クラウドの新潮流に乗るべきか?
クラウドコンピューティング採用の可否を決める12の理由
クラウドコンピューティングを採用する理由は多々あるが、一方でこの比較的新しいサービスのエンタープライズ対応が整っているとも言い難い。
クラウドコンピューティングを採用する理由は山ほどあると、Forrester Researchのアナリスト、ジェームズ・スタテン氏は言う。IT部門は経営側の需要に追い付けない。Webサービスのトップ企業は効率性の高いデータセンターを拡充しており、そこでは顧客が投げてくるものはほとんど何でも処理できる。顧客は使った分の料金を払えばいい。長期契約は必要ない。スタテン氏によると、ほとんどのクラウドベンダーは契約も解約も顧客の自由にさせている。顧客はただログインすればいいのだ。
だからといって、クラウドコンピューティングのエンタープライズ対応が整っているとも言い難い。スタテン氏のチームの解説により、クラウドコンピューティングが企業にとって身近になっている理由となっていない理由を全部で12項目挙げる。
ちなみにForrester Researchの定義するクラウドコンピューティングとは、「エンドユーザー顧客のアプリケーションをホスティングし、使用量に応じて課金できる能力を持った、高度にスケーラブルな管理型コンピュータインフラの集合体」を指す。
クラウドコンピューティング採用の理由
1.困難な容量計画からの解放
誰もが可能な限り迅速にITのプロビジョニングをしたいと思うだろうが、データセンターがサービスに対応できるのか、そのサービスをどこに置くのか、そのスペースを作るために何を動かす必要があるのかを判断するには時間がかかる。しかも、こうしたことを判断するためのツールは不足している。
2.ジレンマからの解放
「経営に追い付く」と経営陣に約束はしたが、「サーバをもう1台増やす」はもう通用しなくなった。IT部門の出費は抑えなければならないからだ。
3.プロトタイピングの容易さ
ビジネス部門が必要とするプロトタイプは大まかなもので、決して大規模で完全なものではない。こんな控えめな提案をIT部門がなぜ達成できないのかといえば、それを実際にデータセンターの環境に取り込むのが難しいからだ(1を参照のこと)。セキュリティ上の理由からも、新たなアイデアを試す場を社外に設けることは難しい。
4.ISPのデータセンターの方が自社のものよりもいい(その1)
Amazon Web Services、Salesforce.com、Akamai Technologiesといったインターネットサービスプロバイダー(ISP)大手のデータセンターの方が、自社のものより「大幅に優れている」とスタテン氏のチームは言う。ハードウェアベンダー、ソフトウェアベンダー、メンテナンス業者から丁寧に扱ってもらえることは言うまでもなく、データセンター運営の経済性においても有利になる。
5.ISPのデータセンターの方が自社のものよりもいい(その2)
処理のみならず、運営・管理ツールも大手ISPの方がいいものを持っている。このツールでまるで魔法のように数千台のサーバにアプリケーションを行き渡らせ、スケーリングも速いとスタテン氏は言う(この点についてもっと詳しく知りたければ、Amazonのワーナー・ボーゲルズCTOのブログ“All Things Distributed”を参照してほしいとのこと)。
クラウドコンピューティング不採用の理由
1.盛り上がり不足
Forrester Researchの見方では、あるサービスがエンタープライズレベルになるには、相当数の企業が顧客となってそれを利用しなければならない。これは理にかなっている。クラウドコンピューティングは、現段階ではまだそうなってはいない。このサービスを採用しているのは主に、大企業のようなレガシー問題を抱えておらず、コントロールを委ねることに対する抵抗感もない小規模企業や新興企業だ。ただし基盤は整いつつあり、あと2~3年たてば、この流行に乗るのが賢いということになるだろう。
一方で、New York Timesのような一見古そうに思える企業が先端を行っている。New York Timesは、IT開発者のデレク・ゴットフリート氏にしてみれば相当のイライラはあったが、過去記事をネットで提供するためにAmazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)とAmazon Simple Storage Service(Amazon S3)を活用したと、スタテン氏は報告している。
2.安定性の問題
安定性は今のところ「曇り」だ。Forrester Researchによると、ほとんどのクラウドベンダーは可用性を保証しておらず、サービス品質保証契約(SLA)はほとんどない。企業にとっては(そしてクビになりたくないCIOにとっても)、これは大きな障害だ。
3.有名企業が少ない(サービス提供側)
大手企業は名のあるベンダーを好むものだが、クラウドにおいてはAmazon Web ServicesとSalesforce.com、Akamai Technologies以外は無名の企業があまりに多い。Google、Microsoft、Yahoo!も参入しているが、大手がもっとクラウドに参入してくるまで、大企業は近寄らないだろうとForrester Researchは予想する。
4.有名企業が少ない(ユーザー側)
スタテン氏によると、クラウドコンピューティングを利用している企業は成功例として引き合いに出されることを好まない。スタテン氏は何度も顧客に推薦の言葉を頼んだが、反応がないという。
5.セキュリティに対する懸念
クラウドコンピューティングのプロバイダーはセキュリティ問題に対する備えができていないのではないかと、企業のCIOは懸念している。もっともスタテン氏によれば、これはいわれのない懸念だ。ほとんどの企業にとってセキュリティは「必要悪」だが、クラウドコンピューティングに進出しているホスティング企業はForrester Researchに対し、セキュリティは必要悪どころか自社の中核的な機能だと胸を張ったという。
6.商用独立系ソフトウェアベンダーをサポートしていない
ほとんどのクラウドは独自のインフラを持ち、プロバイダーは秘密主義だ。従って、これらプラットフォームでは商用OSとアプリケーションの動作保証はしていない。しかも、本質的にインフラが仮想化されているため、ライセンスが問題になる。
7.地域を選べない
Akamai TechnologiesとLayered Technologiesを除くと、Forrester Researchが調査したクラウドベンダーは、顧客企業のアプリケーションを特定地域に置くことはしない。ほとんどのクラウドベンダーは、地理的に広い範囲をカバーしてはいない。Amazon EC2はカバーしているものの、顧客企業のアプリケーションがどこにあるかは教えてくれない。
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