複数ベンダーの機器が混在して複雑化するインフラは、人海戦術での障害対応に限界を突き付けている。ネットワーク復旧作業の省力化と属人化をなくすために、NTTドコモがAWSのAIサービスで構築したシステムとは。
モバイルネットワークは、人々の生活や企業活動だけではなく、公共サービスや災害時の情報伝達を支える重要な社会インフラだ。一方で現代の通信システム構成は、4G/5G(第4/5世代移動通信システム)をまたぐサービスの提供や、複数の通信機器ベンダーが混在する状態によって、運用が複雑化している。障害発生時の「迅速な対処とサービスへの影響時間の最小化」は、情報システム部門にとって深刻な課題だ。
NTTドコモもそうした課題を抱えていた一社だ。同社が提供するモバイルネットワークは4Gと5Gが混在し、複数ドメインや複数ベンダーで構成されているため、運用の複雑性が極めて高まっていた。
これまでNTTドコモは、ネットワーク機器の故障に対して、対処手順が明確なものは自動で素早く対処してきた。しかし対処方法が明確ではない未知の故障が発生した場合は、複数の担当者が連携して大量のデータを収集し、手作業で分析して要因を特定しなければならなかった。こうした「人海戦術」による対処が、結果としてサービスへの影響時間を長期化させていたのだ。
この属人的な運用から脱却するため、NTTドコモは2026年2月、モバイルネットワーク保守業務向けAI(人工知能)エージェントの本番運用を開始した。クラウドサービス群「Amazon Web Services」(AWS)を活用することで、これまで熟練エンジニアのノウハウに頼っていた複雑な分析や対処案の提示をAIエージェントが代替し、従来と比べて障害対応時間を50%以上削減できると見込んでいる。どのような仕組みで膨大なデータを処理し、業務プロセスを効率化するのか。
NTTドコモが構築した新システムは、モバイル基地局からコアネットワークまで、100万台以上のネットワーク装置からデータを収集する。集められたトラフィック情報や警報情報を、複数のAIエージェントを組み合わせて横断的かつリアルタイムに分析する仕組みだ。
ネットワークに異常が起こると、AIエージェントが大量のデータを素早く読み解き、原因の疑いがある箇所をピンポイントで特定する。その上で、保守担当者に的確な対処案を提示する。この一連のフローを実現することで、原因究明に要していた時間を大幅に短縮した。
システムの根幹を支えるのは、AIエージェント実行環境および運用管理ツール「Amazon Bedrock AgentCore」と、AI処理に最適化されたデータベース群だ。Amazon Bedrock AgentCoreは、AIエージェントのガバナンス確保と大規模展開を実現する機能を備えている。複数のAIエージェントが複雑な相関関係を即座に特定し、世界最大規模の通信データをAIエージェントと組み合わせて問題を特定する。これによって、人手による熟練のノウハウが必要だった複雑な障害の解決時間を、従来比で50%以上削減することが期待できるという。社内業務の手間削減にとどまらず、通信障害によるサービスのダウンタイムの最小化という恩恵もある。
NTTドコモの牧山隆宏氏(ネットワーク本部サービスマネジメント部長)は、今回構築した仕組みを「当社が目指すネットワーク自律運用の実現に向けた大きな一歩」と表現している。「100万台以上に及ぶ大規模なネットワーク装置データを基にしたシステムを構築する上で、AWSのAIおよびデータベースサービスを活用したことが早期の開発、構築につながった」とも語る。
通信キャリアという極めてミッションクリティカルな現場でも、「熟練エンジニアの勘や経験」と「人海戦術」に依存した障害対応が限界を迎え、AI技術を用いた自律運用にかじを切っている。システムが複雑化の一途をたどれば、人間の手による運用保守はいずれ破綻してしまう。「クラウドベンダーのマネージドAIサービスを組み合わせて、自律的な監視、復旧体制を構築する」というNTTドコモのアプローチは、人材不足に悩む企業のIT担当者にとって、遠からず直面するインフラ運用の“最適解”になり得る。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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