防御力を高めたり、セキュリティ運用を効率化させたりするツールとして「SIEM」と「SOAR」がある。企業はどちらを導入すべきか。両者の違いや、それぞれの役割を整理する。
攻撃の巧妙化によって、企業のセキュリティ対策は脅威の「検知」だけではなく、「迅速な対処」と「運用の効率化」が求められている。これを実現するためのツールとして、「SIEM」(Security Information and Event Management)と「SOAR」(Security Orchestration, Automation and Response)がある。企業は、SIEMとSOARのどちらを導入すべきか。あるいは、両者を組み合わせればいいのか――。SIEMとSOARのそれぞれの特徴を整理しながら分析する。
まず、 SIEMの役割を把握しよう。SIEMは、ネットワーク機器やファイアウォール、不正侵入検知/防御システム(IDS/IPS)、エンドポイント保護ツールなど、さまざまなシステムから生成されるログやイベント情報を一元的に収集して分析する仕組みだ。それを踏まえ、不審な振る舞いを検知し、担当者に知らせる(出典:いまさら聞けない「SIEM」「SOAR」「XDR」の役割と活用シーン)。
ログを相関分析してアラートを上げたり、過去の攻撃データベースとの照合で脅威を浮き彫りにしたりできる点が、SIEMの強みだ。こうした一元ログ管理は、インシデント対処の土台になるだけではなく、コンプライアンス(法令順守)や監査対応での証跡保持にも役立つ。
しかし一方で、SIEMだけでは限界がある。近年の攻撃はスピードも複雑さも格段に上がっており、フィッシングメールのクリックからシステム侵入まで短時間で完了するようなケースもある。
セキュリティ専門家からは、たとえSIEMによって異常が検知されても、その後の調査や対処を人手で実施していては、所定の「1-10-60ルール」(1分以内検出、10分以内状況把握、60分以内封じ込め)を達成するのは現実的ではない、との指摘がある。加えて、SIEMは不要なアラートもあり、セキュリティ担当者の“アラート疲れ”を招きやすいというデメリットもある(出典:「SIEM」と「SOAR」は何が違う? “アラート疲れ”から抜け出す一手)。
ここでSOARの登場だ。SOARは、検出されたインシデントのデータを基に、あらかじめ定義した「プレイブック」(対処手順書)に従って、対処を自動化する。例えば、不審なメールを受信した際の初動対応や、関連システムの隔離、社内通知などを自動で実行することを可能にする。
企業はSOARを導入すれば、日々大量に上がるアラートの中から重要性の高いものを選別し、迅速に対処する流れを整えられる(出典:いまさら聞けない「SIEM」「SOAR」「XDR」の役割と活用シーン)。SOARは対処の標準化にも寄与する。
こうして整理すると、SIEMとSOARは目的や役割が異なるが、補完関係にあると言える。SIEMが「何が起きているか」を検知し可視化する“目と脳”であるなら、SOARは「どう対処するか」を自動化する“手足”のような存在になる。企業にとっては、SIEMを導入した上で、運用の成熟度や人員、対応速度の必要性に応じてSOARを重ねるのが現実的だろう。
ただし、SIEMとSOAR は「導入」で終わりではない。SIEM/SOARシステムは適切に構成・運用しなければ効果が出づらいと、セキュリティ専門家から指摘されている。導入後の継続的なチューニング、運用ルールの見直し、自動化の設定などに十分に取り組まないと、誤検知や過剰なアラートといった問題が起きる可能性がある。
SOARに関して言えば、全ての環境でSOARが生きるわけではない。例えば、社内のシステム構成が複雑で、セキュリティツール群が断片化している場合、SOARの連携先を整備するコストが高くつきかねない。セキュリティ担当者のスキルも問われる。調査会社Gartnerは、SOAR導入の主な障壁が「セキュリティ運用チームにおけるプロセス自体の欠如や未熟さ」にあると指摘している(出典:「SOAR」導入はなぜ失敗する? 知っておくべき“成否の分け目”)。
では、どのような企業がどちらを選ぶべきか。判断の指針として以下を挙げられる。
結論として、SIEMとSOARのどちらを導入すべきかは企業の規模、セキュリティ運用の成熟度、対処に割ける人員とコスト、必要なスピードなどによって変わる。
企業が SIEMやSOARを導入する際には、ただ製品を導入すればよいというわけではない。システムを適切に設計し、運用体制や目的を明確にしなければ、期待する効果を得られない可能性がある。以下は、大半の企業で有効とみられるSIEM/SOAR導入プロセスになる。
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