生成AIやデータ活用の拡大に伴い、企業ではデータ整備の負担が増えつつある。Sansanの調査からは、データメンテナンス業務が、本来注力すべきIT業務を圧迫している実態が浮き彫りになった。
企業のデータ活用が進む一方、その裏側では情報システム部門(情シス)の「データメンテナンス疲れ」や、本来取り組むべき業務の遅延が発生している可能性がある。
Sansanの調査によると、企業の情シスやIT部門は、社内データの整備や確認、システム間のデータ連携などの業務に多くの時間を費やしているという。こうした「データメンテナンス業務」にかかる工数を算出した結果、1社当たり年間平均約3億9000万円相当の人件費が投じられていることが分かった。
この調査は、従業員数100人以上の企業に勤める情報システム部門やIT部門の担当者1053人を対象に実施されたものだ。企業のデータ活用が進む中で、データの整備や管理といった作業が、IT部門や情シス担当者の業務の中でどの程度の負担になっているのかが明らかになっている。
調査によると、情シス・IT部門の担当者の50.7%が「2025年の1年間でデータメンテナンス業務」が「大幅に増えた」または「やや増えた」と回答している。特に増加していると挙がったのが、生成AI(AI:人工知能)の活用に関連する業務だ。調査によると、業務の上位には以下の項目が並んだ。
こうした業務は、AIを導入する企業が増える中で新たに発生したものだ。生成AIを安全かつ効果的に利用するためには、データの整理やアクセス権の設定、システム連携の調整など、さまざまな準備作業が必要になる。
自由回答でも、AI活用に伴って、データ関連業務が増えたという声が寄せられている。例えば、「生成AIの業務活用に向けたデータクレンジング作業」「AI利用のためにオンプレミスとクラウドのデータ連携」が増加したというコメントが紹介されている。
AI活用の拡大は企業にとって重要な取り組みだが、その基盤となるデータ整備の負担が情シスに集中している実態が浮き彫りになった。
データメンテナンス業務の増加は、情シスが本来取り組むべき業務にも影響を及ぼしている。調査によると、情シス担当者の75.2%が「データ整理や確認業務のために、本来注力したい業務に十分な時間を割けていない」と回答している。
「本来注力したい業務」として挙がったのは、次の業務だ。
いずれも企業のIT戦略やDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める上で重要な業務だ。しかし現実には、データ整理や確認作業といった運用業務に時間を取られ、こうした取り組みが後回しになっているケースがある。
自由回答では、「監査対応のために同じようなデータ抽出や整合性確認を何度も行っている」「社内からの問い合わせにその都度対応している」といった声もあった。データ関連業務が日常業務の中で負担になっていることが分かる。
企業において、データを活用した経営や意思決定に関心が集まっている。特に生成AIの導入をきっかけに、社内データの重要性が高まっている。
一方、Sansanが2025年11月に発表した「企業のデータ管理に関する実態調査」によると、AIが社内データを参照して回答する場合、期待した精度が出ないことがあると答えた企業は約9割に上った。この回答は、AIが参照するデータの品質や整備状況に問題があることを示唆している。
AI活用を進めるためには、その前提として社内データを整理し、管理する取り組みが不可欠だ。しかし多くの企業では、データが部門やシステムごとに分断されている。その整理や統合、確認といった作業を情シスが担っている場合がある。このようなデータメンテナンス業務は、日々の運用の中では目立ちにくい。しかし実際には多くの時間とコストを消費する、“見えない業務”となっている。
今後の見通しについても、楽観的な状況ではないことが調査から明らかになった。回答者の58.1%は、今後のデータメンテナンス関連業務は「増えていくと思う」と答えた。
生成AIの活用やデータ分析の高度化が進むにつれて、企業が扱うデータの量や種類は増え続ける。システム間連携やデータ品質管理、アクセス権管理といった業務も複雑化していく可能性が高い。
Sansanの鳴海佑紀氏(Sansan DI推進部)は、「生成AIやデータ活用を本格的に進めるためには、社内に蓄積されたデータを部門やシステムの垣根を越えて整備・統合することが重要」だと語る。データが分断された状態のままでは、情シスの負担が増えるだけでなく、データ活用の効果や意思決定のスピードも十分に引き出せないからだ。
さらに鳴海氏は、「データを統合するだけでは不十分」であり、「AIが活用しやすい形で整理されたデータを整備することが重要になる」としている。
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