」がある。1つ目は機能的な限界だ。HDDは、発熱して内部温度が60〜70度に到達しても、すぐに停止しない。だがこの温度を超えると、機能しなくなる恐れがある。サーバ用HDDなら60度、一般的なPC用HDDなら70度が目安だ。HDDがこのような温度になるのは絶対に避けなければいけない。そこまで高温になれば、機能的な限界が訪れてシステムが動作しなくなるため、エンドユーザーはすぐ異常に気付けるだろう。

 2つ目は信頼性の限界だ。これは重要ながらも見過ごされがちだ。こちらはより低い温度から影響が出始める。例えばサーバ用HDDの年間平均故障率は、メーカーの公称値はおよそ0.4%だ。これは1000台当たり年間4台ほどが故障する可能性があるという計算になり、故障する確率はまれだと言える。クライアント用HDDではもう少し高くなるという見方が一般的だが、これは平均温度40度で動作させた場合の話だ。41度、43度、45度といったやや高い温度で動作させることもできるものの、使い始めてからの平均温度が高くなれば、故障率も上昇する傾向にある。

 平均温度が上がり、HDDの故障率が3%になれば、それはもう行き過ぎだ。適切に冷却することで、本来避けられたはずの故障を回避できる。目指すべき平均温度は40度であり、最大でも45度に抑えなければならない。そうすれば、HDDが持つ本来の信頼性を最大限に引き出し、故障率を想定される最低限に抑えることが可能だ。

―― HDDの内部温度が上昇する主な原因は何ですか。

ケーゼ氏 原因はほぼ1つに集約される。それは「不適切な冷却」だ。

 先に述ベた通り、HDDの発熱量はそれほど多くない。それでも、熱を逃がすためのわずかなエアフローは不可欠だ。ファンがないシステムでは良好な対流を、ファンがあるシステムではHDD周囲に適切なエアフローを確保しなければならない。

 われわれが検証した事例において、HDDの温度が45度を超えた場合は、必ずと言っていいほど冷却系統に何らかの問題があった。冷却ファンがなかったり故障していたり、設計の問題がエアフローを妨げて対流を起きにくくしたりしていた。

 ベイ(ハードウェアを収容する空間)が2つ、あるいは4つある家庭用のNAS(ネットワーク接続ストレージ)を考えてみよう。その中には、前面のふたやカバーが閉じられているものがある。そうした製品は見た目は良いが、エアフローの一部が阻害される。

 そこでわれわれは、HDDの温度をチェックすることを勧めている。平均45度を超えている場合は、エアフローを妨げる障害物を取り除いたり、ファンの設定を調整したりしてみるとよい。システムの制約のために改善の余地がない場合は、エアフローがより良好な機器への買い替えを検討するのが賢明だ。

―― HDDの温度管理を怠った場合のリスクと、それに対する軽減策を教えてください。

ケーゼ氏 第一に、HDDの温度を監視することだ。このとき注目すべきなのは平均温度であり、40度程度が目安になる。夏場に一時的に平均50度になる月があっても、冬など他の季節に平均30度で運用する期間がそれよりも長ければ、年間を通じた平均温度は許容範囲になる。

 そのために、定期的にシステムの温度をチェックすることが重要だ。これはGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)で確認できる。

 温度をチェックするには、HDDの自己診断機能「S.M.A.R.T.」(Self-Monitoring, Analysis and Reporting Technology)の属性値を確認すればよい。S.M.A.R.T.の属性ID 194の値は、一般的にセ氏温度を示す。これを定期的に確認し、45度未満を保つようにする。

 平均温度が45度を超えてもHDDは動作し続ける。だが、故障率が高くなる恐れがある。システムの構造上の制約で対処が難しく、高い故障率を許容せざるを得ない場合でも、HDDが本来の性能を発揮できていない危険な状態であることは認識しておくべきだ。

 システムでの対処が可能ならば、エアフローの障害物を取り除き、ファンを調整する。自作したサーバやゲーミングPCで、HDDが50度や55度で動作しているなら、冷却用ファンを増設するのが懸命だ。

 HDDの周囲に小型のファンを設置するだけでも、わずかな対流やエアフローを起こすことができる。これはHDDの寿命を延ばし、故障率を低減させる有力な手段だ。

 肝心なのはエアフローだ。HDDは、何らかの方法で“呼吸”、つまり空気を取り込み、排出しなければならない。強力な風は不要だが、熱を逃がし、温度を適切な範囲に保つためには、わずかでも周囲にエアフローが必要になる。

 これは決して難しいことではない。HDDやPCのメーカーが配慮しなければならない点ではあるが、エンドユーザーが対処できる部分も大きい。まずはHDDの温度に関心を持ち、現状を把握することから始めてみよう。

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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