企業のAIツール活用が進む一方で、無秩序な導入がAIツールやデータの「サイロ化」を招いている。無駄な投資やコンプライアンス違反を引き起こしかねないサイロ化に対し、企業が立てるべき戦略とは何か。
企業規模を問わずAI(人工知能)技術、とりわけ生成AIは、企業のビジネスに欠かせない要素になりつつある。だが新技術の黎明(れいめい)期によく見られるように、生成AIの展開は断片的に進んでいるのが実情だ。社内のさまざまな部門やチームが、多岐にわたる用途のために、それぞれ異なる生成AIツールを個別に導入しているからだ。
個々の部門やチーム単位で見ればメリットを享受できていても、企業全体で見ると、統一性がない断片的な導入は、「AIツールのサイロ(分断)化」という問題を引き起こす。CIO(最高情報責任者)にとって、このようなサイロ化は、複数の事業部門で類似プロジェクトが乱立する「重複投資」を引き起こす。管理されていないAIツールの利用が企業のセキュリティ要件を満たさず、コンプライアンス(法令順守)上のリスクを招く可能性があることも懸念点だ。
AIツールのサイロ化は、データの品質を低下させ、本来得られるはずの価値創出の機会を損なうことにつながる。以下ではこの問題を防ぐための戦略を取り上げる。
CIOには、ITポリシーの策定や全社的な技術戦略とその運用モデルの定義など、多岐にわたる責任がある。その中で、なぜAIツールに関するデータ、戦略、ガバナンスを全社レベルで統一し、相互に連携させる「AIツールの統合」が優先事項なのか。主な理由は以下の3つに集約される。
食品流通会社National Food GroupのCIOであるトッド・ロワゼル氏は、AIツールについて「収益の拡大、経費削減、従業員の業務効率化を支援する、企業にとっての『強力な道具』だ」と表現する。
「誰もが日々の業務の中で、反復的で付加価値の低いタスクに時間を費やしている。AIツールによってそれらを迅速に処理できれば、従業員はよりインパクトの大きい、創造的な仕事に集中できるようになる」とロワゼル氏は語る。
デブライ大学(DeVry University)のCIO、クリス・キャンベル氏にとっても、AIツールの統合は最優先事項だ。個々のツールが孤立した状態で実証実験を進めても、持続的な価値を提供できないからだという。
「統合は極めて重要だ。サイロ化された実験的なツール導入を通じて局所的な洞察は得られても、永続的な価値を生むことはほとんどない。企業にとっての成功とは、単一の機能による成果創出ではなく、企業全体で成果を生むためにAIツールを活用することだ」(キャンベル氏)
アプローチは企業の要件によって異なるが、成功する「AIツール統合戦略」には、共通して以下の6つの柱が存在する。
AIツールの導入を単なる実験で終わらせず、ビジネスの目標に整合させることが重要だ。リーダーは以下を実行する必要がある。
データはAIツール活用の要だ。明確なガバナンスを備えた「データファブリック」(異なる場所に点在するデータを一元的に扱うアーキテクチャ)を構築するために、以下を実施する。
AIツールの統合を効果的なものにするには、企業全体でAIツールと、AIサービスや社内システムにアクセスするためのAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を標準化し、誰もが利用できる「共通サービス」として提供することが有効だ。具体的には以下を実行するとよい。
事業部門間の連携がなければサイロ化は解消されない。IT部門、データサイエンス部門、事業部門の壁を取り払うには、以下が有効だ。
AIツールの統合は、単なるツールの入れ替えではない。従業員が慣れ親しんだ個別のやり方から脱却し、全社標準の新しい働き方に移行するプロセスでもある。チームのスキルアップ(リスキリング)、抵抗感の排除、価値の伝達において、改革の管理(チェンジマネジメント)は不可欠だ。
リスク管理、透明性、倫理に関する規定を、日常の業務フローに組み込む。
次回は、AIツールのサイロ化の解消に挑んだCIOの事例と、実践のためのチェックリストを紹介する。
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