下手をすると裁判ざたに
ソーシャルエンジニアリングテストは慎重に
ソーシャルエンジニアリングテストは、具体的な目標を立てておかないと、争いの種になることはあってもセキュリティ強化のための実用的な提言にはつながらない。
侵入テストの担当者でも実際の攻撃者でも、その気になればほとんど失敗なく狙った標的をだまして秘密情報を公開させることができる。その情報がどれくらい役に立ち、入手がどれくらい難しいかは、その組織のセキュリティコントロール次第だ。ソーシャルエンジニアリングをセキュリティ評価項目に入れておかないと、会社のリスクを激増させかねない攻撃経路を無視していることになる。
計画は念入りに
ソーシャルエンジニアリングテストは簡単にエスカレートしてしまいがちだ。例えば、標的とする従業員と電話で話していて必要以上に追いつめてしまったり、フィッシング詐欺のテストであまりにもプライベートな質問をしたり、物理的なセキュリティ検査で立ち入り禁止区域に踏み込むなどがある。念入りに計画を立てることがプロジェクトの成功に欠かせないのはこのためだ。
テストの目的
目標を明確に定めることは、有意義なソーシャルエンジニアリングテストの必須条件となる。「重要情報を入手する」だけではあいまい過ぎ、非難されたり感情を傷つけたり、最悪訴訟問題を招く可能性もある。会社がセキュリティプログラムで定めたコントロールに目標を結び付けることを検討しよう。
例えば次のようなケースが考えられる。
- セキュリティ問題啓発のためのプレゼンで、フィッシング詐欺の見分け方について説明した後、フィッシングに見せかけて送ったメールのリンクを、標的とした従業員の何%がクリックするかをチェックする
- ヘルプデスクの研修として、パスワードを忘れたと言って電話してきたユーザーに伝えるリセット手順を解説した後、ログインできなくなった従業員を装ってヘルプデスクに電話し、担当者が研修で解説した手順に従っているかどうかをチェックする
- 入り口でカードをかざして会社のビルに入る際、見知らぬ人物をビルに入らせないよう従業員向けのセキュリティポリシーで規定した上で、従業員が開けたドアからわざと後に続いて入ろうとして、相手の反応をチェックする
こうした具体的な目標がなければ、ソーシャルエンジニアリングテストは争いの種になることはあっても、会社のセキュリティ強化のための実用的な提言にはつながらない。
筋書きの調査と設計
目標達成のための筋書きには創造性を働かせていい。テストは電子メール、電話、郵便、インスタントメッセージング(IM)、対人などが考えられる。会社の事業や専門用語、階級、構造が分かっていなければ調べる必要がある。
次に、攻撃側の身になってみて、以下のような心理的傾向に付け入ることを考える。
- 人は無料で何かを手に入れたいと思っている→「社内懸賞であなたが当選者に選ばれました。賞品を入手するにはここをクリックしてください」
- 人はトラブルに遭っている人に同情する→「わたしのパスワードをリセットしてください。タイムシートを締め切りまでに提出しないと上司に殺されます!」
- 人は恩に報いようとする→落とした書類を拾ってくれた相手のために、ドアを開けて待っていたくなる
筋書きで定めておくのは、対象とする個人やグループと、テストを行うタイミング、場所、説得の手口だ。法令、契約、ポリシー、社風に照らして調査する。うまくいかなかった場合の可能性も考え、撤退(テストの中止)と戦術拡大の手順を定めておく。
注意点
標的とされた相手が、だまされたことに対しどう反応するかも想定しておく。後々相手と一緒に仕事をしなければならない場合、好意が失われたつけが回ってくるかもしれない。これを恐れるあまり、電話や対面での実施を避けてメールを使った筋書きを選ぶという過ちを犯す傾向が強い。
筋書きについて上司や顧客から書面で承認を得ておかないと、トラブルに巻き込まれかねない。できればその上司の承認も取っておくことだ。コンサルタントの場合はプロジェクトを承認する前に弁護士に相談しておいた方が賢明だろう。
テスト実施と結果分析
テスト中はメモを取る。複数の相手とコミュニケーションしていると混乱しがちだ。特に、自分がテスト中のコントロールに影響を与える指標に注目する。これにはフィッシング詐欺を模したフォームで収集した情報の監視、電話での会話の記録、周辺の写真撮影などが含まれる。適切な指標が入手できれば、従来のような評価方法ではテストするのが難しい、人間中心のコントロールについて効果を測ることが可能になる。
本稿筆者のレニー・ゼルツァー氏は、ニューヨークに本社を置くSavvisのセキュリティコンサルティング責任者。また、SANS Instituteで講師として、マルウェアのリバースエンジニアリング講座を担当している。
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