オンプレミスシステムで約40件の基幹DBが乱立していた大東建託。個別最適化されたインフラ運用は限界を迎え、バッチ遅延リスクも抱えていた。同社はいかに既存の可用性を維持しつつ、DB統合と高速化を実現したのか。
企業の事業成長とともに拡張を続けてきた基幹システム。その裏側で、事業部門やシステムごとに乱立したデータベース(DB)が、IT部門にとって重い足かせとなっている。それぞれ異なるハードウェアのライフサイクル管理、OSやミドルウェアのパッチ適用、日々のバックアップ監視といった運用保守作業は増え続ける。積年の運用によるハードウェアの老朽化も、データ処理量の増加と相まってパフォーマンスの低下を引き起こす。
不動産大手の大東建託も、「乱立DBによる運用限界」に直面していた。同社は、グループ従業員1万8000人が利用する60件以上の基幹業務システムを支えるため、データセンター内で約40件のDBを分散運用していた。
「分散したDBをパブリッククラウドに統合し、運用負荷を手放したい」。そう考えるのは自然な流れだが、高い可用性と厳しいレスポンスタイムが求められる巨大な基幹DBを、単純にパブリッククラウドに移行するのは容易ではない。大東建託はいかにして既存システムとの親和性を保ちながら、ETL(データの抽出、変換、書き出し)処理を約4倍高速化させつつ、運用費削減を実現したのか。
大東建託は、会計や営業支援など60以上の基幹業務システムが利用する約40件のDBのモダナイズに着手した。システムとして、日本オラクルの「Oracle Exadata Cloud@Customer」を採用し、「Oracle Exadata Database Service」への移行を開始した。2026年3月30日、日本オラクルが発表した。運用効率の向上によって、データ統合処理を約4倍高速化させた他、運用費用を32%削減する見込みだ。
大東建託は、賃貸住宅の建設や管理、仲介を中心に不動産関連事業を展開している。賃貸住宅の管理戸数は約130万戸に上り、業界有数の実績を持つ。同社は従来、データセンターの複数のサーバに分散して「Oracle Database」を運用しており、グループ従業員1万8000人以上が利用する中核業務を支えてきた。
しかし、長年の運用によってハードウェアの老朽化が進んでいた他、分散した複数のDBを個別に維持、管理する負荷の増大が課題となっていた。事業成長に伴ってデータ量が増加し、処理負荷が変動する中で、リソースを臨機応変かつ迅速に拡張できるインフラへの刷新が求められていた。ライセンス費用の最適化も重要なテーマとなっていた。
新システムの選定に当たっては、利用中の「Oracle Real Application Clusters」(Oracle RAC)や「Oracle Data Guard」を活用した高可用性構成との親和性を重視した。自社データセンター内に設置しながらパブリッククラウドの拡張性を享受できる点を評価し、Oracle Exadata Cloud@Customerの採用を決めた。
導入プロジェクトでは、分散していたDBの一元化を実施した。これによって運用管理負荷の大幅な軽減と、費用の最適化を両立させている。従来構成のままオンプレミスインフラで更新した場合と比較して、構築費用は約25%、運用費用は約32%削減できる見通しだ。
性能面でも成果が出ている。ETL連携によるデータ統合処理に要する時間は、従来の約1時間から約15分へと短縮され、約4倍の高速化を達成した。月次の料金計算や請求処理の時間は306分から141分へと約54%短縮された。処理の高速化は業務の安定化に寄与し、繁忙期における遅延リスクの低減にもつながっている。
可用性の面では、データセンター内の複数の筐体(きょうたい)間でレプリケーションを実行するとともに、「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)を活用したバックアップシステムを整備した。災害時の迅速な復旧を可能にすることで、事業のレジリエンスを強化している。システムの設計と構築は日鉄ソリューションズが支援した。
大東建託の都築 淳氏(情報システム課長)は、基幹業務を支えるシステムの刷新において可用性、性能、拡張性を重視して採用を決めたと説明する。既存構成との高い親和性を保ちながら、DBの統合と運用負荷の軽減を実現したとの評価だ。処理の高速化によって業務効率が向上し、今後の事業成長やデータ量増加に適応できるシステムを整備できたと考えている。
今後は、整備したシステムを活用してAI(人工知能)技術やデータ分析への適用も進める方針だ。大東建託は、最新のテクノロジーを活用したデータ駆動型の経営基盤を強化し、さらなる事業成長を目指す。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHub.News」に掲載された「大東建託、40のDB基盤をクラウド統合 データ統合を4倍高速化、運用費3割削減」(2026年3月30日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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