仮想環境への導入前にコスト、メリットを見極める
仮想インフラに10ギガビットネットワークは必要か?
10ギガビットイーサネット(10GbE)の導入コストは低くなったとはいえ、バックボーンのアップグレードを伴う大規模なものになるかもしれない。仮想環境に10GbEを導入する前に検討すべき3つの重要ポイントを紹介する。
極めて高速な10ギガビットイーサネット(以下、10GbE)のインフラコストは著しく低下している。しかし、10GbEネットワークにアップグレードするには、単に幾つかのNIC(ネットワークインタフェースカード)とケーブルを交換するだけでは済まない。費用対効果を最大化するには、ネットワークバックボーン全体のアップグレードが必要かもしれない。
10GbEの導入は、コストとメリットの検討が必要な大きな決断だ。以下では、10GbEの導入に伴う影響を理解する助けになるように、ネットワークインフラを10GbEに移行する前に考慮すべき3つの重要なポイントを説明する。
10GbEネットワークの速度が必要か
10GbEがネットワーク帯域のパフォーマンスを向上させるのは明らかだが、その高スループットは、それを必要とするサーバや仮想マシン(VM)に役立つだけだ。仮想ホストの多くは、1GbEをボンディング構成(NICなど複数のデバイスを束ねて帯域を増やすが、これらは1つのデバイスのように見える)で使用している。これによって、今日のワークロードに十分なパフォーマンスが得られる。また、仮想環境のトラフィックを、ストレージ、実運用ネットワーキング、管理のためのサーバ間通信、ライブマイグレーションのためのサーバ間通信といった目的別に分離できる。
コストの観点では、1GbE NICを追加してボンディングする方が、ネットワークハードウェアを全面的に10GbEにアップグレードするよりも、ネットワークを効率よく利用できるかもしれない。しかし、判断を下す前に、仮想ホストのNICを通過するデータの量を把握しておくことが不可欠だ。
10GbEネットワークでもセキュリティゾーンの分離は必要
10GbEインフラでは、仮想環境の複雑さを軽減できることがある。1GbEを使う仮想ホストの多くは、さまざまなタイプのネットワークトラフィックを処理するために、通常より多くのNICを必要とする。例えば、管理とライブマイグレーションのために別々のNICが必要だ。さらに、実運用ネットワーキングとストレージネットワーキングのために、ボンディングされたNICのセットが別個に必要になる。
トラフィックの分離は極めて重要だ。トラフィックのタイプごとに異なる信頼レベルが割り当てられるからだ。例えば、ストレージトラフィックには特別な注意が必要になる。その理由としては、ストレージトラフィックは多くの帯域を使用する傾向があること、サーバとストレージ間で直接伝送されること、また、iSCSIプロトコルには固有の制約があることが挙げられる。一方、管理トラフィックが分離されるのは、VMのアクションと通常のネットワークトラフィックを区別しておくためだ。
10GbEネットワークにより、セキュリティゾーンの分離が不要になるわけではないが、さまざまなトラフィックゾーンのためにより広い帯域が利用できるようになる。ボンディング構成を信頼するのであれば、これで何ら問題ない。
仮想LAN(VLAN)を使ってトラフィックを分離することもできるが、この方法はセキュリティ管理者の間で議論の的となっている。一部の管理者は、一部のエクスプロイト(攻撃コード)は、あるVLANから別のVLANのトラフィックを監視できるようにしてしまうと指摘する。しかし、そうしたエクスプロイトを使用するのは難しく、トラフィックが見られてしまうリスクは、(特に、ロックダウンされたデータセンター内では)比較的低いと主張する専門家もいる。
10GbEの導入で帯域が拡大することから、NICを減らせることもあるが、それは社内セキュリティポリシーで、VLANによるトラフィック分離が許可されている場合に限られる。そうでない場合には、これまでと同数のNICを使って1GbEと10GbEを併用することになるかもしれない。
バックボーンを更新する準備ができているか
ネットワークを10GbEにアップグレードするには通常、ネットワークバックボーン全体に投資しなければならない。バックボーンが1GbEだと、仮想サーバに10GbE NICをインストールしても、データが10GbEの速度で伝送されることはない。
このため、ネットワークのどの部分を10GbEにアップグレードするのが最も効果的かを検討する必要がある。例えば、サーバとストレージ間の接続に最大のボトルネックがある場合、そのネットワークパスを物理的に分離し、そこだけをアップグレードすることを検討する。ただし、そのアップグレードに伴って、ストレージ関連コンポーネントも、10GbEの帯域を活用できるようにアップデートする必要があるかもしれない。
一方、ボトルネックが実運用ネットワーキングに影響する場合、実運用ネットワークバックボーンを、スループットの向上に対応できるようアップグレードする準備ができているかどうかを検討しなくてはならない。また、VLANでトラフィックを分離する場合は、そのトラフィックを1GbEと10GbEのどちらのネットワーク機器で相互接続するかを検討する必要がある。これらの検討は、仮想ホストのトラフィックタイプごとに既存ネットワークの使用状況を分析した後で行う。これらの分析によって把握した具体的なトラフィックニーズに基づいて、判断を下さなくてはならない。
10GbEネットワークは、あなたの会社の仮想環境にとって有意義だろうか? 現在のネットワークパフォーマンスが芳しくないなら、恐らくそうだろう。しかし、インフラをアップグレードする前に、メリットとコストをしっかりと比較検討しなければならない。
本稿筆者のグレッグ・シールズ氏は、フリーランスのライター、インストラクター、ITコンサルタントで、Microsoft MVP受賞者。Concentrated Technologyの共同創業者でもある。ITアーキテクチャとエンタープライズ管理について約15年の経験を持ち、Microsoft製品の管理、システム管理および監視、仮想化を専門とする。著書として『Windows Server 2008: What's New/What's Changed』(SAPIEN Press刊)などがある。
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