回復力「数値化」のこつ
役員に「100万ユーロの罰金」? レジリエンス不足が招く個人責任の代償
「システムが止まった」では済まされない時代が来た。レジリエンス不足は経営陣の個人責任に直結する。形骸化したBCPを、実効性ある「武器」へと変えるための具体策とは。
サイバー攻撃や自然災害でシステムが被害を受け、業務が停止したら、自社はどうなるのか――。どのような状況でもビジネス継続を可能にするには、「オペレーショナルレジリエンス」(業務の回復力)への取り組みが欠かせない。しかし、オペレーショナルレジリエンスは幅広い概念で、その効果をどう「測定」するかが課題になっている。
パフォーマンス指標の一つであるオペレーショナルレジリエンスを実証するためには、どうすればいいのか。
オペレーショナルレジリエンスの「KPI」とは
企業がオペレーショナルレジリエンスに取り組まなければならない背景には、オペレーショナルレジリエンスの計画や報告を義務付ける規制があることがある。例えば、以下の規制を挙げられる。
- 「Digital Operational Resilience Act」(DORA)
- 欧州連合(EU)の規制。重要な通信インフラを運営する企業に対し、リスクを定期的に評価してセキュリティテストを実施することを求める。DORAはインシデントが発生した際、その報告と開示を義務付けている。
- 「Network and Information Security Directive 2」(NIS2)
- EUの指令。インシデント対処計画、BCPテスト、インシデント報告を要求する。
- 「ISO 22301」
- 国際的なセキュリティ規格。BCPの管理や継続的な改善することを要求する。
BCPへの取り組みやインシデント開示といった要件が満たされないは、企業だけではなく、経営者の個人責任が問われる場合もある。例えば、DORAは規制違反の場合、経営者に対し最大100万ユーロの罰金を課すことを許可している。過去に大規模な攻撃を受けて業務が停止した企業では、役員が解任になったり、ボーナス金額が大幅に減額されたりする事例がある。企業は、オペレーショナルレジリエンスが不十分なため、ユーザーや株主の信頼を失うリスクにも直面している。
求められる施策とは
オペレーショナルレジリエンスへの第一歩は、その「KPI」(重要業績評価指標)を定義することだ。KPIによってオペレーショナルレジリエンスが測定しやすくなり、取り組みが十分かどうかの判断もしやすくなる。KPIの定義に当たり、企業はどのデータを定量化し報告するかを決定する必要がある。適切なKPIは業種によって異なる。一般的には、以下のデータがKPIの中核となる。
- システム全体の可用性
- システム全体の稼働時間を測定し、停止の頻度と期間を定量化する。
- 重要なサービスの可用性
- 中核業務を妨げる可能性のある重要なサービスの稼働時間を測定する。
- 平均復旧時間(MTTR)
- 異常が発生した際の業務復旧の迅速さを測定し、BCPの有効性を考える。
- BCP内容の更新頻度
- BCPの取り組みがどの程度見直され、改訂されているかを追跡する。
- BCPテスト率
- BCPがどの程度テストされ、問題点が洗い出されているかを把握する。
- 「レジリエンス成熟度」評価
- 米国立標準技術研究所(NIST)などのフレームワーク(行動指針)を用いて、オペレーショナルレジリエンスとセキュリティを評価する。
オペレーショナルレジリエンスを実施するに当たってのベストプラクティス(最適な方法)として、以下の施策が有効だ。
- 監視の自動化
- 専用ツールを使用して、オペレーショナルレジリエンス活動の追跡や、企業の要件が満たされているかどうのチェックを自動化する。
- 定期的な報告
- 経営陣や株主に対し、オペレーショナルレジリエンス活動について定期的に報告して密なコミュニケーションを図る。
- 従業員向け教育
- 従業員にオペレーショナルレジリエンス活動の優先事項を伝え、企業全体としてオペレーショナルレジリエンスに取り組む文化を根付かせる。
- 事後分析による改善
- 事後分析を明確に実施し、根本原因を特定した上、レジリエンス計画の改善を測定可能な形で定義する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品レビュー
[デル・テクノロジーズ株式会社] これからのデータインフラに必要な要素とは? 将来を見据えたインフラの在り方 -
製品資料
[NTTPCコミュニケーションズ株式会社] 中堅・中小企業が標的に ランサムウェアやサプライチェーン攻撃にどう備える? -
事例
[アルプス システム インテグレーション株式会社] 手ごろな価格で高品質 中小企業向け「SOCサービス」に対する導入企業の声は? -
市場調査・トレンド
[アルプス システム インテグレーション株式会社] 急増する高度なフィッシング詐欺 先回りしてブロックするには何が必要? -
製品資料
[NTTドコモビジネス株式会社] Windows 11への移行で運用費が増加? 3つの視点で防ぐ「隠れコスト」
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
金融・通信で情報漏えいが続出 IPAとJPCERT/CCが情シスに求める緊急点検
-
3
「アップグレードできないJava」をどう守る IBMとRed HatがAIで400件超修正
-
4
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
5
「恥を知るべきだ」 AIデータセンター反対運動を招いた事業者の秘密主義
-
6
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
7
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
8
「AI PCは高い」は終わり? 価格が33%下落、“安値”はいつまで続くのか
-
9
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
10
Copilot導入で陥る“目的化”の落とし穴 定着の鍵は「作り込まない」こと
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
4
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
8
Linux初心者でも知らないとまずい「RHEL」「SLES」の違いとは?
-
9
東大教授と考える、AI時代の「データ主権」「信頼性」「ガバナンス」の在り方
-
10
マンガで学ぶXDR/MDRのメリット、中小企業のセキュリティ強化になぜ有効か?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー