エキスパートに聞く情報系システム導入の現状:文書管理編
「文書管理」導入の目的はペーパーレス化だけじゃない、多様化する企業の課題
文書管理の目的は真っ先に思い付くペーパーレス化だけでなく、ナレッジマネジメント、ECMなど多様化している。企業は「文書管理製品」を探しているのではなく、自社の課題を解決する方法を探しているのだ。
IT化の進展が必ず行き着く文書管理の課題
ITソリューション導入の古典的なテーマの1つに、「ペーパーレス化」がある。一部の先進的な大企業の中には、既に20年以上前からオフィスのペーパーレス化に取り組んできたところもあるが、ここ10年でPCを使ったワークスタイルが一般的になり、HDDやネットワークの価格性能比が飛躍的に向上したことを背景に、中堅・中小企業も含め幅広い企業でペーパーレス化が進んだ。
確かにオフィスのペーパーレス化は企業に多くのメリットをもたらしたが、同時に新たな課題を生むことにもなった。電子媒体の文書は極めて容易に更新・複製できるため、放っておくと無秩序に数が増殖し、遅かれ早かれ管理しきれなくなってしまうのだ。その結果、「あのファイル、どのサーバのどのフォルダにあったっけ?」「この文書は、どのファイルが最新版なんだっけ?」といった混乱が生じることになる。
こうした課題を解決するためにあるのが、文書ファイルの保管場所やバージョン管理、アクセス制御などの機能を提供する文書管理システムだ。既に多くのベンダーからさまざまなパッケージ製品が提供されており、また自社開発で文書管理システムを構築する企業も少なくない。また近年では、文書ファイルだけでなく、Webのコンテンツやメール、画像や動画などのデータも含めた、社内に存在するあらゆるコンテンツを一元的に管理する「ECM(Enterprise Contents Management)」というソリューションも注目を集めている。
そこで本稿では、ノークリサーチのシニア・アナリスト岩上由高氏に、文書管理システムの導入状況やトレンドといった最新事情、および今後の市場展望などについて詳しく話を聞いた。
これまでにないユニークな特徴を備える文書管理製品の登場
ノークリサーチでは2010年8月、年商500億円未満の中堅・中小企業を対象に、文書管理・ファイル管理システムの利用状況についてアンケート調査を実施した。以下は、アンケート対象企業が既に導入している製品/サービスのシェアを表したグラフである。
この調査結果から、どのような傾向が読み取れるだろうか? 岩上氏は「幾つかの異なるユーザーニーズが見て取れます」と解説する。
「シェア1位と2位の製品は複合機とセットで提供されるソリューションで、複合機でコピーした紙の書類の内容を自動的にファイル化し、フォルダに保管する製品です。ペーパーレス化の初期段階にある中小企業で、まずは文書を手っ取り早く電子化して保管するためのソリューションという位置付けです。一方、『GDMS』(ジャストシステム)や『MEANS』(日立ソリューションズ)は、複数のファイルサーバを仮想的に1つにまとめて見せるという機能を持った製品です。ペーパーレス化がある程度進んだ結果、ファイルサーバが乱立してしまい管理に苦慮している中堅企業が導入しているものと思われます」
このように、同じ「文書管理」というカテゴリーに属する製品でも、ユーザー企業のペーパーレス化の進展状況によっては、求められる機能はかなり異なってくる。また、これまでのものにはない、新たな機能を搭載した製品も登場してきているという。
「シェア3位のサピエンスの製品は少しユニークで、すべてのファイルをフラットに一覧表示します。フォルダ管理の煩雑化を防ぐために、初めからフォルダ作成を許さないという思い切った仕様になっています」
フォルダ管理を文書管理システムの基本機能の1つだと思ってきたユーザーにとっては、少し戸惑いがあるかもしれないが、同じく基本機能の1つ「文書のバージョン管理」に関しても新しい傾向があると岩上氏は言う。
「企業が本当に厳密にバージョン管理しなくてはならない文書はほんの一部で、大部分のものはそもそもバージョン管理を厳密に行うことが業務効率上、必ずしも最善とは限りません。またバージョン管理を行っていても、一度管理から外れて文書が拡散してしまったら、もう対処しようがないでしょう。そこで最近では、厳密なバージョン管理の代わりに、類似するファイルをシステムで自動的に検索して見つけてくれる機能を実装した文書管理製品が出てきています。業務の現場では、バージョン管理よりむしろこういった機能の方が重宝されるのではないでしょうか」
また、シェアはまだ相対的に小さいものの、近年売り上げを伸ばしつつあるオープンテキストの「OpenText ECM Suite」も、これまでにない特徴を持った製品だ。通常の文書管理機能以外にも、社員が情報を書き込んで、その内容を一元管理した上で検索できるWikiのような機能を備えている。文書管理のカテゴリーを超えて、ナレッジマネジメントのソリューションをも射程にとらえた製品だといえよう。
もちろん、こうした新しい特徴を持つ製品と並んで、従来の文書管理製品と同じフォルダ管理やバージョン管理などの機能を備える「正統派」の製品も依然としてニーズがある。前出の調査結果でいえば、「楽々Document」「DocumentBroker」「楽2ライブラリ」「ラビニティシリーズ」「イソロジー」などの製品がそれに当たる。
多様化するニーズに柔軟に応えるミドルウェア的な製品が求められる
このように、ノークリサーチが中堅・中小企業を対象に行った調査では、ユーザーニーズの多様化に合わせてパッケージ製品の機能や性格も多様化しつつある現状がうかがえる。こうした傾向は、大企業向けのソリューションにおいても同様だと岩上氏は言う。
「大企業であっても、文書のバージョンやアーカイブを必要以上に細かく分類して管理するニーズは、実際にはそれほど多くありません。そうしたことよりも、必要最低限の機能が手軽に導入・運用できて、Webベースで簡単に利用できる製品の方が導入が進んでいるようです」
その代表格が、マイクロソフトの「Microsoft SharePoint Server」(以下、SharePoint)だ。ノークリサーチの調査では、同製品は文書管理製品としてではなく、ポータル製品として分類されているために前出の調査結果では挙げられていなかったが、実際にはポータルとしてではなく、文書管理システムとして導入されるケースが非常に多いという。特に、中堅規模以上の企業では極めて高いシェアを占めている。
Microsoft Office WordやMicrosoft Office ExcelといったMicrosoft Office製品の活用範囲が広がり、Microsoft Office文書が大量に生成されるようになった企業が文書管理システムの導入を検討する際には、やはり同じマイクロソフトが提供するSharePointが真っ先に候補として挙げられているのではないかと岩上氏は推測する。
「この場合、まずは“Microsoft Office文書の管理”というニーズが先にあって、その延長線上にSharePointがあります。ほかの製品も同様に、バージョン管理やナレッジマネジメント、複合機の活用といった具体的なユーザーニーズが先にあって、そこからそれぞれに適した製品に落ちていきます。逆に、『文書管理システムって、何ができるのかな?』といった漠然とした動機で製品を選ぶユーザーは極めて少ないでしょう」
このように、これからの文書管理システムには、今後ますます多様化するであろうユーザーニーズを的確にとらえていくことが求められる。そのためには、「ミドルウェア的な機能」が重要になってくるのではないかと岩上氏は言う。
「基本機能をミドルウェアとして用意しておいて、その上に個別のユーザーニーズに対応する機能を載せられるようなアーキテクチャを持った製品が、今後は求められるのではないでしょうか。現在、SharePointがシェアを伸ばしているのは、まさにそうしたアーキテクチャとソリューション戦略が、ユーザーやSIerに広く受け入れられた結果だと思います」
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