この不況でデータセンターのアウトソーシングに関心が高まっているが、どんな構想を描いているのかをまず考えなければならない。
不況下で企業が大掛かりな設備投資に二の足を踏む中、アップグレードが必要なデータセンターのアウトソーシングは、SMB(中堅・中小企業)のCIOにとって魅力的な選択肢かもしれない。しかし不況であろうとなかろうと、確固としたデータセンター戦略がまず何よりも優先されるということが、何人かのIT責任者を取材して得た結論だった。
オンラインオークションを手掛ける成長企業PropertyRoomのデイブ・バンクスCTO(最高技術責任者)は、カリフォルニア州ミッションビエホの本社近くにあるSavvisのコロケーション施設にスペースを借り、PropertyRoomのバックエンド業務を担うITインフラを運用している。2003年にバンクス氏が同社入りした当時、会社は既にサーバを保有しており、それを利用するのは理にかなっていた。機能強化や修理が必要になれば、同氏が自分で中身を詰め替えて手を加えることが可能だ。
しかし、トラフィックが急激に増大し、年商3400万ドルの大半を稼ぎ出しているPropertyRoomの顧客向けWebサイトでは別の戦略を取った。バンクス氏はシカゴにあるSavvisの「クラウド」施設を活用し、帯域幅と拡張性を確保している。「そこにある自分たちのサーバは見たことがない。見る必要もない」と同氏は言う。
データセンターの構築、メンテナンス、管理には多額の経費が掛かる。冗長性のレベルによって、平方フィート当たりの経費は2000ドルから数万ドル規模にも達する。設備の元を取るためには長期間継続させる必要があるが、変化の速さを特徴とする業界において、そして電力料金が極めて高く、地域によっては単純に追加電力が確保できない時代において、その帳尻を合わせるのは難しい。
実際、米Gartnerは2009年に入り、データセンターアウトソーシングに対する顧客の関心の高まりを実感している。特に年商5~10億ドルの中堅企業の間でその傾向が強い。
ただし、データセンターのアウトソーシング戦略では、業界の動向と、その企業がどんな種類の構想を描いているのかを考慮する必要がある。もしもIT部門がリソースとスキル、設備投資に関してこうした需要に効率的かつ効果的に応えることができるなら、アウトソーシングの意味はないかもしれないと、Gartnerのアナリスト、リチャード・マトラス氏は言う。
これはまさに、米国がん治療センター(CTCA)のCIO、チャド・A・エッケス氏に当てはまる。データセンターのアウトソーシングは「まずあり得ない」と同氏は話す。
「CTCAが運用しているIT環境は、患者の治療と密接に結び付いている。24時間年中無休で100%のアップタイムが求められる。このような環境の管理のためには、チームメンバーがCTCAのミッション、価値感、そしてサービスを受ける患者との約束を完ぺきに共有しておくことが不可欠だ」。エッケス氏は電子メールでこう説明する。CTCAのネットワークは米国各地に散らばる4つのがん専門病院で構成され、患者の治療と無関係な2つのアプリケーションを「部分的にアウトシーング」している以外は、すべてをセンター内に置いている。
一方、アプライアンスメーカーHamilton Beach BrandsのIT担当シニアディレクター、ジェリー・ホッジ氏は、IBM Lotus Notesの強制アップグレードを好機ととらえて電子メールをGmailに切り替えるという大胆な行動に出た人物だが、やはりデータセンターのアウトソーシングは考えていないという。ただし、コロケーションは多数のアプリケーションで使っている。これにはバックアップ、ファーストレベルヘルプデスクのホスティングサービス、ネットワーク/ルータ管理、電子メール、ITプロジェクト/ポートフォリオ管理、IT資産管理、ウイルス対策/パッチ管理などが含まれる。
データセンターについてはスペースに問題はないため、廃止しても目に見える節約効果はない。しかも「モニタリングは自分たちでやりたい。IBM iSeriesのノウハウも社内にある」とホッジ氏。
変更を促す要因になり得るとしたら何か。ホッジ氏は、合併や買収があればスペースとリソースが限度を超す可能性はあると言う。エッケス氏の場合、データセンターは柔軟な構造になっているため、成長に対応できるトリガーポイントはある。しかし、患者向け対応を強化するために事業やサービスが変化すれば、データセンター戦略も変わるだろうと話す。
一方、PropertyRoomのバンクス氏にとって、データセンターの大部分をアウトソーシングするのは訳もないことだった。これは、スタッフが自分を含めて2本の指で数えられる人数しかいなかった(現在3人目を募集中)ことだけが理由ではない。業務運営上のニーズと直接的に関係している。
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