ランサムウェアで「9割が暗号化」の実態
バックアップ全滅をどう防ぐか 都筑製作所があえて「磁気テープ」を選んだ理由
ランサムウェア被害の約9割でバックアップが暗号化されている。高価な専用機器の導入が難しい中、都筑製作所は既存ライセンスを活用し、あえて「磁気テープ」による防衛策を採用した。その決め手と効果は。
企業のIT部門にとって、「バックアップを取得しているから安全」という常識は過去のものになりつつある。2025年12月にArcserve JapanがIT担当者および経営層500人に対して実施した調査によると、ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)被害に遭った企業の約9割で、バックアップデータそのものが暗号化されていた。
「最後のとりで」であるはずの復旧用データが使えなくなれば事業は停止し、経営層や取引先への説明責任はIT部門が背負うことになる。この死角をふさぐために、データを改変できない「イミュータブルストレージ」を導入することは選択肢になるが、クラウドサービスの追加契約や専用製品の導入など、費用を即座に確保できる企業ばかりではない。
自動車部品や建機用部品を製造する都筑製作所は、この課題に直面していた。その中で同社は、高価な最新のセキュリティ製品に飛び付くのではなく、限られた予算と人手の中で「泥臭いが確実な方法」を見つけ出した。社内に眠っていた「既存の資産」を活用させつつリスクを軽減する、同社の解決策とは。
眠っていた「テープバックアップ機能」の覚醒
都筑製作所は、既存のバックアップおよび遠隔地保管体制に加え、Arcserveの磁気テープを活用したバックアップデータのオフライン保管方式を導入した。2026年5月22日にArcserve Japanが発表した。ネットワークから切り離した保管によって、ランサムウェア対策の強化を図る。
長野県に本社を置く都筑製作所は、自動車部品や建設機械用部品を製造する企業だ。同社はバックアップ運用の内製化を進めており、2017年に複数サーバを一元管理できるバックアップ/リカバリーツール「Arcserve Unified Data Protection」(Arcserve UDP)を採用した。約63TBのサーバデータを自社で管理し、拠点間での相互バックアップ体制を構築した。2019年には台風被害を契機としてレプリケーションツール「Arcserve Replication」を導入し、県外データセンターへのデータ複製による災害対策を進めてきた。
一方で、ランサムウェア攻撃によるバックアップデータの暗号化リスクへの対策が課題となっていた。都筑製作所はイミュータブルストレージの導入やネットワーク切断運用など複数の対策を検討した結果、運用実績があり、管理しやすい磁気テープによるオフライン保管方式を採用した。
導入に当たっては、Arcserve UDPのライセンスに含まれる「Arcserve Backup」のテープバックアップ機能を活用した。追加製品を導入せずに要件を満たせる点を考慮した。
運用面では、バックアップ速度と処理時間を見直した。テープ装置の接続ドライバーを変更したことで、データ転送速度は毎分最大10GBになった。フルバックアップと増分バックアップを組み合わせる方式を採用し、日次バックアップ時間は24時間超から17時間になった。
2026年5月時点では、各業務サーバのデータを日次でバックアップサーバに集約した後、テープに転送している。データ容量は圧縮機能によって約36%削減され、約40TBとなっている。テープはネットワークから切り離して保管する運用体制を採用している。
今後は、社内教育や運用改善を継続しながら、事業継続性とデータ保護の向上に取り組む。
都筑製作所 経営企画室情報システム課 課長の河西剛弥氏は、「データ保護は継続的な見直しが必要だと認識している。生産への影響を抑えることを前提に、運用の改善を進める」と述べる。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHub.News」に掲載された「都筑製作所、磁気テープでバックアップをオフライン保管」(2026年5月25日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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