メモリ価格“60%上昇”は序章に過ぎない? 価格高騰はいつまで続くのかAIブームが招くメモリの枯渇

AI技術の普及に伴い、DRAMやNAND型フラッシュメモリの供給が不足し、価格が高騰している。Samsungはメモリの卸売価格を最大60%引き上げた。こうした価格高騰はいつまで続くのか。

2025年12月08日 17時00分 公開
[Yann SerraTechTarget]

 半導体メモリの一種、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やNAND型フラッシュメモリの供給が不足し、価格が高騰している。データセンターでAI(人工知能)モデルを稼働させるために大容量メモリの需要が高まり、供給を上回っているためだ。Reutersによると、Samsung Electronics(以下、Samsung)は2025年11月、メモリの卸売価格を同年9月と比べて最大60%引き上げた。

価格高騰はいつまで続くのか

 Samsungは2025年11月、韓国メディアに対し、平澤(ピョンテク)工場と華城(ファソン)工場において、NAND型フラッシュメモリの製造を中止し、より需要が高いDRAMの製造に注力すると明らかにした。需要増の背景には、AIモデルを動かすために大容量メモリの必要性が増したことが挙げられる。

 メモリの卸売価格は通常、メーカーが需要に応じて月末に発表する。しかし需要の急増に伴い、Samsungは市場状況を見極めるため、10月の卸売価格の発表を延期した。

 メモリ卸売業者Fusion Worldwideの代表を務めるトビー・ゴナーマン氏は、Reutersの取材に対し、「サーバベンダーとデータセンター事業者がメモリ部品を計画通りに入手できないほど、メモリの価格が高騰している」と指摘した。

 事態を悪化させているもう一つの要因は、NVIDIAが2026年末までに、メモリ規格「LPDDR5」に準拠したメモリをGPUに全面採用すると発表したことだ。LPDDR5は主流の規格「DDR5」と比べて電力効率が高く、GPUの消費電力を削減できる一方、製造するのが難しい。ゴナーマン氏によると、LPDDR5の普及はサーバ向けメモリ価格を倍増させることを意味する。

 一部のアナリストは、DRAMの価格が安定するのは早くとも2027年半ばになると予測している。

SSDの不足も発生

 2025年末から2026年末にかけて、SSDも不足する見通しだ。Samsungとその競合のSK HynixがDRAMの増産に注力し、ストレージ製品に搭載されるNAND型フラッシュメモリの製造を縮小するためだ。

 SSD不足の背景には、AIインフラ事業者からの需要増の影響もある。大規模言語モデル(LLM)を動かすために数十GBのメモリを高速に読み込む必要があり、HDDよりSSDを採用する事業者が増えている。

 供給不足を受け、サーバおよびPCベンダーのLenovoは、Bloombergに対し、2026年末までに製造する全てのマシン向けにDRAMとNAND型フラッシュメモリを確保するため、在庫を積み増していると説明した。報道によれば、競合のAcerは通常のサプライチェーンを経由せず、Samsungの工場から部品を直接購入するために代表団を派遣したという。

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