2025年が終わろうとしている。2026年に向けて、企業のIT担当者が把握しておくべきバックアップ戦略のトレンドにはどのようなものがあるのか。前編と後編で9つを紹介する。
サイバー攻撃やコンプライアンス、人工知能(AI)――2026年、企業のIT部門はバックアップ環境を安定して保持するためのさまざまな課題に直面することが予測される。本稿は、2026年に向けて知っておきたい、バックアップのトレンドを前編と後編で合わせて9つ紹介する。
バックアップツールにAIを組み合わせることで、バックアップデータの監視能力、視認性、透明性、効率性の向上が期待できる。AIを搭載したバックアップツールは、AIOps(AI技術を活用してIT運用の定型業務を自動化する手法)ツールに標準ツールとして組み込まれる場合がある。AIを活用することで、バックアップ環境の異常や故障の兆候を早期に検知できるため、バックアップインフラに対する予知保全も実現できる。
データを「DNA」(デオキシリボ核酸)の塩基配列に変換して保存する「DNAストレージ」の技術は、研究開発から試験導入の段階に移行しつつある。塩基配列は、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)という4種類の塩基(水酸基を有する化合物)の並びを指す。DNAストレージにおいては、0または1を使って数値を表現する2進法ではなく、アデニン、シトシン、グアニン、チミンの配列にデータを符号化する4進法を採用している。DNAストレージの強みとして、
がある。一方、DNAストレージには以下の課題が指摘されている。
2026年のデータバックアップ戦略に影響を与えるトレンドの1つが、データをクラウドサービスからオンプレミスストレージに回帰する企業の動きだ。オンプレミスストレージへの回帰は、コストの予測可能性、運用管理性、データ管理におけるコンプライアンスの向上につながるメリットがある。一方、IT運用の管理業務や従業員の作業負荷が増加する恐れがある。
オンプレミスストレージへの回帰を計画している企業は、作業負荷の増加、自動化実現のための選択肢の検討、データガバナンスの要件に対処する必要がある。こうした要件は、データをクラウドストレージに移行するきっかけとなったものでもある。クラウドストレージはデータとバックアップの管理において、依然として重要な役割を担っていることにも留意する必要がある。
クラウドベースのバックアップを利用している企業は、クラウドサービスを使い分ける「マルチクラウド」や、クラウドサービスとオンプレミスの両方を利用する「ハイブリッドクラウド」が同時に稼働している環境でデータを維持するという課題に直面している。そこでIT部門の従業員は、特に以下の取り組みを重点的に進めることが求められる。
データをオンプレミスとクラウドの両方に分散して保持することで、冗長性と柔軟性を確保することができる。このような冗長性と柔軟性を得るためには、バックアップポリシーや管理基盤を一元化する必要がある。
データを遠隔のデータセンターではなく端末の近く(エッジ)で処理する「エッジコンピューティング」や「分散型データセンター」の急速な拡大も、複数環境をまたぐバックアップの高度化を後押しする要因となる可能性がある。分散型データセンターは、巨大な施設に機能を集中させる従来型データセンターとは異なり、小規模なデータセンターを各地に分散配置してデータを処理、保管する方式だ。
後編も引き続き、バックアップのトレンドを5つ紹介する。
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