DLPの普及が進まない理由【前編】
情報漏えい対策製品をまだ導入していない企業の言い分
これほど知的財産を守る必要性が叫ばれているにもかかわらず、企業は情報漏えい対策に対してそれほどの投資を行っていない実態が判明した。企業の言い分とは。
犯罪集団や国家が企業から情報を盗むことを狙った攻撃を激化させ、手口を高度化させる中で、セキュリティ企業はさまざまな情報漏えい対策(DLP:Data Loss Prevention)技術を打ち出してきた。
だが、これほど知的財産を守る必要性が叫ばれているにもかかわらず、企業はDLPに対してそれほどの投資を行っていない実態が、セキュリティ製品購入計画に関する調査で明らかになった。
DLPがほとんどの企業が必要としている対策を提供してくれるのなら、なぜこの技術の採用が進まないのか。
米調査会社Forrester Researchのセキュリティリスク担当主席アナリスト、アンドルー・ローズ氏は、主に2つの要因があると見る。1つは企業を突き動かす動機の欠如、もう1つは実現のためのデータ構造の欠如だ。
同氏は米TechTargetに対し次のように語った。「危険な環境の現実について、多くの企業の無知ぶりは、めでたいほどだ。多くのCIO(最高情報責任者)は、今この瞬間にも自社の情報が流出しているかもしれないという認識も、情報流出が起きれば長期的な競争力がそがれて経営基盤が危うくなりかねないという認識もない」
無知に付け入る攻撃者
企業は影響が公になるような一大事に見舞われない限り、サイバー攻撃を重要な問題とは見なさないとローズ氏は話す。
「現代の攻撃者はこの状況に付け込んで、できるだけ長期間潜伏する。結果として、企業はDLPのメリットを引き出すことに苦慮する。実際のところDLPは、資金と貴重なリソースを投じて導入しなければならず、しかも念入りに均衡が保たれたビジネスプロセスを破壊するマイナス要因だと見なされる」(同氏)
こうした技術は、例えばDLPの導入を容易にしてくれるデータ分類標準のような既存の業務慣習に組み込めば、もっと実装しやすくなるとローズ氏は指摘する。
ツールの効率的な利用
TechTargetがITプロフェッショナル250人以上を対象に実施した調査では、58%がDLPを使っていないと答えた。
ローズ氏は「42%がDLPを使っているという回答はうれしい驚きだ。心配なのは、真の価値を発揮するためにDLPをどの程度使いこなしているかという点だ」と話す。
DLPを使っているという回答者のうち、24%はWebとメール用に、23%はデータベースアプリケーション用に、14%はフラッシュメモリとUSBトークン用に利用していた。
破壊的効果
DLP採用の妨げとなるのは、経営陣の全面的なバックアップを要するという点だ。DLPの導入は、「事業にある程度の影響をもたらし、予期せぬコストが発生して調整に時間を取られることもある」と話すのは、情報セキュリティの非営利国際組織、Information Systems Security Association英国支部(ISSA-UK)の調査担当副社長、エイドリアン・ライト氏。
「ポリシーと適切な利用法について従業員を教育する必要もある。DLPの適切な導入を実現するためにはかなりの時間を要することから、プロジェクトのスケジュールと期待値には現実的な設定が必要だ」(ライト氏)
また、業務としてのDLP管理を甘く見てはいけないとも同氏は話す。単純にセキュリティ担当者やIT担当者の負担を増やすだけでは済まず、専用のチームが必要になる公算が大きいという。
回答者が挙げたDLP導入の課題は、経費が掛かり過ぎる(32%)を筆頭に、誤検知が多過ぎる(28%)、導入が複雑(27%)、サプライヤーのサポートがない(13%)の順だった。
「調査の結果、出費や複雑さ、インテグレーション関連の問題、ユーザーの邪魔になることなどついての不安が浮かび上がった。こうした課題について認識しているCIOと話をしても、事業上説得力のある論理の裏付けがない限り、あまり先へは進まない」とForresterのローズ氏は話す。
「セキュリティとリスク担当のプロフェッショナルが今やるべき仕事はそれだ。コンソールとコマンドラインから一歩離れて、自分の組織を正しい方向へと突き動かすビジネスケースを作り出すことだ」(同氏)
後編ではDLPを導入する上で押さえておきたいポイントを紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
DLPの普及が進まない理由
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[LRM株式会社] 「標的型攻撃メール」事例・サンプル集 -
製品資料
[LRM株式会社] セキュリティ教育はなぜ「年間計画」を立てる必要があるのか? -
製品資料
[LRM株式会社] セキュリティの重要性が伝わらない…… 効果がない社員教育から脱却する方法 -
製品資料
[LRM株式会社] 「標的型攻撃メール訓練」導入ガイド 社員の意識を確実に高める仕組みの作り方 -
事例
[株式会社マクニカ] アイカ工業に学ぶ脆弱性対策 情シスが把握できずにいたアセットも正確に把握
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
2
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
3
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
4
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
5
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
6
エンジニアが選考を辞退する本当の理由 7割が隠す“面接の違和感”とは
-
7
Netflixのバックエンドは「ほぼJava」 3000超のアプリを支える開発基盤の裏側
-
8
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
9
AI基盤は本当に「オンプレ回帰」する? Broadcomの言い分と企業の本音
-
10
生成AIの7割が「別画面・コピペ運用」 “導入”は進んでも定着せず
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
生成AIのハルシネーションを防止 回答精度を高めるセマンティックレイヤーとは
-
2
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
7
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
8
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
9
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー