「口頭発注」が横行する無法地帯 9割が経験した契約トラブルの実態「仕様変更は無料で」がまかり通る闇

フリーランス新法施行から1年が経過したが、IT現場の商習慣はアップデートされていない。9割のエンジニアがトラブルを経験し、口約束による無償労働が常態化している。調査で見えた、発注企業が抱える「爆弾」とは。

2026年01月05日 05時00分 公開
[TechTargetジャパン]

 2024年11月に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス新法)が施行されてから1年が経過した。同法は、発注事業者に対して取引条件の明示や報酬支払期日の設定などを義務付けるものだ。しかし、法律ができても現場の悪しき商習慣は残ったままであることが、IT人材紹介会社PE-BANKの調査で明らかになった。

 本調査は2025年11月20日から21日にかけて、全国のITフリーランス302人を対象に実施された。その結果によると、2024年11月〜2025年11月の1年間で取引先起因のトラブルを経験したITフリーランスの割合は実に85.8%に達した。IT業界において、コンプライアンス(法令順守)が現場レベルまで浸透していない深刻な実態が浮き彫りになっている。

 フリーランス新法施行後も、なぜ現場の商習慣は変わらないのか。トラブルの具体的な中身と、エンジニアが切実に求めている「安心材料」をデータから読み解く。

IT現場にはびこる「口約束文化」

 トラブルが多発する最大の要因は、契約内容の「不透明さ」にある。

 調査では、業務内容や報酬、支払条件などの契約内容が書面または電磁的方法で明示されている割合について、「3割以下」と回答した人が58.3%を占めた。約6割のエンジニアが、契約内容の大部分があいまいなまま働かされていることになる。発注者である情報システム部門やプロジェクトマネジャーにとって、これは看過できないリスクだ。口頭発注は、「言った言わない」の水掛け論によるプロジェクト遅延を招くだけではなく、フリーランス新法違反として当局の指導対象になり得るからだ。

 トラブルの具体的な内容を見ると、現場の疲弊感が伝わってくる。最も多かったのは「追加修正の無償対応」(34.1%)だ。次いで「依頼業務外の無償対応」(27.2%)、「口頭依頼による認識の食い違い」(26.8%)が続く。これらは、業務範囲や完了条件があいまいなままプロジェクトが進行していることに起因する典型的なトラブルだと言える。

 契約内容が十分に明示されない最大の理由は、「発注業者からの口頭説明だけで進められた」(43.9%)ことにある。「契約書を交わさない慣習がある」(37.5%)との回答も目立ち、IT業界に「口約束文化」が根強く残っていることが分かる。

 法制度と現場の乖離(かいり)も深刻だ。フリーランス新法の内容を「よく知っている」「ある程度知っている」と回答した人の合計は約半数にとどまり、法施行後も「現場はあまり変化していない」「まったく変化していない」と感じる人が合わせて約6割に上った。法律が整備されても、実務レベルでの運用改善には至っていないのが現状だ。

 報酬に対する不満も、金額の大小にとどまらない。「業務内容に見合っていない」(34.1%)に加え、「追加業務があっても報酬が増えない」(33.8%)、「評価や報酬決定の基準が不透明」(30.8%)といった声が多い。算出根拠が見えないことが、エンジニアの不信感を招いている。

 安心して働くためにフリーランスが求めているのは、「成果物、作業範囲の定義、評価基準」(50.0%)と「支払いの時期と方法」(48.3%)の明確化だ。スキルマッチングの前に、まずは「何を作ればゴールなのか」「いくら支払うのか」といった条件を可視化する「見える契約」の徹底が、トラブルを防ぎ、双方の信頼を築く第一歩になる。情報システム部門は自社の発注プロセスが口約束に依存していないかどうかを早急に点検すべきだ。

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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