成熟しつつあるIaaS市場
浮気性なユーザー向け? マルチクラウドの魅力とは
クラウドサービス市場が成熟する中、特定のサービスに縛られることなく、より良いサービスを求めてクラウド間を移動する“マルチクラウド”の動きが活発化している。導入ユーザーの声を紹介する。
複数のクラウドサービスを統合的に利用したい企業は、マルチクラウド管理ソフトウェアを活用するといい。ソフトウェアの選択肢は幾つかある。ただし、初期導入後にワークロードを移行させている企業はまだまれだ。
マルチクラウド管理ソフトウェアを提供しているベンダーには、米RightScaleや米CliQr Technologiesなどがある。こうしたソフトウェアを使えば、変更なしで複数のクラウドにワークロードを展開できる他、クラウド間でワークロードを自由に移行させることも可能だ。
既にマルチクラウド管理ソフトウェアを本番環境に採用している企業のIT担当者によれば、こうしたソフトウェアは実際、選定したプロバイダーのクラウドサービスにワークロードを移行させるのに役立っているという。
世界的な教育ソリューションプロバイダー、英Pearsonの事業部門であるPearson Internationalの製品チームは、RightScaleのソフトウェアを使って複数のパブリッククラウド環境を管理している。同チームは北米と欧州では米Amazon Web Services(AWS)、中国では米DataPipeのパブリッククラウドを利用している。RightScaleのサービスを使えば、仮想マシン(VM)をクラウドに迅速に展開できる他、VMにマルチクラウドイメージ(MCI)を適用してクラウド間を移行させることも可能だ。
「マルチクラウド管理のための戦略が必要だ」と、Pearsonのグローバルインフラシステム担当ディレクター、アンドリュー・バーク氏は指摘する。Pearsonがリーチ拡大を目指す全ての市場を、全てのクラウドサービスプロバイダーがカバーしているとは限らないからだ。それに加え、Pearsonの顧客の多くはホスティングサービスに関してそれぞれ独自のポリシーを有している。
「当社はRightScaleを使用しているため、マルチクラウドイメージをいったん構築すれば、全く同じものをDataPipeのインフラに展開し、4週間足らずで本番稼働できる。コードやアーキテクチャは一切変更せずに、どんなソリューションにも利用できる」とバーク氏は語る。
仮想プロトタイピング企業の米PZFlexはCliQr Technologiesのソフトウェアを使って、米Hewlett-Packard(HP)のパブリッククラウド「Cloud Compute」にアプリケーションを展開している。CliQrのソフトウェアも、複数のプロバイダーのクラウドに変更なしでアプリケーションを展開する機能を備える。
PZFlexの取締役ロバート・バンクス氏によれば、同社がHPのクラウドを選んだのは、「HPが最も手頃な料金でIaaS(Infrastructure as a Service)を提供していたから」という。さらにHPは、サーバを同じ物理ラックに移動させることで、クラウドデータのカスタマイズも行った。おかげで、PZFlexのアプリケーションが使用する複数のノード間のレイテンシが低減されたという。
ただしPZFlexとHPとの関係は閉鎖されたものではない。PZFlexはAWSやGoogle Compute Engineの利用も考えており、「どのベンダーが最適な価格とパフォーマンスを提供するか」で判断する方針という。
「どこか特定のクラウドに縛られる必要はない。基本的には、どのクラウドが最善のコストで最高のパフォーマンスを提供しているかを見極め、その上で、顧客をそのクラウドに導ける」とバンクス氏は語る。
クラウド間の移行ができれば、理論的には、コストの削減につながるはずだ。ただし、こうした管理ソフトウェアはそれ自体にコストが掛かる。例えば、RightScaleのサービスのプレミアム版は月額利用料金が1000ドルだ。CliQrのサービスは、3000コンピューティング時間で月額990ドルから利用できる。
マルチクラウド管理ソフトウェアはこの他、クラウド間の移行ツールを手掛ける米Racemiや米RiverMeadow Software、クラウド管理ソフトウェアを手掛ける米ServiceMeshや米HotLinkなどのベンダーから提供されている。
マルチクラウド管理とクラウド間の移行
PearsonとPZFlexはどちらもクラウド間の移行を計画に含めているが、まだ実現はしていない。
アナリストによれば、これが今のマルチクラウド管理の平均的な状況だという。
米451 Researchのアナリスト、カール・ブルックス氏は次のように語る。「実際に複数のIaaSサービス間でデータをあちこち動かしている企業などない。動かすとしても、せいぜい1回だ。私に言わせれば、これはIaaSが徐々に成熟しつつあることの表れだ。今や、ユーザーには多くの選択肢と機能が提供されている」
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