Excelと手作業の限界 サイロ化に悩むトランスコスモスの「ノーコード」活用術フルスクラッチ開発からの脱却

現場主導の「個別最適化」は事業部門の機動力を高めるが、情報システム部門には技術的負債をもたらす。独自のExcel運用や肥大化したレガシーシステムから脱却し、全社統制と業務効率化を両立させた事例を紹介する。

2026年05月26日 05時00分 公開
[CaseHub.NewsTechTargetジャパン]

 事業部門ごとに最適化されたシステムや運用フローは「技術的負債」になりやすい。トランスコスモスのコンタクトセンター事業部門も同様に、個別最適化による課題に直面していた。

 同部門では事業の特性上、顧客や業界ごとに業務の個別最適化が進んでいたが、その結果として「Microsoft Excel」や手作業を中心とした運用が常態化し、定期的な情報集約や申請、承認業務が部門ごとにサイロ化してしまっていた。これによってデータの重複管理や類似業務が発生し、全社的な業務プロセスやデータの一元化、可視化が困難な状況に陥っていたという。

 同時に、トランスコスモスのシステム管理部門の課題になっていたのが、基幹システムと連携するマネジメントシステムの存在だ。フルスクラッチで開発されたマネジメントシステムは10年以上前に開発され、度重なる改修によって肥大化、複雑化した結果、拡張の自由度を喪失していた。現場からの新たな改善要望を迅速にシステムに反映できず、運用保守に多大な人員を割かざるを得ない状況となり、運用費用と手間の増大が顕在化していた。

 こうした限界を解消するために、システム管理部門は既存システムのクラウド移行とともに、業務の個別最適から全体最適への転換を図る「共通システム」の構築に着手した。その裏側を紹介する。

「個別最適」から「全体最適」への移行戦略

 トランスコスモスは、業務の個別最適から全体最適への転換を図る共通システムの構築を目的に、ノーコード開発ツール「SmartDB」を採用した。2026年5月19日、SmartDBを提供するドリーム・アーツが発表した。年間約6300時間相当の工数削減とコスト削減を達成した。同月現在は約2200人が利用しており、今後はさらなる業務高度化や顧客体験(CX)の向上を目指す。

 トランスコスモスは、コスト最適化支援、デジタルマーケティング、コンタクトセンター、BPOなど多様なアウトソーシングサービスをグローバルに展開している。同社は顧客接点のデジタルトランスフォーメーション(DX)によるCX向上に注力しており、エンジニアリング統括本部テクノロジー第一統括部が業務全体の統一や最適化、仕組み化を推進し、現場がCX向上に集中できる環境づくりを支えてきた。

 しかし、トランスコスモスのコンタクトセンター事業部門では事業の特性上、顧客や業界ごとに業務の個別最適化が進んでいた。そのためMicrosoft Excelや手作業を中心とした運用が常態化し、定期的な情報集約業務や申請、承認といったワークフロー業務が部門ごとに個別管理される課題があった。その結果、データの重複管理や類似業務が発生し、全社的な業務プロセスやデータの統合、可視化が困難な状況に陥っていた。

 基幹システムと連携して業務や人材、品質などの管理を担うマネジメントシステムは10年以上前にフルスクラッチで開発されたもので、システムの肥大化と複雑化によって柔軟性を欠き、現場の改善要望に対応できなくなっていた。システム管理部門でも運用保守に人手を要し、管理にかかる費用や手間の増大が顕在化していた。こうした背景から同部門は、既存システムのクラウド移行とともに共通システムの構築に着手し、2024年2月にSmartDBを本格導入した。

 製品の選定に当たっては、複数のワークフロー連携による業務間連動や部門横断での条件付き承認が可能な自由度の高いワークフロー機能が、業務統合に適しているという理由で評価された。ノーコードで複雑な業務要件に適合でき、プロトタイプによる早期検証を通じて関係者の合意形成を図りながらアジャイルに構築や改善ができる迅速性と拡張性もポイントになった。組織や役割に応じた権限管理で部門横断の業務やデータを安全に一元管理でき、更新履歴などの証跡管理によってガバナンスを強化できる点や、標準機能のみで業務を再現できる汎用(はんよう)性、大企業での豊富な導入実績と大容量データを活用した業務事例の多さも採用の決め手となった。

 新システムの導入によって、2026年5月時点では「品質総点検業務」をはじめ「契約書常備キット管理」や「検収書チェックシート」など複数の業務がデジタル化されている。これによって、年間約6300時間相当の工数削減と運用維持費用の削減という定量的な成果が出ている。定性的には、業務要件に応じたシステム制御と一元管理による不備やミスの抑止といった業務標準化が進んだ他、環境の変化に合わせて最適な運用フローに変更できる体制が整った。適切なアクセス制御と証跡管理による全社利用における統制の確保や、業務を最も把握している現場主導での業務改善も可能になるなど、組織面でも変化が生まれている。

 トランスコスモスは2026年5月現在、全社的な業務システムとしてSmartDBの活用領域拡大を進めており、業務の統合や最適化、品質向上、統制強化、変化に迅速に適応できる体制強化に取り組んでいる。今後は蓄積されたデータの活用を広げるため、BI(ビジネスインテリジェンス)やAIの活用も視野に入れ、社内の他業務へ展開することでさらなる業務高度化とCX向上を目指す。

 トランスコスモスでプラットフォーム開発統括部などの統括部長を務める宮澤朋成氏は、SmartDBは単なるワークフローツールではなく、変化を前提とした大規模組織において業務とともに進化し続けられる運用基盤として十分な実力を備えていると評価する。今回の活用は個別業務の効率化にとどまらず、業務全体を俯瞰(ふかん)して再現性と統制を持って改善を進めるための基盤づくりと位置付けているという。ノーコード開発による自由度の高さも、現場主導で業務を継続的に進化させる上で重要であり、今後はSmartDBを起点にデータ活用や業務高度化を進め、変化に強く持続的に価値を創出できる組織づくりにつなげていきたいとの意思を示す。

(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHub.News」に掲載された「トランスコスモス、共通基盤構築で業務を全体最適化へ 年間6300時間の工数削減」(2026年5月19日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。


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