クラウドに飛びつく前に検討すべきこと
クラウド利用は本当にコスト削減になるのか?
クラウドの経費が積み重なれば、社内でインフラを一括導入した場合の経費に匹敵し、あるいはそれを上回ることもある。
クラウドコンピューティングは、ハードウェアやソフトウェアに前倒しで掛かる経費を移し替えるものだ。ただしこのコストを何カ月にも、何年にもわたって配分すれば、いずれは帳尻に響く。そしてその過程で、自社でデータセンターを保有した場合と同じデータ保護およびコンテンツ管理の課題に直面することもある。
クラウドコンピューティングに掛かる経費は、積み重なれば前倒しの一括経費に匹敵し、あるいはそれを上回ることもあるのが現実だ。米PropertyRoom.comのCTO(最高技術責任者)、デイブ・バンクス氏はその現実を受け入れるつもりだと話す。
PropertyRoom.comは1800の警察署・自治体で押収したり不要になったりした物品を競売に掛けるWebビジネスを展開しており、新しいオークションエンジンをクラウドコンピューティングサービス事業者Savvisのデータセンターに置くことにより、約50万ドルの前払い経費が浮いた。浮いた経費にはサーバ、ネットワークインフラ、ソフトウェアのライセンス料、サーバ/ネットワーク管理のための人件費などがある。
前払いせずに済んだ経費のうち特に大きかったのは、Oracle Databaseのライセンス料だ。PropertyRoom.comは月額推定1万ドルでSavvisのインフラにオークションエンジンを置いて管理運営を任せており、Oracleのライセンス料もこの料金に含まれる。4、5年たてば、払ったサービス料の総額は、社内にオークションエンジンを置いて管理運営していた場合に掛かる前払い経費に匹敵する規模になる。
バンクス氏は言う。「資金を前倒しで使わずに移し変えた見返りとして、顧客である警察署の近くに新しく倉庫を建てることができた。これはガソリン代など別の経費を大幅に削減する役に立っている。米国各地の倉庫へトラックで物品を輸送するのはコストがかさむ」。同社は今ではシアトル、シカゴ、ロサンゼルス、ニューヨーク、フロリダに倉庫を持つ。
バックアップでかさむコスト
Savvisの月額料金には、PropertyRoom.comのバックアップとストレージのニーズに対応した料金も含まれる。オークションサイトの仮想マシンイメージとデータベースファイルは、Savvisが保有・管理する共有のストレージエリアネットワーク(SAN)に置かれている。Savvisは災害復旧用にバックアップを取り、社内と社外の施設に保存している。ストレージ共有モデルのメリットは、SANを構築・維持する場合のような前払い経費を払わなくて済むだけでなく、ハードウェアに障害や容量の問題が起きた場合に、物理サーバ間で仮想マシンを動的に動かせることにある。
ただし、データバックアップのクラウドサービスでは、気付かないところで経費が発生することもある。
米Burton Groupのアナリスト、クリス・ハワード氏は、従量制のバックアップクラウドコンピューティングサービスに掛かるコストは、携帯メールの利用料のようなものだと指摘する。
ある欧州の顧客は、クラウドベースのデータウェアハウスを従量制で利用することを検討していたが、クラウドのデータウェアハウスからデータを引き出す方が、データウェアハウスを社内に置いた場合よりも高くつくことが分かったという。
「クラウド事業者は、携帯電話事業者がテキストメールに課すのと同じ方法でデータアクセスに料金を課している。最初から適切な利用条件を定めないと、(利用料は)あっという間にかさんでしまう」
クラウドの抜け穴
Webで事業展開している組織の多くは経費削減の手段としてクラウドコンピューティングサービスに目を向けているが、社内で高パフォーマンスのWebサイトを構築する場合のようなベストプラクティス確立に掛かるコストを念頭に置いていない。CIOはクラウド事業者について、例えばキャッシュやセルフプロビジョニング容量の限界をチェックする必要がある。
選んだプロバイダーによっては、自社のアーキテクチャの中でコンテンツ配信ネットワーク、グローバルな付加調整、大量のキャッシュが必要になるかもしれないと、米Forrester Researchのアナリスト、ジェームズ・スタテン氏は話す。
従来のホスティングモデルでは、容量増大の作業は電話1本でプロバイダーがバックグラウンドですべてやってくれた。しかしクラウドの場合、多くの人が考えているように、容量増大がすぐにできるわけではないとスタテン氏。「容量のオンとオフを自動で切り替えられるインタフェースの開発は、自社のアプリケーション開発チームの仕事となる。(クラウド事業者が)何もかも面倒を見てくれると思ってはいけない」
クラウドにおけるアプリケーションの開発とテストでは、実働環境を反映したテスト環境を構築するためのインフラ経費の大幅な削減が見込める。開発者は自社のサーバに負荷を掛けることなくテスト環境を調整でき、社内プロジェクト着手の順番を待つ必要もない。
しかし、大規模なテストや開発プロジェクトは、社内でやった場合も、どこかほかの巨大なデータセンターでやった場合も、同じ法則が当てはまる。
「新しいアプリケーションのテストと開発はクラウドの方が確実に安く上がり、短期容量レンタルの形でクラウドを利用するのが最善の方法だ。しかし、20万人がアプリケーションにアクセスした場合をシミュレーションするような大規模なパフォーマンステストを実行するのなら、そのような負荷を処理するのにどちらの方が安上がりという方法はない」(スタテン氏)
クラウドが不要な場合も
データセンターの増築が必要な新しいアプリケーションを開発するような場合は、クラウドコンピューティングサービス事業者を利用した方が経費は抑えられる。しかし、社内で利用されていないリソースの分析は済ませただろうか。
クラウドサービスに飛びつく前に、ホスティングなどの賃貸期限の把握はもちろん、社内にどんな未活用リソースがあるかをCIOは理解する必要がある。Burton Groupのアナリスト、アン・トーマス・メインズ氏によると、ホスティングプロバイダーとのフロアスペースリース契約がまだ数年分残っているのにクラウド戦略を検討している組織もあるという。
「余剰リソースがあり、リース期間があと5年残っているのなら、余分な出費と余分なスペースを管理し続けなければならないことになり、クラウドへのシフトは帳尻が合わない」とメインズ氏は指摘している。
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