ネットワーク越しにシステム運用管理を代行するMSPへの期待が高まっている。ただし、すべての要件に合致したサービスを選ぶのは難しい。MSPを適用すべき、あるいはそうすべきでないシステムの見極め方を示す。
多様な技術革新に追従しながら、いかに情報システム・インフラの運用管理を効率化するか――これは、企業のIT管理者に共通する悩みであろう。大規模サイトであれば、プロセスの標準化やツールの活用によって運用効率を高めることも可能だが、人材や予算が限られる中堅・中小企業(SMB:Small and Medium Business)の場合、こうした運用管理をめぐる悩みは切実だ。故に、ネットワークを介してシステムの運用管理・監視サービスを提供するMSP(Management Service Provider)の活用は、中堅以下の企業でも今後真剣に検討されることになるだろう。
だが、その導入に当たっては、自社のビジネス要件を十分に考慮しながら、そのニーズを満たす事業者を慎重に見つけ出すという用意周到さが求められる。
MSPとは、1990年代終盤に米国で台頭したサービスであり、その名の通り、情報システムのマネジメント(運用・監視・保守など)を代行するxSPの一種である。
ITR(アイ・ティ・アール)では、変動型価格モデルを採用する点と、ネットワークを介してサービスを提供する点からxSPを一般的なアウトソーサーと区別しているが、国内MSP市場に関していえば、ユーザー企業と事業者との間で必ずしも変動型価格モデルが十分に機能しているとは言い難く、「ネットワークを介してサービスを提供する」ことをもってMSPの名称が与えられているケースが多い。
それでは、今なぜ、SMBにおいてこのMSPに期待が集まっているのだろうか。
その背景としてまず挙げられるのは、言うまでもなくビジネスにおける情報システムの適用範囲の広がりである。eコマースに代表されるネットビジネスの進展はもちろんだが、今や社内業務の現場にも情報システムは深く浸透している。つまり、ミッションクリティカルなシステムが増えるにつれて、運用管理責任者にのし掛かる負担も大きなものとなっているのである。
また、情報漏えい対策、内部統制などコンプライアンスと深く結び付いた対策が重視されるようになったことも、運用管理業務の負荷を増大させる結果となっている。一般に、リスク対策や情報セキュリティ対策にかかわる取り組みには、企業規模の大小にかかわらず一定のコストが必要になるため、売り上げの小さな企業ほどその影響をダイレクトに受けやすい。
さらに、ベンダー各社が中堅・中小規模の企業を対象としたパッケージソフトウェアの提供を積極的に推進していることも、MSPに注目が集まる土壌をはぐくんでいるといえる。システム環境の共通化が進めば、その運用においても一定のスケールメリットが得られやすいからである。無論、昨今の経済状況を反映して、IT分野に対するコストプレッシャーが高まっていることも見逃せない要因だ。
以上のことを勘案すると、中堅以下の企業がMSPを選択する際に前提として押さえておくべきポイントは、対象となるシステムの「ミッションクリティカル性」「リスクの大きさ」「標準化の度合い」、そして「コスト」の4つに収れんされる。
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