人間は「エージェントを微調整し品質をチェックする役割」へ
Adobe、Salesforce、ServiceNowの「3つ巴」激化 AIが壊すCRM市場の境界線
生成AIの台頭により、Adobe、Salesforce、ServiceNowといった巨大ベンダーが互いの領域を侵食し合っている。Adobeが放った新戦略は、生成AIと既存のビジネスルールを融合させ、人間の仕事を「単発の作業」から「AIの品質管理」へと転換させる。激変するベンダー勢力図と、組織に求められる役割の変化を読み解く。
米Adobeはラスベガスで開催した同社の年次カンファレンスで、新製品群「Adobe CX Enterprise」を発表した。マーケティング技術の地位を堅持し、顧客体験(CX)分野への拡大を狙う。AIが市場を揺るがし、CMOやCIOの技術購入基準が根底から覆る中での発表となった。
年内に予定されている一連のリリースには、Adobe製アプリケーション内のタスク指向型エージェントや、ブランドルールを徹底させる「Brand Intelligence」が含まれる。また、顧客ロイヤリティーに基づき「次に取るべき最善のアクション」を決める「Engagement Intelligence System」も導入される。さらに、カスタムワークフローを構築するためのエージェントスキルカタログや、企業のAIスタックに組み込むための開発者ツールも提供される。
フォレスターのアナリスト、ジョー・チクマン氏は、AIによる生産能力向上の可能性を背景に、企業が業務の在り方を再考していると指摘する。AIは製品のバリエーションをかつてない速さで市場に投入することを可能にするが、それに伴ってマーケティング能力の拡充も必要となる。慎重に導入すれば、エージェント型AIがその課題を解決できる。
「人間が行っていた業務をエージェント群へとコード化(仕組み化)する方法を、企業は模索しなければならない。これにより業務は単発から連続的なものへと変化する」とチクマン氏は述べる。同氏によれば、これは人員削減を意味しない。人間は「職人的な作り手」から、「エージェントを微調整し品質をチェックする役割」へと移行する。「つまり全員が昇進するようなものだ。ライターだった人は編集者になるのだ」
AdobeのCXクラウドの進化
これまで同社は「Adobe Experience Platform」向けのエージェント型AIオーケストレーターをリリースしてきた。また、データ分析やコンテンツ作成を行うエージェントを自社アプリケーションに組み込んできた。
CX Enterpriseはこれらを基盤として、共通機能にアクセスできるスキル目録、カスタマイズを支える開発者ツールの強化、目標に基づきワークフローを管理するオーケストレーション専用エージェントを包含する。OpenAIやAnthropic、AWS、NVIDIAとのプラットフォーム連携を含む幅広いパートナーシップがこれらの機能を拡張する。
AdobeはSalesforceやServiceNowと同様、確定的なビジネスルールと大規模言語モデル(LLM)の確率的な力の融合を急いでいる。AdobeのITスタックは最下層のデータ層から始まり、その上で「Brand Intelligence」などを担う小規模言語モデル(SLM)が動作する。これらが、タスク指向型エージェントや分析ツールへの出力を制御する仕組みだ。
Adobeの製品担当バイスプレジデント、サンディープ・パルサ氏は、AIがビジネスルールをエージェントワークフローに組み込む重労働の一部を担うようになると語る。
「ビジネスの文脈は必ずしも共有フォルダーに格納されているわけではない。アプリケーション内部にコード化されていたり、組織内の『属人知』として存在していたりする。これら全ての知識を集約し、エージェントを通じて実行するまでの時間をいかに短縮するかが鍵となる」とパルサ氏は説明する。同氏はまた、長年蓄積されたアプリケーション内のポリシーやルールが、LLMを現実のビジネスに接地させる根拠になると付け加えた。
チクマン氏は、CX EnterpriseをAdobeがCXプラットフォームとしての地位を確立するための布石と見ており、将来的なCRMへの大きな一歩になると指摘する。CRM大手のSalesforce、サービス管理大手のServiceNow、そしてマーケティング大手のAdobeによる、技術の収束に伴う激しい争いが勃発しつつある。
かつてこれらの企業は、おおむね自らの専門領域にとどまっていた。しかし現在は、互いの領域を侵食し合っている。例えばSalesforceは2023年秋、ServiceNowの牙城であるITサービス管理プラットフォームをリリースした。多くのユーザー企業はこれら3社の製品を組み合わせて利用しているため、競合でありつつも相互運用性の確保は依然として重要だ。
さらにチクマン氏によれば、Adobeは消費者向けブランドで築いた強みを生かし、B2B(法人向け)顧客への攻勢も強めている。
「Adobeは顧客エンゲージメントの管理権を求めて旗幟を鮮明にしている。ServiceNowもCRMを構築しており、両社は今、衝突コースにある」とチクマン氏は分析している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
SNS認証や多要素認証も数分で実装、IDaaS基盤でデジタルビジネスはどう変わる? -
製品レビュー
「電子帳簿保存法対応」実践術:タイムスタンプ付与などの要件の手軽な実現方法 -
事例
「大企業のデジタル化」成功事例集【コクヨ、九州電力、ヨネックスなど21社】 -
製品資料
“顧客管理の課題”を簡単に解決する方法とは? -
製品資料
契約管理の“あるある課題”をノーコード開発で解決するためのポイント
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
ソフトウェア開発生産性向上に取り組む企業は4割 調査で学ぶ「停滞」の正体
-
2
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
3
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
4
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
5
「技術屋」で終わらないために 情シスが今取るべき認定資格5選
-
6
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
7
継続利用は4割どまり M365 Copilotが「効く業務」と期待外れの境界
-
8
「即戦力」は幻想? 中途の3割が消えるAI時代のエンジニア生存戦略
-
9
「Linuxサーバの長期運用とRed Hat Enterprise Linux」に関するアンケート
-
10
Synologyがエンタープライズ向けユニファイドストレージを投入 その実力は
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
4
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
「結局、一部の人しか使わない」 AI活用が業務に定着しない根本的な理由
-
8
AIエージェントで成果は出る? 調査結果に見る費用対効果の実態
-
9
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
10
ゼロトラストにおける「IDaaSの課題」と補完すべき重要機能とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー